2023.0711

〈学生募集をDXで動かす~接触者育成のシナリオ〉vol.03
創価大学-MAツールで「いきなり出願」の課題解決を模索

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3行でわかるこの記事のポイント

●「いきなり出願」層の志望度を上げて歩留まり率向上をめざす
●自学への関心が低い層の情報収集活動や興味・関心をMAツールで分析
●分析の中間まとめを2025年度入試の低学年広報に反映

創価大学のMA(マーケティング・オートメーション)ツール活用法を取材。あえて、自学に対する関心が低い接触者を追跡する、そのねらいとは―。


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創価大学プロフィール

〈学生募集の状況〉
◆入学定員:1,500人
◆課題
「いきなり出願」の予備軍に接触を促すこと

〈MAツール導入状況〉
◆導入時期:2023年4月
◆運用する部署(人数):アドミッションズセンター(2人)
◆活用目的
自学に対する関心が低い高校生がどんな情報に反応するか把握し、発信の内容や手法に反映してナーチャリングする
◆主な活用法
メールとLINEで情報を発信し、反応をスコア化
◆データ件数:約13,000件(1・2年生5,400件、3年生7,600件)


求められている情報を発信して接触者の離脱を防ぐ

創価大学の学生募集における困りごとは、一般選抜での「いきなり出願」が年々増えていることです。アドミッションズセンターの小林光義さんは「『いきなり出願』の受験生は本学の情報をどのように集めているのか。受験生に寄り添ってこの層について理解し、志望度を上げられれば歩留まり率の向上が期待できます」と説明。
関心が低い接触者の情報収集活動の特性や興味・関心事を知ることができれば、いきなり出願層へのアプローチのヒントが得られると考えました。もちろん、関心が低い接触者自体のナーチャリングにも生かせます。

小林さんは「大学が伝えたい情報と高校生が知りたい情報との間にミスマッチがある」という問題意識を持っています。「接触者の離脱を防いで出願につなげるためには、高校生が知りたい情報を発信していく必要があります」。
どうすれば自学に対する関心を高め、出願まで導けるのか―。その答えを知るためには、客観的な分析が必要だと小林さんは考えました。「何がきっかけで本学に興味を持ち、どんな情報を求めているのか。MA(マーケティング・オートメーション)ツールを使ってデータであぶり出し、オープンキャンパスのプログラムなど、発信する情報の中身や手法を見直して一人ひとりに合った情報でナーチャリングしていきたいと考えました」。

DXの必要性に対する認識が共有され、ツールの導入を迅速に決定

MAツールの導入を提案する学内の会議で小林さんは、「今の高校生はオープンキャンパスや大学案内より先にSNSで大学の情報を得ている。デジタルネイティブの行動を把握したうえで施策を講じる必要がある」と訴えました。
否定的な反応はほとんどなく、導入はスムーズに承認されたといいます。「少ない人員で成果を上げるためにDXを推進すべきだという認識が浸透し、学外との連携で効率化すべきという風土も元々ありました」。

「とにかく始めてみよう」と、いくつかのツールを比べたうえで選定。小林さんともう1人の入試広報担当者が協力会社との月1回の打ち合わせで導入準備を進め、4か月後の2023年4月に本稼働しました。
準備段階で直面した問題は、MAツールで管理するメールが学外のドメイン名で発信されることでした。自学とは関係のないドメイン名からの発信は、高校生やその保護者に疑念や不安を与えてしまう恐れがあると考えました。そこで、情報システム部門と協議を重ねた結果、大学が管理しているドメインの1つを発信元アドレスとして転用するカスタマイズを施すことにしました。

メール・LINEへの反応やイベント参加をスコア化

MAツールの運用においては、協力会社が配信と結果分析、月次のレポーティングを担当。大学側は分析用データを提供し、分析結果をふまえて翌月の配信内容を決めます。
現在はメールとLINEで情報を発信しながら反応を見ている段階。開封やランディページへのアクセスの有無など、反応に応じて次の情報を送り分けるといった設定をしています。これらの反応やイベント参加ごとに加点し、出願の確度が高まるスコアを見極めようとしています。 

入試案内、大学の強みとするグローバル教育、キャリア支援など、さまざまな情報を送り、反応がいいものとそうでないものを識別。スコアが低い生徒が反応するのはどんな情報かといった観点でデータを見ています。
情報ごとに反応が良いエリアや高校の偏差値帯を把握し、ウェブメールサービスで同じカテゴリの情報を配信する時の絞り込みに反映するなど、募集広報の費用対効果を高めようとしています。

学年やエリアを一くくりで発信するマスマーケティングを見直す

身近な話題や社会課題と結びつけて各学部を紹介する「学び探しサポートBOOK」のデジタル版を大学のウェブサイトで公開していますが、高校2年生にも多くアクセスされていることがMAツールによる計測で判明。「今後の母集団形成に有効なエビデンスとなります」と小林さん。学年やエリアを一くくりにして情報を発信する従来のマスマーケティングの見直しを考えています。

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オープンキャンパス参加者のアンケートデータも今後、分析する予定です。「アンケートはコロナ禍の前からデジタル化しています。紙のアンケートだと志望度の高い人だけが答える傾向があるのに対し、デジタルならそれ以外の生徒も多く答えてくれます。接触履歴と紐づけて関心が低い層の特性をあぶり出せるはず」と期待を寄せます。
この夏、これまでにMAツールで集約したデータの中間とりまとめを行い、早速、2025年度入試の低学年広報に生かす予定です。

学生のSNSチームがリアルな大学情報を発信

オープンキャンパスなどで実際に創価大学を訪れた高校生は「これまでのイメージががらりと変わり、興味が高まった」と感想を述べることが多いといいます。そこで、これまで年5、6回だった学内体験イベントを2023年度は2月以外、毎月開催。

「メディアによる情報発信でも、型にはまった内容ではなく、大学生活や学びをありのまま伝えるよう努めています」と小林さん。その一環として、在学生によるSNSチーム「創大アンバサダー」がTwitterやYouTubeでリアルな情報を発信しています。「イベントの告知も、自分が高校時代に参加してためになったお勧めプログラム、事前準備のアドバイスなど、学生ならではの視点が入るので高校生から好評です」。

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入学後のデータとつないだ分析で広がる募集広報の可能性

創価大学では、MAツールのスコアで出願見込み人数を把握するようになりました。「従来、模試回ごとの志望者数で見ていたデータをリアルタイムで捉えられるようになりました」(小林さん)。

IR室で入学者の追跡調査も担当する小林さんは今後、MAツールで蓄積した入学前のデータと入学後のデータを組み合わせて分析してみたいといいます。「学生生活アンケートでは、コロナ禍前は70%程度の学生が本学の強みである留学制度に興味を示していましたが、コロナ禍を経て10ポイントほど減少したことが気になっています」。

入学前と入学後のデータを分析すれば、創価大学で成長する高校生のタイプを描き出すこともできそう。小林さんは、それを募集広報に反映することにも意欲的です。「本学には先輩が積極的に後輩の面倒をみるという良き伝統があり、卒業生とのつながりも強い。この強みを生かして入学前、入学後、そして卒業後のデータまで結びつけることによって、募集広報にいろんな可能性が広がりそうです」。

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