2018.0726

23区内での定員抑制、秋からの施行に向けて政令の検討が大詰め

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3行でわかるこの記事のポイント

●2020年度の大学新設の認可申請がある10月までに詳細を明示
●法人間での定員譲渡による学部新設等は例外として認める
●専門職大学と同様、専門職学科も5年間は純増を認める方向

内閣府と文部科学省は、東京23区内にある大学の定員増を原則10年間認めないとした新たな法律を運用するため、2018年10月までの政令制定をめざして具体的なルールの検討を進めている。有識者会議の最終報告で「一時的な収容定員増容認も考えられる」とされたスクラップ・アンド・ビルド方式による定員増の扱い、将来構想部会での検討事項を先取りする形の「学校法人間での定員の譲渡」の扱いなどが注目される。

*地方大学振興法の内容はこちら


 若者の東京一極集中を是正する観点から地方大学の振興について定めた地方大学振興法は2018年5月に成立し、6月1日付で公布・一部施行されたが、23区内での大学の定員抑制について規定した条項の施行日は「公布の日から6カ月を超えない範囲内において政令で定める」とされた。内閣府と文部科学省は、2020年度の大学新設の申請を受け付ける2018年10月に間に合うよう、同法に基づく詳しい規定を政令や文部科学省令で示すべく検討を急いでいる。
 2019年度の23区内における学部新設、収容定員増については、認可しないことを2018年3月に告示済みで、新たな法律と政令では2020年度以降の定員増に対応する。
 地方大学振興法は、内閣官房が所管する「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」が2017年12月にまとめた最終報告に基づいて制定された。23区内での定員抑制に関する地方大学振興法の規定(青字部分)、およびそれぞれに関連して政令で示される内容は次の通り。

(1)「特定地域内」での収容定員増を認めない。ただし、以下の①〜③については例外として認める。
  ...政令で「特定地域」として東京23区を指定する。
  ①スクラップ・アンド・ビルド方式で定員増を行う場合
  ...「特定地域内」での定員増の算定方法について政令で規定する。「最終報告」では「学部等の新設に伴う既存学部等の廃止までの移行期間については、一時的に収容定員の総数増加を認めることも考えられる」とされ、実際に一時的な定員増を認める場合の具体的なルールが政令で示される。
  ②他の学校法人が「特定地域」内で減らす定員を譲り受ける形で学部の新設や定員増を行う場合
   ...「最終報告」で「スクラップ・アンド・ ビルドと同様の趣旨」として、「大学全体や一部を統合等する場合」の 「23 区内の収容定員を活用した他の高等教育機関の設置」が例示されたのを受けた規定で、中教審で検討されている「私立大学間の学部単位での譲渡」も念頭にある。どのような条件で法人間の定員譲渡を認めるかなど、具体的な内容を政令で定める。
  ③留学生・社会人の定員増を行う場合

(2)文科大臣はこの規定に違反する大学に対し是正勧告等を行うことができる。

(3)「特定地域」内での収容定員増抑制に関する条項は法律の公布日(6月1日)から半年以内に施行し、2028年3月末までの時限立法とする

(4)以下の①〜④については経過措置として「特定地域」内での定員増を認める。
  ①2019年3月末までに認可を受けた場合
  ...2019年度の23区内での収容定員増を規制する告示において、機関決定済み等を理由に例外的に申請が認められたものを想定している。
  ②2024年3月末までに専門職大学、およびこれに準じるものについて設置の認可を受けた場合
  ...専門職大学については制度発足から5年間に限って23区内での純増を認めるという規定で、「これに準じるもの」として既存の大学が専門職学科を新設する場合等も同様に扱うことを省令で定める方向だ。
  ③特定地域」内への学部等の移転について一定の期限までに届け出を行った場合
  ...2018年秋に政令を施行して以降、23区内での定員増禁止が実効性を持つことになる。ただし、現行制度では認可事項以外の改組等に関する届け出は前年12月まで認められていることを考慮し、2018年12月末までに届け出のあった事項については23区内の定員増も認めることを政令で明示し、現行制度との整合を図る。現行制度上、届け出も不要な既設キャンパスへの学部移転(収容定員増や施設の新設等を伴わない場合)についても同じ扱いになる。
  ④「特定地域」内での学部新設等について、相当程度の準備が行われている場合
  ...これまでの告示による一時的措置と同様、「機関決定されている」「公表済み」「一定以上の支出がなされている」などを要件として政令で規定する方向だ。

(5)政府は専門職大学に関する経過措置の期限までの間に、専門職大学の整備状況等をふまえ、必要に応じて経過措置の延長等の措置を講じる。
 ...専門職大学の新設等による純増容認について、5年間の期限以降どうするか検討する。延長する場合は法改正が必要となる。

 政令の原案は8月にも公表され、1カ月間程度のパブリックコメント募集を経て修正・確定し、2020年度の大学新設の申請を受け付ける10月までに施行される見通しだ。