「私立大学等の振興に関する検討会議」がスタート―私大の役割、経営支援を検討
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2016.0415
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3行でわかるこの記事のポイント
●テーマは役割、ガバナンス・財政基盤、経営支援、経営困難校への対応など
●「比較的新しい大学の方が教育を工夫」との報告も
●今後、中教審で高等教育のグランドデザインを検討
文部科学省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の初会合が4月13日に開かれた。大学の再編・統合や経営が困難な大学の閉鎖も視野に入れ、私立大学の役割の定義とそれをふまえた経営支援について話し合う。
この会議は高等教育局長決定で設置された。金沢工業大学の黒田壽二学園長・総長を座長に、おおむね月1回開催され、年度末に報告をとりまとめる。
文科省の発表内容はこちら↓
http://melmaga.mext.go.jp/c/pFR00yo000KN
会議での検討事項は、私立大学の果たすべき役割、ガバナンスや財政基盤のあり方、経営支援、経営困難な状況への対応など。夏までは、委員からそれぞれの専門分野に基づく報告を受け、意見交換を通して論点を洗い出す。秋以降は各論点について具体的な対応策を検討する。
初回は、東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授と国立教育政策研究所高等教育研究部の濱中義隆総括研究官が報告を行った。
小林教授は高等教育の機会均等化の観点から学費、奨学金の課題を解説。機関補助が厳しくなる中、所得連動型ローンや給付型奨学金など、個人補助の新たな仕組みが必要だと指摘した。高額の授業料を「定価」として設定し、大学独自の高額の奨学金で「欲しい学生」を獲得するアメリカ型の奨学金政策の導入の可能性にも触れた。
濱中総括研究官は2014年に日本学生支援機構と共同で実施した私立大学の学生調査(579大学、約200万人が対象)を基に報告。大学の設置時期別に、立地エリア、学生の家計状況、教育・学習経験等についての分析結果を紹介した。「1993年以降に設置された大学は、地方、低所得層、女子という従来、大学進学に不利とされた層に進学機会を提供してきた」と指摘。これら新しい大学の方が、アクティブラーニング等、授業方法の工夫がなされている傾向にあることも示し、「機会均等への寄与を考えれば、大学の数が過剰と見なすのは短絡的で、新設大学の教育条件が劣るわけでもない」と結論づけた。
両氏は、調査統計等の分析というエビデンスに基づく政策立案を求めた。
文科省は中教審に対し、年内にも高等教育のグランドビジョン策定に向けた諮問を予定。馳浩大臣の考えをふまえ、国公私の枠を超えた大学再編も視野に入れ、高等教育の全体規模のあり方や国公私それぞれの役割と適正規模、経営困難な大学の閉鎖等についても検討の俎上に上げる。今回スタートした有識者会議では、中教審の議論に向けた地ならしとして、私立大学の課題を集中的に話し合う。
閉会後、ある委員は「新設大学だからだめということではない。ただ、近年は明らかに質を伴わない大学があることも事実で、大学設置基準を見直す等の対応が必要だと思う。この会議は恐らくそこまで踏み込むことはなく、地方創生の観点も含め、役割を果たしている大学をしっかり支援していこうという方向に進むのではないか」と話した。