充足率は大規模大学で下降、中小規模大学で上昇-2017年度入試
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2017.0807
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3行でわかるこの記事のポイント
●私学事業団の調査で私大全体の充足率は0.2ポイント増の104.6%
●小規模大学で、充足率が5ポイント以上改善した区分も
●21エリアのうち16エリアで充足率が上昇
日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)がまとめた調査結果によると、2017年度の私立大学全体の入学定員充足率は104.6%で、前年度から0.2ポイント上がった。大規模大学で充足率が下降する一方、中小規模の大学は上昇。入学定員管理の厳格化によって、大規模大学から中小規模大学へと学生の流れに変化が起きたと見られ、定員規制によって東京23区の大学への学生の集中を是正しようという政策の検討にも何らかの影響を与えそうだ。
*調査結果はこちら
http://www.shigaku.go.jp/files/shigandoukouH29.pdf
この調査では、私立大学581校の入学定員や志願者数、入学者数などを集計し、分析している。
それによると、定員割れした大学は前年度より28校少ない229校で、私立大学全体に占める割合は5.1ポイント減の39.4%だった。
入学定員規模による11の区分ごとに見ると、「100人未満」、および「1500人以上3000人未満」「3000人以上」で入学定員充足率が下降、「1000人以上1500人未満」でほぼ前年並み、それ以外の7区分はいずれも上昇してこの5年間で最大の充足率となった。
中でも、「100人以上200人未満」は5.9ポイント増(93.7%)、「500人以上600人未満」は5.6ポイント増(100.9%)で未充足から充足に転じるなど、小規模大学での回復が目立つ。一方、「1500人以上3000人未満」は2.4ポイント減(108.5%)、「3000人以上」は3.2ポイント減(106.0%)だった。
充足と未充足の分岐点は従来の「入学定員800人」から、今回は「入学定員500人」のゾーンにシフトし、このゾーン以上の6区分はいずれも入学定員を充足している。
歩留まり率は全ての区分で上昇し、全体では1.2ポイント増の40.4%だった。「800人以上1000人未満」は3.1ポイント増(44.5%)、「500人以上600人未満」が2.6ポイント増(51.0%)など、上昇が目立った。おおむね定員規模が小さい区分ほど歩留まりがよく、「100人未満」64.7%に対して「3000人以上」は33.8%となっている。
2016年度から、入学定員超過による私立大学等経常費補助金の不交付の基準が厳しくなった大規模大学(収容定員8000人以上)と中規模大学(同4000人以上8000人未満)が合格者を絞り込み、結果として小規模大学の入学者が増えたことが、今回の調査で裏付けられたと言えそう。定員割れが続き、実態に合わせて定員を減らして充足率を改善させる小規模大学の動きも今回の結果に影響していそうだ。
21のエリア別の入学定員充足率を見ると、東京は1.7ポイント減の107.3%、京都が2.1ポイント減の103.3%。この他、甲信越、中国(広島を除く)、九州(福岡を除く)も下降したが、残り16エリアは全て充足率が上昇。中でも、「東北(宮城を除く)」(4.9ポイント増の93.5%)、「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」(4.2ポイント増の102.3%)、 「近畿(京都、大阪、兵庫を除く)」(5.7ポイント増の104.4%)での上昇が目立つ。東京や京都、大阪の大規模大学が合格者を絞り込んだ結果、それぞれのエリアの周辺部にある大学に多く流れたと推測される。
2016年度は東北と四国が充足率80%台だったが、今回はすべてのエリアで90%以上となった。
東京と京都以外の大都市部は、愛知が0.7ポイント増の105.6%、大阪が0.6ポイント増の107.1%だった。
入学定員管理の厳格化は、大都市部の大学への学生の集中を是正するねらいがあった。これを受けて大規模大学が収容定員を増やす動きが広がっているが、東京23区内の大学は定員増を認めないという政府方針の下、2018年度の収容定員増の6月申請分は、23区内の大学のみ受け付けが10月に延期された。現在、文科省が今後の取り扱いを検討中だ。今回の調査から、政策が学生の流れに一定程度、作用したと読み取れること、大都市周辺部の大学への流れが目立つことなどが、23区での定員規制にどう影響するか、注目される。
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