2024.0325

新たな私大支援事業-「教育改革」は中小規模校中心に45校程度を選定

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3行でわかるこの記事のポイント

●「大学間連携」とあわせ、原則5年間の継続的支援を予定
●18歳人口の急減を見据えた構造改革を重視
●経営の健全性確保のため定員規模適正化の観点を求める

文部科学省は、私立大学等を対象に2024年度から始める経営改⾰⽀援事業の公募予告を各大学に通知した。「今後5年間が転換の最大・最後のチャンス」と呼びかけ、18歳人口の急減を見据えた学位プログラム見直しなどの構造改革を促している。公募は45月頃に始まる見通しで、申請予定の大学には学内の十分な議論に基づいて計画を練ることが期待されている。

文科省の次年度私大支援事業<上>教育改革と運営の連携で計画を公募(「Between情報サイト」より)

※本記事で説明する調査票や審査方法等は公募予告時点での検討内容であり、今後、変更される可能性がある。


新たな学⽣層を引き付けるための構造改革を支援

文科省の新たな支援事業は「少⼦化時代を⽀える新たな私⽴⼤学等の経営改⾰⽀援」で、私立の大学・短大・高専が対象。教育・研究の改革を支援する「メニュー1」と、大学間連携による運営の効率化を支援する「メニュー2」があり、計20 億円の予算が計上されている。

事業実施期間は文科省が「集中改革期間」と位置付ける2024年度から2028年度までで、原則5年間の継続的支援を想定している。
2年目以降に新規募集をするかどうかは未定とのことで、文科省の担当者は「申請を検討している大学は、ぜひ今回の公募に申請してほしい」としている。

公募予告では、支援対象となる取り組みや申請条件を説明。申請時に提出する調査票の案も示された。
文科省は事業説明の中で、2040年にかけて起きる18歳人口の急減に言及。大学に対し、新たな学⽣層を引き付けるための教育や経営体制など、中長期的な観点に基づく「構造転換」の必要性を訴えている。

新事業では、構造転換に挑む大学を2つのメニューで支援する。

 

「大学間連携」は後から参入できるオープンな枠組みを評価

「メニュー1」では、今後、社会や地域にどのような専門人材がどの程度必要になるかという予測に基づく学位プログラムの見直し等、人材育成機能強化に向けた経営改革を支援する。教育資源の集中による構造転換を柱に据え、自治体や産業界との連携、リカレント教育や留学生受け入れも期待している。

主として中小規模の私立大学等を中心に、10地域・45類型の計45校程度の選定を予定。1校あたり1000万円~2500万円程度の特別補助に加え、一般補助による増額措置もある。

「メニュー2」では、特に小規模大学にとって負担が大きく、改革の阻害要因になっている管理・運営業務の改善と効率化を支援する。教職員研修や学籍管理、各種証明書の発行など、大学に共通の業務において複数大学間でリソースやシステムを共有して効率化・高度化を図り、各大学が個別に力を入れることの選択と集中につなげるねらいがある。他大学が後から参入できるオープンな枠組みを評価するという。

5グループほどを選び、それぞれ3500万円程度を支援。この事業による知見をもとに、学校法人や大学が共同利用できるプラットフォームの構築について検討し、大学団体等に提案することも想定している。

「メニュー1」と「メニュー2」の両方の申請・選定も可能だ。

 

事業内容を重視し、体制整備状況の得点の影響は小さくなる見込み

申請時には、メニューごとに指定される調査票を提出。調査票は、チェックシートの回答で得点を出す「体制整備状況回答票」と、事業内容を説明する「計画書」で構成されている。

有識者委員会が体制整備状況と事業内容を総合的に審査し、学校種、大学の規模、地域、取り組みの特色等のバランスに配慮して選定候補案を決定。それをふまえ、文科省と日本私立学校振興・共済事業団が最終決定する。

審査では事業内容の方が重視され、「体制整備状況回答票」の点数による影響は小さくなる見込みだ。ただし、申請件数が多い場合には「体制整備状況回答票」の得点に基準を設け、基準に達しない場合は計画書の審査を行わない場合があるという。

 

申請時には教学の構造転換が経営力強化に及ぼす効果を明示する

ここからは、「メニュー1」の調査票等について詳しく見ていく。

「体制整備状況回答票」には、SWOT分析、地域の志願動向調査、定員規模の適正性の検証、外部資金獲得の計画、地元自治体との連携協定等の実施有無といった大学経営関係の項目と、教学マネジメント体制、学修成果の把握と教育活動の見直し、学修時間と学修行動の把握など、教学体制に関するチェック項目がある。

「計画書」は「現状分析・事業目的」「人材育成の計画・経営力強化への寄与」等で構成。

現状分析では、①財務(定員充足状況、収支状況、人件費比率等)に関する定量的分析、②大学の強み・弱みや特色、地域等における立ち位置、③外部環境(高校や地域の企業等からの評価等)、④内部環境(中退率、教職員構成等)について、客観的なデータに基づく分析が求められる。

「人材育成の計画」では、社会や地域の将来ビジョンに基づく人材需要(分野、人材像)の分析、それをふまえて育成する人材像と育成計画を示す。

こうした人材育成方針に基づく学位プログラム編成やカリキュラム改革について、資源の集中や経営効率性の観点も含めて「何をどう転換するか」を示す必要がある。構造転換が経営力強化に及ぼす効果について数量的な分析・予測も記載する。

さらに、計画中間年度(2027年)と計画完了年度(2029年)それぞれの収容定員・学生数・定員充足率、および経常収支差額の達成目標も示す。

 

申請例では学部の統合により定員を半減

メニュー1の申請例として、下図の計画が示された。

定員割れしている国際文化学部と経営学部を統合してグローバル観光学部を新設し、定員を半減。地元の高校生以外に、社会人や留学⽣も新たな学⽣層として受け入れる計画だ。

examle.png

実際の申請においては定員削減が必須ではないが、経営の健全性確保のため、定員規模適正化の観点は強く求められる。

 

定員充足率以外の新たな私学助成配分基準の検討へ

文科省は2024年度から5年間を「集中改革期間」と位置付け、レジリエントな(柔軟性のある)私立大学への構造転換に向けて、①チャレンジ、②連携・統合、③縮小・撤退の3つの方向性での施策を展開。今回予告した新事業の「メニュー1」は①、「メニュー2」は②に該当する。

同省は施策の展開と同時に、これらを支える経営健全性の確保も支援。具体的には、2026年以降、定員充足率や経営状況等が一定基準に該当する場合は「経営改革計画」の策定を求め、経営の健全性確保を図る。
経営改革計画に伴走する中で、定員割れしていても地域で必要とされる大学の要素や条件を明らかにする。そして、私学助成配分の基準として、従来の規模や定員充足率にそれらの要素や条件を加えることを検討し、2029年以降の配分に反映したい考えだ。