2022.1004

理系分野への学部再編等を支援するための基金創設へ-文科省

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3行でわかるこの記事のポイント

●デジタル、脱炭素等、成長分野の人材育成強化に向けて100億円を概算要求
●私立大学を主な対象に、複数年度にわたる継続的な財政支援へ
●「意欲ある大学が躊躇なく踏み切れるよう」背中を押す

文部科学省は、デジタル化や脱炭素等、理系を中心とする成長分野の人材育成を大学に促すため、これらの分野への改組や学部新設を支援する事業の実施をめざしている。2023年度のスタートを念頭に新たな基金を創設し、支援可能な総額を事前に示すことによって財政面の不安を取り払い、改革へと大学の背中を押したい考えだ。

*文科省の資料はこちら(P8)
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●教育未来創造会議が「予見可能性を持った再編」の支援を提言

 政府が理系人材の育成に力を入れる背景には、デジタル化や脱炭素等、世界的課題への対応を迫られる中、日本では理系を専攻する学生がOECD諸国の中でも少ないという問題意識がある。教育未来創造会議は、2022年5月にまとめた第1次提言で「各大学等におけるDXや、デジタル、グリーン等の成長分野への再編等を行う際の初期投資(設備等整備、教育プログラム開発、教員研修等)、開設年度からの継続的な運営への支援を行う」「複数年度にわたって意欲ある大学等が予見可能性を持って再編に取り組むことのできるよう継続的に支援する」などと言及し、政府に検討を求めた。
 文科省は、大学による理系への学部再編等を支援するための基金を創設すべく、2023年度の概算要求で100億円を計上。理系を専攻する学生は国立大学57%、公立大学43%に対し、私立大学は29%と特に低い。一方で学部学生数は、私立大学が全体の78%を占める。そこで、理系学部への再編においては私立大学が主な支援対象となる。

●初期投資として市場調査やコンサル等のアウトソーシングも想定

 理系の学部をつくるには施設・設備や機器等への投資が必要だが、それを学生納付金に転嫁せずに進められるよう、国として財政支援に力を入れる。検討段階から学部等の新設、当面の運営という数年がかりの取り組みには継続的な支援が期待される。しかし、従来のような単年度ごとの補助事業だと、財政状況によって予算が削られたり事業そのものが廃止されたりすることもあり得る。
 文科省の担当者は「改革意欲が高いにもかかわらず、複数年度にわたる継続的な財政支援の保証がないため、学内の合意形成ができず、躊躇する大学もあると聞く。私立大学の学生納付金は文系より理系の方が高い傾向にあり、計画の進行中に資金が不足した場合、不足分を学費に転嫁せざるを得ない事態も想定される」と説明。基金の創設によって、例えば「この計画であれば、完成年度までの〇年間にわたって最大〇円の支援が可能」と示すことができるという。複数年度にわたる財源として、柔軟かつ安定的な活用を認める方向だ。
 大学改革支援・学位授与機構が基金の運営を担い、大学からの相談や支援申請に対応。改組に必要な初期投資や当面の運営経費を支援する。初期投資としては、高校生や産業界を対象とした新学部のニーズ調査やコンサル等、アウトソーシングの費用も想定される。
 文科省は、概算要求した100億円から、 基金の規模拡大をめざす。事業への早期着手のため、2022年度第2次補正予算でも要求を上げる方向だ。

●「意欲ある大学を幅広く支援したい」

 支援対象とする大学の要件について、文科省は「現在、検討中」とする。学生募集に苦しむ大学が人材ニーズに対応した改組で起死回生を図る取り組みも、積極的に促したい考えだ。総合大学の学部再編も対象にするという。「ハードルを下げて意欲ある大学を幅広く支援したい。一方で、国費を投入する以上、支援の妥当性については説明責任があり、何らかの基準は必要になるだろう」と話す。
 この事業では大学の組織再編のほか、高等専門学校の機能強化、「トップレベルの情報人材の育成支援」にも取り組む。トップ人材育成については、国公私立大学の大学院レベルの改革も支援する予定だ。