2018.0528

中退率やST比を加え、情報公開の対象拡大へ

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3行でわかるこの記事のポイント

●教学マネジメント推進のため、学修成果に関する情報の把握と公開の義務付けを検討
●多様な情報をセットで示して一面的な解釈・評価を防ぐことを想定
●実志願者数の公開義務化は現段階で議論の俎上に上がらず

留年率や中退率、ST比、学生満足度など、大学に公開を義務付ける情報の範囲を広げる議論が中央教育審議会で進んでいる。入試関連情報や中退率等、大学が公開に消極的だったデータも含め情報を出していく流れは不可避で、教学改革の推進とともに「データの背景を説明して正しい理解を得る姿勢」が求められている。

*文科省の資料はこちら


●留学率やGPAの活用状況等、公開を「推奨」する情報も提示

 新たに公開義務化の検討対象として例示されているのは、入学者選抜の状況といった「入り口」情報、教員一人あたりの学生数(ST比)や留年率、学生満足度等の「中身」の情報、さらに就職率や就職先等の「出口」の情報など。今秋に予定されている中央教育審議会大学分科会将来構想部会の答申に基本的な方向性が盛り込まれる見通しで、その後、大学分科会で具体的な公開対象と公開の仕方が検討される予定だ。制度の施行時期は未定だという。
 情報公開は、大学に教学マネジメントの強化を促す施策と合わせて将来構想部会のワーキンググループで検討された。教学マネジメントには学修成果の可視化が不可欠となるため、学修成果に関する情報の把握を大学に課し、それらの全体的な状況をまとめて公開することも合わせて義務付ける方向になっている。各大学が把握したデータを教学改革に活用しつつ、社会に対する説明責任も果たすという考え方だ。単位の修得状況や成長実感等、学修成果に関する情報のほか、ST比やシラバスの内容といった大学教育の質に関する情報についても公開を義務付ける。
 さらに、一律に義務付けるのではなく公開を推奨する対象として、同様に学修成果に関する情報と教育の質に関する情報に分けて整理した。
 これら「公開の義務付け」と「公開推奨」の対象として例示されている情報は下表の通り。

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 「情報公開の義務付け」については、教員数や入学定員、入学者数などに関する現行の情報公開制度と同様に学校教育法施行規則で規定したうえで、各データの定義や算出法など、公開情報の詳しい内容は、新たに策定する教学マネジメントのガイドラインで示す方向だ。「情報公開の推奨」についてもガイドラインで説明する。

●学生満足度も教学の観点からの把握が必要

 留年率や中退率については公開に消極的な大学が多い。単位認定や進級判定の厳格運用、長期留学の義務付け等、教育の質を高める施策の結果として留年率が高くなる大学にとっては、こうした背景の説明もなく数字だけが独り歩きすることが懸念されている。そのため 中教審では、数値情報についてはその背景に関する補足説明とセットで公開することも視野に入れて検討することになりそう。情報公開の流れが強くなる中、今回の制度でどこまで規定されるかにかかわらず、各大学が主体的に教学改革に取り組みつつ、数字等の情報の背景を積極的に説明して理解を得る姿勢が重要になる。
 学生満足度や成長実感、学修意欲等、主観に関わるものについては「調査の設計次第で数字の操作が可能」との指摘が委員から挙がり、3ポリシーに基づく教学の観点から満足度等を把握するようガイドラインで規定する方向だ。 
 「入学者選抜の状況」の内容としては志願者数、受験者数、合格者数などの数字データのほか、入試方式や日程などが想定されているが、一部メディアで「新たに公開義務化けを検討」とされた実志願者数については「これまでのところ議論の俎上に上がったことはない」(文部科学省の担当者)という。
 担当者は「大学にとって過大な負担とならないよう配慮しつつ、公開する意義がある多様な情報を出してもらうことによって、社会が一面的な評価をすることなく大学の全体像を捉えるよう促す制度にしたい」と話す。留年率についても、例えばキャップ制の実施状況や留学率等と合わせて公開することによって、より的確な解釈が可能になるはずだと指摘する。


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