文科省が大学の機能別分化に向けて3つの類型を提示-将来構想部会
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2018.0312
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3行でわかるこの記事のポイント
●たたき台として示されたのは「世界的研究・教育」「高度な教養と専門性」「職業実践能力」
●それぞれの社会人・留学生受け入れターゲットも例示
●機能強化の方向に沿った資金配分や連携・統合を念頭に置いた議論がスタート
文部科学省はこのほど、大学の機能別分化のたたき台として「世界的研究・教育の拠点」「高度な教養と専門性を備えた人材の育成」「職業実践能力の養成」の3類型を示した。18歳人口の急減によって大学の経営環境が厳しくなっていく中、大学間の連携・統合を前提とした特色の明確化を進める具体的な議論がスタートした。
大学の機能別分化は、3類型それぞれの「教育」「研究」「連携の姿」を例示する形で3月初旬、中央教育審議会の大学分科会将来構想部会で示された。前回の部会で文科省は、2040年度の大学入学者が2017年度から20%(12万人)減って51万人になるとの試算を提示。それを受けた具体的な議論のたたき台となるのが今回の機能別分化のイメージだ。
国立大学については、各大学が3類型の中から自学の機能を選び、機能強化の方向性に沿った取り組み成果を運営費交付金の配分に反映する仕組みが制度化されている。同様の制度を公立・私立大学にも拡大することを念頭に置いた議論がなされる。今回の新たな3類型が適用される設置区分について文科省からは特に説明がなく、国立の類型との関係をどう整理するかなど、詳細は今後、議論される見通しだ。
今回示された各類型は次の通り。
「①世界的研究・教育拠点」は大学院教育が中心で、世界的な水準の研究を担う。同じ類型の大学同士での連携が想定されている。
「②高度な教養と専門性を備えた人材の育成」は学部~修士・専門職大学院の教育が中心。各分野を先導する研究、国際展開を見据えた連携を行う。
「③職業実践能力の養成」は学部段階の教育が中心で、地域課題に対応した研究を担う。経営基盤が弱い小規模大学の場合、各大学が強みとする部分を提供・共有し、補完し合う連携が想定されている。
18歳人口が減る中で社会人や留学生の受け入れを拡大すべく、各類型について社会人と留学生それぞれのターゲットも例示された。社会人のうち、高度な研究能力を必要とする人材は①または②の大学で受け入れ、地域課題に対応できる職業能力や幅広い教養を求める人材は②または③の大学で受け入れる。留学生について、③の大学は主に資格や特定のスキルの修得を希望する人材の受け入れが想定されている。
2005年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」では、「世界的研究・教育拠点」「高度専門職業人養成」「幅広い職業人養成」「総合的教養教育」「特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究」「地域の生涯学習機会の拠点」「社会貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流等)」の7類型を例示。各大学が自らの選択で機能を担うことを前提に、複数を選ぶ場合も比重の置き方の違いによって緩やかに機能別分化していくという方向性が示された。今回の将来構想部会で示された3類型は将来像答申の7類型を大括りにしたものと言えそうだ。
たたき台について、委員からは次のような意見が出た。
・ (既存の)大学だけでなく、短大・高専・専門学校・専門職大学についても検討すべきだ。
・全ての大学が教育と研究の両方を担う必要はなく、連携・統合によって補完し合う方向に行くべき。
・大学としてはいずれかの類型に入るとしても、教員や学生は類型間を柔軟に移動できることが大事。③の大学に入ったが②で学びたいということも可能にしておかないと制度が硬直化、劣化してしまう。
・大学の機能はこれほど単純ではなくもっといろんなパターンがある。地域密着型の大学で最先端の研究をしている人もいれば、研究型大学で地域課題に取り組んでいる人もいて、学部の教育だけやる大学が地域課題を解決できるとは思えない。①の大学同士のみでの連携というのも狭すぎる。もっと柔軟に考えるべきだ。
委員の1人である東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授は会議後、「将来像答申では7類型はあくまで例示であり、それ以外の機能も含め各大学が自ら複数を選ぶことが提案されていた。国立大学の3類型についても当初は特定の2つの類型を選ぶことも可能という方向だったが、それだと制度が複雑になるとか機能別分化が進まないといった意見が出て、最終的には1つだけを選ぶ形になった」と振り返った。こうした経緯もふまえ、今回のたたき台について「主体的選択や複数選択の可否がどうなるのか、明確にする必要がある。各機能が大学としてのものか学部単位なのか、短大や専門学校を含む高等教育全体の機能の整理をどうするかなども議論していくべきだ」と捉えている。
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