2023.0911

〈学生募集をDXで動かす~接触者育成のシナリオ〉vol.06
MAツールの機能-infoCloudはサイト閲覧のログ取得が強み

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3行でわかるこの記事のポイント

●「1to1アプローチの自動化」こそがMAツールの要件
●サイト閲覧データはマーケティングにおける重要なリソース
●ユーザフレンドリーなコミュニケーションで高校生を育成

MA(マーケティング・オートメーション)ツールの機能について、高等教育機関向けMAツール「infoCloud」の開発元である日東システムテクノロジーズの代表取締役・青木稔さんに聞きました。


Amazonのリコメンドのように暮らしに根を下ろしたMA

青木さんのお話は以下の通りです。

デジタルで捉える顧客の行動に応じて1to1のアプローチを行うMA(マーケティング・オートメーション)ツールは、10年ほど前から企業の間で広がり、BtoCの企業にとっては今や当たり前のシステムになりました。ネット通販のAmazonを例にとると、顧客の購買履歴に応じて興味がありそうな商品をリコメンドしたり、購入した消耗品がなくなる頃に再購入を促したりと、MAは今や私たちの暮らしにしっかり根を下ろしたシステムです。

高等教育機関向けにも、MAツールとは少し異なる「デジタルマーケティングツール」と呼べるものがいくつか登場しています。大学が保有するリストを使って一斉にメールを配信し、開封の有無など、一人ひとりの反応を確認できるというものです。「開封した高校生にはこのメールを送る」という具合に施策を重ね、反応がいい生徒を出願見込みと見なすわけです。
これはデジタルツールによるマス型のメールマーケで、メール配信と結果のフィードバックをベンダーが行う場合にはその代行サービスという見方もできます。

このような「デジタルマーケティングツール」とは一線を画す「高等教育機関向けMAツール」として、我々が5年前にリリースしたのがinfoCloudです。MAとは「マーケティングの自動化」であり、システムが自動で1to1のフォローをする点が「デジタルマーケティングツール」との違いです。

「名無しの訪問者」もリスト登録と同時にサイト閲覧ログと紐づけ

infoCloudでできることを説明します。

①顧客リストの生成・管理
各社進学媒体からの資料請求ファイルの一括取り込みや入力による資料請求者、オープンキャンパス参加者のリスト登録はもちろん、ウェブサイト訪問者もフォームから自動でリストへの追加が可能です(詳しくは後述)。

②アプローチの自動化
事前に設定したシナリオに基づき、一人ひとりの行動に応じた内容のLINEやメール配信等、自動で施策を実行します。例えば、「ウェブサイトの入試のページを見たら3日後に入試説明会の案内メールを配信する」という具合です。
高校生が「自分のために送られたメッセージ」と感じられるユーザフレンドリーなアプローチを実現します。

③LINEとの連携
自学の公式LINEの登録者にメッセージを送ることができます。LINEには志望度のより高い生徒が登録する傾向にあり、育成の重要ターゲットとなります。また、資料請求やオープンキャンパスの申し込みをLINEで受け付けることが可能になり、友達を増やす効果も期待できます。

④ウェブサイト閲覧のログの取得
サイトのどのページに何分間滞在したか、どのように遷移したかを捉え、これらの動きに応じたリアルタイムの1to1アプローチが可能です。
個人を特定できない「名無しの訪問者」には、WEBサイト上のポップアップでオープンキャンパス告知等を表示して参加申し込みを促し、接触者としてリストに取り込むことができます。それ以前のログと紐づけることができるので、その生徒の興味・関心がわかります。

⑤リアルタイムで「ファン度」を把握
メール開封やオープンキャンパス参加、サイト上の行動などを自学の「ファン度」としてスコア化する際、単純な積み上げだけではなく、一定期間アクションがない場合に減点もします。これによって、常に「現時点でのファン度」を的確に捉えることができます。

「いきなり出願」予備軍を接触者に変える施策の設計が可能に

④ウェブサイト閲覧のログの取得」について補足します。
マーケティングにおいてウェブサイト上の行動を把握することはとても重要です。メール上のURLクリックの有無だけに着目すると、ランディングページ(LP)に遷移してすぐに離脱した場合もスコアが加算されてしまいますし、それ以降のページ遷移は追跡できません。
メールからの遷移はもちろん、検索などでサイトを訪問した場合もきちんと捕捉し、ページ遷移も適切にスコアに反映するには、サイト上の行動そのものを捉える必要があります。

