2023.1030

文科省の次年度私大支援事業<上>教育改革と運営の連携で計画を公募

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3行でわかるこの記事のポイント

●2040年を見据えた5年間の集中的改革を促す4つの新規事業
●経営計画支援では2つのメニューで公募、総額35億円の支援を予定
●地域の人材需要予測に基づく学位プログラムの見直し等が対象

文部科学省は2024年度からの5年間を私立大学等の「集中改革期間」と位置づけ、構造改革を促す環境整備の事業を展開する。将来を見据えたチャレンジや規模縮小の経営判断等、主体的な判断に基づく改革を支援したい考えだ。

文科省の次年度私大支援事業<下>募集停止後も学生在籍中の支援を継続(Between情報サイト)
*私学助成関係の資料はこちら
*2024年度の文科省概算要求全体の資料はこちら
*記事中の図は文科省の資料から引用


●「『数年は大丈夫』ではなく、20年後を見据えた議論を」

文部科学省は、2040年の大学入学者数は51万人で、2022年から10万人減ると試算。中央教育審議会に2040年以降の社会を見据えた高等教育の方向性、大学改革を支える支援の在り方等に関する検討を求めている。
同省の担当者は「中教審への諮問は、われわれの強い危機感の表れ。各大学には、あと数年は大丈夫という発想ではなく、10年後、20年後を見据えた議論を求めたい。こうした中長期的な観点から、大学の機能を強化するための転換支援が私学行政の最大の課題だ」と説明する。2024年度から5年間の「集中改革期間」に おける大学の主体的な改革を後押しすべく、初年度の概算要求をまとめた。

●「チャレンジ」「連携・統合」「縮小・撤退」の選択肢を具体化

文科省の担当者は、現在の環境下における私立大学の選択肢として、「教育力向上のためのチャレンジ」「連携や統合による経営体力の強化」「縮小・撤退等」を挙げる。これらを有機的につなげながら、各大学の資源の集中や構造改革を促進したい考えだ。
2024年度概算要求の「時代と社会のニーズに対応する私立大学等への転換支援パッケージ」では、これら3つの選択肢を具体的な事業に落とし込んだ。パッケージは新規事業4つと、12年目となる私立大学等改革総合支援事業で構成されている。

新規事業は次の通り。
①少子化時代を支える新たな私立大学等の経営改革支援
②成長分野等への組織転換促進のための支援
③定員規模適正化に係る経営判断を支えるための支援
④私立大学等経営DX推進事業費補助
今回は、支援対象校を公募で選ぶ①について解説する。

●運営業務のリソースやシステムの共有に向けた初期投資を支援

①少子化時代を支える新たな私立大学等の経営改革支援には35億円の予算を計上。教育・研究の改革を支援する「メニュー1」と、大学間連携による運営の効率化を支援する「メニュー2」がある。いずれも各大学が自ら課題を設定し、解決のための計画を主体的に策定する点が私立大学等改革総合支援事業との違いだ。有識者による委員会が、大学や大学グループから出された計画を審査する。

〈メニュー1〉
今後、社会や地域にどんな人材がどの程度必要になるかという予測に基づいて教育資源の集中を図り、学位プログラムの見直し等を含む人材育成機能の強化に取り組む大学を支援する。自治体や産業界との連携、リカレント教育や留学生受け入れなどの施策も期待されている。
主として中小規模の私立大学等を中心に、10地域・5類型の計50校程度の選定を予定。1校あたり1000万円~3000万円程度の特別補助に加え、一般補助による増額措置もある。

〈メニュー2〉
特に小規模大学にとって負担が大きく、改革の阻害要因になっている管理・運営業務の改善と効率化を促す。履修登録や学籍管理、卒業証明書の発行など、大学に共通の業務において複数大学間でリソースやシステムを共有して効率化・高度化を図り、それぞれの選択と集中につなげる。
10グループほどを選び、それぞれ5000万円程度で初期投資を支援。一般補助の増額も予定している。
文科省の担当者は「地域の大規模大学が音頭を取って連携を呼びかけるような動きを期待している。グループの立ち上げ以降も新たな大学の参加を可能にすることなどを選定条件にしたい」と話す。
この事業による知見をもとに、学校法人や大学が共同利用できるプラットフォームの構築について検討し、大学団体等に提案することも想定している。

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●3月までの公募開始をめざす

メニュー1、2とも基本的に5年間の支援が想定されているが、自走化に向けて4年目以降の支援額を逓減する。
各大学や大学グループが十分な時間をかけて実効性ある計画を練られるよう、文科省は次年度予算の成立後、可能な限り早く公募を開始し、公募期間を長く取りたい考えだ。「遅くとも2024年3月の公募開始をめざす。これに間に合わない場合も、事前に事業内容や評価の観点を予告し、申請準備をしてもらえるようにしたい」と話す。

次回の「下」では残る3つの新規事業について説明する。