自律学修を支える高大接続期からの伴走型支援―広島国際大学薬学部
入学前教育・初年次教育
2026.1016
入学前教育・初年次教育
3行でわかるこの記事のポイント
●「入学前教育プログラム」で学習のPDCAを回す力を育成
●「入学前担任」による伴走で不安解消と学習継続をサポート
●「学修ポートフォリオ」で自律的な学びと行動変容を促進
広島国際大学薬学部では、学生の主体的な学修姿勢の形成を支援するため、高大接続期から初年次まで一貫した支援体制を構築している。入学前から目標設定や振り返りを通じて学習のPDCAを回す力を育むとともに、教員との継続的な面談を通じて主体的な行動を促進。入学後も週次の振り返りと対話を重ねることで、自ら課題を見つけ、学び続ける力の育成を目指している。
広島国際大学は、健康・医療・福祉を軸に、チーム医療や地域社会に貢献する専門職業人の育成に取り組む医療系総合大学である。なかでも薬学部(入学定員70名)では、3〜4名の学生に対して1名の教員がチューターとして担当し、一人ひとりの状況を丁寧に把握しながら、きめ細かな少人数指導を実践している。
山中浩泰薬学部長は、「近年、学生の学修に対する姿勢や学修習慣は非常に多様化している。大学教育において、学生一人ひとりが自ら目標を設定し、主体的に学び続ける力を育むことが、これまで以上に重要になっている」と語る。「薬剤師として必要な専門知識や技能を修得するためには、与えられた課題に散り組むだけでなく、自らの学修状況を振り返り、その学修状況から問題点を見いだし、改善に向けて行動する姿勢が欠かせない。特に大学1年次は、専門分野の基礎を固めるとともに、大学での学び方を身につける重要な時期だ。だからこそ、入学前から学生自身が目標を持ち、主体的に学修に取り組む姿勢を育んでいきたいと考えている」。
こうした考えのもと、同学部では入学前教育の充実に加え、学修ポートフォリオを活用した面談指導の仕組みを整備してきた。さらに2026年度入学予定者からは、入学前に継続的な学修支援を行うオンライン面談も開始。これらの取り組みを通じて、学生が自身の課題を把握し、主体的に学び続ける力を育むことを目指している。
薬学部では、2025年度入学者から、教育事業者と連携した入学前教育プログラムを導入している。薬学の学びに特化した内容となっており、薬剤師を目指す意義や将来像を考える機会を通じて、学修への動機づけを高めることができる。

本プログラムの特長は、受講前のアンケートやテストによる現状把握から始まり、目標設定、学習の実践、振り返り、改善へとつなげる一連のサイクルが組み込まれている点だ。
山中学部長は、「この仕組みによって、学生は自らの学習状況を客観的に捉え、学習行動を見直す力を養うことができる。入学前の段階から、『自分で学びをマネジメントする力』を身につけてもらうことが狙いだ」と説明する。

実際に、2026年度入学前教育プログラム受講後のアンケートでは、多くの学生が計画的に学習することの重要性に気付き、入学後の具体的な学習目標や行動計画を言語化できていた。また、「どのような薬剤師になりたいか」といった将来像についても考えが深まり、学習への意欲が高まっている様子がうかがえた。
同プログラムは、学生自身が学習のPDCAサイクルを回しながら主体的に学ぶ力を育むよう設計されており、学習行動の改善と、入学後の継続的な成長につながることが期待されている。

薬学部ではこれまでも、学生全員に対して担任が一人ひとりを丁寧に支援している。
2021年度入学予定者からは、「入学前担任」を設置。合格から入学までの期間、メールによるコミュニケーションを中心に、入学前課題へのフィードバックや学習・生活面に関する相談対応を行ってきた。
そして、2026年度入学予定者からは、入学準備期間で継続的にフォローする体制をさらに整備すべく、主に年内入試での入学予定者を対象とし、希望者に月1回程度のオンライン面談を実施。教員一人あたり6~8名の入学予定者を担当した。
入学者への指導の中心を担う田山剛崇教授は、「入学予定者にとって、合格から入学までの期間は、期待が高まる一方で、不安も大きい。入学前担任が継続的に関わることで、入学予定者と早い段階から信頼関係を築き、学習面だけでなく生活面も含めて、安心して入学を迎えられるよう支援していきたい」と語る。
入学前担任は、共通の面談シートを活用しながら、各入学予定者の傾向を把握。具体的には、入学前教育プログラムの理解度を確認する口頭質問を行うほか、学習の進捗状況や高校での学習状況、生活リズムなどをヒアリングする。多角的に入学予定者の現状を理解した上で、最後に「次の面談までどのような学習に取り組むか」を問いかける。
山中学部長は、「次回の面談までに何をするのかを学生自身の言葉で宣言してもらうことで、入学準備期間から主体的に行動する姿勢の形成につながっていると感じている」と話す。
入学前担任が蓄積した学生情報と入学前教育プログラムの受講データは、入学後の担任へと引き継がれる。田山教授は「面談結果とデータの両面から学生を理解することで、一人ひとりの状況に応じた、よりきめ細かな対話が実現できている。また、入学前の不安軽減にもつながっている」と、手応えを語る。

同学部は、2021年度入学者から学部独自でいち早く「学修ポートフォリオ」の運用を開始した。細かいサイクルで入学後担任が学生の行動変容を促すことを目的に、週次で各自の学修行動を振り返り、改善点に気づき、改善行動へつなげるためのツールとして活用されている。
エクセルで作成した記録シートには、同学部で定めた行動目標に対する自己評価を記録する欄、授業以外で費やした自己学修時間を記録する欄、一週間の振り返りや意気込みを記述する欄、教員が記録内容を確認後にコメントを入力する欄が設けられている。
学生は毎週末に学修ポートフォリオを入力し、入力終了後に担任教員宛に共有。担任教員は各学生の学修ポートフォリオの記録内容を確認してコメントし、毎週行われる学修指導時に、対面でフィードバックを行う。教員との対話を通じて、学生が改善行動まで言語化する。これにより、学生は単なる振り返りにとどまらず、「次に何をすべきか」を自ら考え、実行する力を養うことができる。
広島国際大学で2027年度入試から、全学的に高大接続の取り組みをさらに強化する。
具体的には、高校生を対象とした動画学習プログラムや振り返りワークを提供し、医療・健康分野への理解促進と進路選択支援を行う。専門分野への理解を深める機会を早期から設けることで、主体的な学びへの移行を支援する高大接続モデルの構築を目指している。
また、薬学部ほか3学科で実践してきた入学前教育プログラムの考え方を、全学6学部11学科へ展開し、各学科の専門分野への興味・関心を高める取り組みも進めていく予定だ。
高大接続期を「主体的な学びの出発点」と位置づける広島国際大学。入学前から専門分野への関心を育み、自ら学び続ける力を養う取り組みは、今後さらに全学へと広がっていく。
(文:入学者育成研究会 田中 舞)
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