こうした観点からinfoCloudはサイト上の行動を重視し、「名無し訪問者」も含めログを蓄積します。「名無しの訪問者」がリスト登録した場合、そこまでの閲覧履歴を分析すれば、「いきなり出願」の予備軍を接触者に変えるためのコミュニケーションを設計しやすくなるはずです。

高校生のデータに基づき直近のアクションで評価

⑤リアルタイムでの『ファン度』の把握」について補足します。
スコアを積み上げるだけだと、その生徒の「ファン度」をリアルタイムで捉えることはできません。例えば、1・2年生の時に何度もイベントに参加したのに3年生になってアクションが止まった場合はその大学に関心がなくなったと推定すべきです。スコアの積み上げのみだと、こうしたケースでも最新のスコアは高い状態で出願見込みと見誤ってしまいます。

infoCloudでは、「初回接触から30日以内にイベントに申し込まない生徒は出願しない確率が80%」といった独自のデータに基づき、減点のロジックも組み込んでいます。常に直近のアクションをもとに「ファン度」を判断することが大事ですから。

専門学校で広がっているinfoCloudの活用

infoCloudは専門学校で広く使われています。大学に比べると定員規模が小さく、接触者に1人ずつ電話をかけ、フォローして入学に導くという1to1アプローチが当たり前になっているからでしょう。内製でやる資料請求者のリスト入力の延長で手動の1to1をやっているわけです。

とは言っても、専門学校は職員の数も少ないのでMAツールを使って省力化したいというニーズがあります。資料請求後のアクションがない接触者はツールにフォローを任せ、その分、オープンキャンパスに来た生徒のフォローを手動でより丁寧にする、といった取り組みをしています。これらの進捗を日々、デスクのパソコンで確認できることがツール導入のメリットになっています。

高校生が不要と感じる情報発信は大学のブランドを損なう

専門学校に比べて大学がMAツールの導入にさほど積極的でないのは、資料請求者のリスト管理を外注したり、職員の数が多かったりしてあまり負担を感じていないからでしょう。1to1マーケティングに関心がなく、募集広報はマスマーケでやっていればいいと考える大学もまだまだ多いようです。
しかし、手動で1to1マーケティングができない大規模ECサイトが積極的にMAを導入しているように、本来、大学にこそマーケティングオートメーションが必要だし、その効果も高いのではないでしょうか。
 
誰もが日々あふれるほどの情報を受け取る今日、高校生は自分にとっての要不要をシビアに判断したうえでメールを開封したり削除したりします。
不要な情報ばかりの発信はユーザフレンドリーとは言えず、大学のブランドを損なうことにもなりかねません。

専門学校以上に多数の高校生とコミュニケーションする大学こそユーザフレンドリーの考え方に関心を持ち、1to1アプローチに取り組む必要があると思います。数百、数千人規模の高校生に対する1to1はこれまで非現実的な課題でしたが、今はテクノロジーによって解決できます。 

スモールスタートで具体的な活用イメージを

MAツールには多くの機能がありますが、最初から全部使いこなす必要はなく、できることからのスモールスタートでいいと思います。
例えば、定期的にオープンキャンパス告知のメールを自動配信し、参加申し込み者に即座にサンクスメールを送る。開催前日にはアクセスマップ入りのリマインドメール。開催翌日はお礼と次のイベントの案内を送る―という具合に。

開封や参加申し込み、LPへの遷移がリアルタイムでわかってマーケティングオートメーションの感覚がつかめ、「次はこんなことをやってみたい」という具体的なイメージがわくはずです。

カスタマーサポートで成果創出に伴走

我々はサブスクリプションのサービスを提供しているので、顧客満足度の向上には最大限の力を注ぎます。導入した以上使いこなしてほしいし、成果を出してほしい。
導入から本稼働までの1か月間は専任のサポート担当者がつき、その後は電話でカスタマーサポートをします。
機能や使い勝手について、同じ改善要望が複数の顧客から挙がったら、可能な限り早い実装をめざして対応しています。

顧客の活用状況をモニタリングし、「うまく使えていないのでは?」と思ったら「何かお困りですか」と働きかけます。使っていただくことによって大学はもちろん、心地良いコミュニケーションを享受できるという点で高校生にもメリットがありますから。
トップダウンによるツール導入ではなく、現場から「使いたい」という声が挙がった大学ほど、使いこなしているようです。
いずれにしても、我々は意欲的な大学はとことんサポートします。

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*現在、高等教育機関に対し、複数の事業者が学生募集のデジタルツールを提供しています。
進研アドが提供する学生募集MAツール「infoCloud Digital Marketing」の紹介はこちら