2016.1209

文科省「私立大学振興検討会議」で長野県が高等教育振興策を報告

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3行でわかるこの記事のポイント

●大学進学者の流出率8割に危機感
●県立短大の4大化、私大の公立化などの動き
●委員から「公立化ではなく私大の経営支援を」との声も

文部科学省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の第10回が12月7日、都内で開かれた。長野県から高等教育支援策に関する報告を受け、私立大学の公立化についてただす質問が相次いだ。
「私立大学等の振興に関する検討会議」におけるこれまでの議論の内容はこちら。
/univ/2016/11/shidaishinko09.html
/univ/2016/11/shidaishinko08.html
/univ/2016/09/shidaishinko07.html
/univ/2016/09/monka-shidaishinko.html
/univ/2016/04/post-19.html


●「私大の公立化は住民の意向をふまえて判断」

 長野県の高等教育振興策について、前担当者から報告があった。
 長野県は、知識基盤社会への移行と県の競争力確保、人口減少社会への対応などを目的として高等教育の振興に力を入れており、2016年4月に「信州高等教育支援センター」を設置。5月には「長野県高等教育振興基本方針」を策定した。国公私立合わせて9大学、9短大ある高等教育機関に対し、それぞれの改革方針に沿った「オーダーメイドの支援」を打ち出している。
 背景には、大学進学者の県外流出率の高さ(2015年度は82.6%で全国6位)、大学の収容力の低さ(同16.3%で全国45位)、私立高等教育機関の入学定員割れ(大学は98.0%、短大は83.8%)といった状況に対する危機感がある。
 県の施策としては、大都市圏から学生を呼べるような特色づくりにつながる大学・学部等の新設や学部・学科の再編を支援。その一環として、長野県短大を2018年度に4大化する方向で認可申請中だ。2017年度には私立の長野大学が公立化するのに加え、諏訪東京理科大学も2018年度の公立化が計画されている。松本大学の教育学部設置等、他の私立大学についても、地域への人口定着につながる改組を支援している。
 長野県の説明を受け、私立大学の公立化をめぐる公平性の問題や財政上の効果について、委員の質問が集中した。県の前担当者は、「公平性という面では悩ましいが、地元自治体や住民の意向をふまえて判断している。学費が安くなるというメリットは確かにあるし公立化によるブランド力向上も期待できるが、公立化したら問題解決というわけではない。中身の改革をしっかり見ていくし、私立として存続する大学に対しても、それぞれの方向性に沿った支援に力を入れる」と説明。
 「公立化を検討する前に、地元官民のプラットフォームを作って私立大学の経営を支援し、学費のハンデをカバーすることはできないか」との質問に対して、「県として奨学金の拡充には力を入れているが、経常費の支援は難しく、国の役割に期待するところが大きい」と述べた。

●破たん処理の説明に「私大振興の議論は?」との声

 長野県の報告に続き文科省が、学校法人の破たん処理の類型とそれぞれの課題について説明した。過去5件の事例がある民事再生手続きについては、債権者に対する法的拘束力があるというメリットの一方で、破たんの事実が公表されることによる風評被害というデメリットも示された。私立大学の関係者からは「私大の振興を検討する会議のはずだが、なかなかそのテーマには踏み込まず、経営困難な法人への対応の話に行きがちだ」と疑問を呈する声があがった。
 次回の会議は1月25日(水)15時から開かれる予定。