文科省の「私立大学等の振興に関する検討会議」が折り返し
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2016.0920
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3行でわかるこの記事のポイント
●難しい「私立大学に閉じた議論」による課題の深掘り
●9月以降はガバナンス等、テーマを絞り作業部会で議論
●委員からは「設置形態の枠を超えた経営統合の仕組みづくり」を求める声も
文部科学省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の折り返しとなる6回目の会議が8月末、都内で開かれた。前回までの各委員の報告や意見をふまえ、9月以降はガバナンス強化、国公私の枠を超えた地域の大学間連携による経営強化等について検討することになった。
参考記事はこちら。
/univ/2016/04/post-19.html
「私立大学等の振興に関する検討会議」は大学の再編・統合や経営が困難な大学の閉鎖も視野に入れて私立大学の経営支援の課題について話し合い、2016年度末に報告をとりまとめることを目標に4月にスタートした。
検討会議ではこれまで、「私立大学の振興のためには国公立との財政基盤の格差是正が喫緊の課題。国立大学が現在の規模を維持することは適切か?」「経営困難に陥った私立大学を国が閉鎖へと誘導するための制度整備が必要」といった意見も出た。しかし、「設置形態別の大学の役割」という検討会議の範疇を超えたテーマに踏み込むことはできず、また、委員のバックグランドが多様で利害が異なることもあり、これらのテーマについて議論は深まっていない。私立大学の問題を、国公立大学との関係等、相対的な視点抜きで考えることの限界も垣間見える。
残る半年間は、前半の委員からの発表をもとに論点を明確化し、集中的な議論が必要なものは作業部会を設け、検討していくことになった。主体的な改革の推進体制を整えるためのガバナンス強化については特に委員の関心が高く、「他の公益法人制度を参考にした理事、監事、評議員の機能や責任の明確化」「情報公開の一層の推進」などが焦点となる。座長を務める金沢工業大学の黒田壽二学園長・総長は会議後、「2015年の学校教育法等の改正後も、ガバナンス体制がほとんど変わっていない私大もある。学長のリーダーシップの必要性、理事会の役割などについて周知徹底するための具体的な策が必要だ」と話した。
主に地方における国公私の枠を超えた大学間連携もテーマの一つとなる。共同のFDやSDを通して大学改革を進めたり、一部運営の共同化によって経営を効率化したりすることによって、共生を図るという考え方だ。文科省の担当者は「全国各地に大学コンソーシアムができたが、単位互換等の取り組みにとどまり、学生募集のライバルという関係は変わっていない。特に地方では小さな大学が一つ消滅することによる社会的損失が大きく、地域における学びの支え合いの仕組みづくりは、有効な経営支援の選択肢ではないか」と話す。
ガバナンス強化や大学間連携の検討過程で自ずと私立大学の役割を議論することになり、その公共性をふまえ、経営困難に陥った大学の支援策を考えるというプロセスが想定されている。委員の間からは、「トップクラスの大学をさらに伸ばす方策も考えるべき」との意見も出ている。
会議後、2人の委員に今後の議論の見通し、期待について聞いた。
学校法人二松学舎の水戸英則理事長は「少子化が進み、適正な経営をしていても赤字になる大学の割合が徐々に高くなっている。日本私立学校振興・共済事業団の機能を強化し、大学が支援を求めてから初めて対応するのではなく、危機的な状況に陥る前に経営支援の介入ができるようにする必要がある。設置形態の枠を超えた経営統合も選択肢にできるよう、具体策を考えておくべきだ」と話した。
東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授は、「日本の高等教育で四半世紀にわたって進められてきた市場化、競争原理の導入が過渡期に来ており、設置認可や認証評価のあり方など様々な問題が噴出している。会議ではこれまで、監事機能強化の必要性がかなり言われたが、常勤の監事がほとんどいない私立大学では特に実現が難しい。秋以降の作業部会ではそうした現実に即して議論を深めたい」と話した。
検討会議の進め方について文科省の担当者は「私立大学の自主性に配慮する立場から、われわれ事務局が議論を主導するのではなく、大学関係者の主体的な発意を最大限尊重し、文科省はその実現のために尽力するというスタンスだ」と説明。年度末の取りまとめを目指し、秋以降、議論を深めていく。
9月の会議は26日(月)13時から、三田共用会議所で予定されている。