データサイエンス教育認定プログラム、リテラシーレベルは96大学
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2022.0829
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3行でわかるこの記事のポイント
●リテラシーレベル認定校中、女子大が10校、短大は9校
●応用基礎レベルは大学単位、学部・学科単位で計61大学
●専門分野と関連づけて学修意欲向上を図るプログラムも
文部科学省はこのほど、2022年度の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」の認定校を発表した。大学・短大・高専が対象で、リテラシーレベル 139 校、応用基礎レベル 68 校が申請、それぞれすべてが要件を満たしていると認定された。女子大や短大を含め、データサイエンス教育が急速に広がっている状況がうかがえる。認定プログラム(前年認定分を含む)のうち、先導的で独自の工夫・特色がある「プラス」には、リテラシーレベル7件、応用基礎レベル9件が選定された。
*文科省の発表資料はこちら
*参考記事
データサイエンス教育認定プログラム第二弾と先導的な「プラス」を発表(Between情報サイト)
「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」は、データサイエンス等に対する関心を高め、基礎的な知識・スキルを修得して活用できるようにする「リテラシーレベル」と、課題解決のための実践的な能力を育成する「応用基礎レベル」からなる。いずれも体系的な教育を行う大学・短大・高専の正規課程が対象。すべての学生がデータサイエンスの基礎を学べる環境の整備を目的とするリテラシーレベルは、大学単位のプログラムを認定。文理を問わず複数の専門分野の学生が履修していることなどを認定要件として2021年度にスタートし、本年度が2回目となる。一方、本年度が初となる応用基礎レベルは大学単位、学部・学科単位、どちらのプログラムも対象となる。
今回、リテラシーレベルに認定された大学は国立26校、公立6校、私立64校の計96校。短大の認定はすべて私立で9校だった。前年分と合わせると大学162校、短大11校が認定プログラムを持つことになる。
女子大も目立ち、奈良女子、郡山女子、共立女子、京都光華女子、安田女子、活水女子など10校。短大は東京経営短大、滋賀短大、山口短大、宮崎学園短大などが認定された。
一方の応用基礎レベルに認定された大学は、大学単位と学部・学科単位を合わせて国立33校、公立4校、私立24校の計61校。
リテラシーレベルに認定された大学の例をいくつか紹介する。
鳥取大学は2021年度に「データサイエンス教育プログラム」をスタートし、2022年度から「情報リテラシ」(1年次前期、2単位)と「データサイエンス入門」(1年次前期、1単位)を全学で必修化した。
「情報リテラシ」では情報倫理・セキュリティの知識を養いながら基本ソフトの活用スキルを修得。学科単位で1クラス50人程度、全18クラスを設け、情報基盤機構4人、医学部1人、工学部1人、計6人の教員が授業を担当する。単位未修得者は2年次以降の専門の必修科目と重ならないよう時間割を組んでいる。「データサイエンス入門」では、オンラインコンテンツを活用してビッグデータ時代に不可欠なリテラシーを修得する。教育支援・国際交流推進機構データサイエンス教育センターがプログラムの改善を担う。
星槎道都大学は、共通教育科目の科目区分「情報・数理基礎教育科目~情報リテラシー」の9科目中、データサイエンス・AIを扱う全学必修の「情報基礎演習Ⅱ」(1年次、1単位)で認定を受けた。学科別にクラスを編成し、それぞれの専⾨分野に関するテーマや事例を積極的に取り上げる。演習でも専⾨分野の実データを分析し、学習意欲の向上を図る。認定科⽬の履修以降も段階的、広範に数理・データサイエンス・AIについて学ぶ教育体系を組み、卒業後も継続的に学べるよう意識・モチベーションの醸成に努める。
富山国際大学はリテラシーレベルと応用基礎レベルで同時に認定された。
リテラシーレベルの「数理・データサイエンス・AIリテラシー教育プログラム」の修了要件は学部によって異なる。現代社会学部では「情報科学概論」「ビジネス情報演習I」「ビジネス情報演習II」の3科目(いずれも必修、各2単位)すべての単位修得を課す。子ども育成学部は「情報処理演習」「人間と情報」の2科目(各2単位)の単位修得を課す。申請時点で選択科目が含まれた子ども育成学部がその必修化を予定しているため、2023年度以降はすべての学生がリテラシーレベルのプログラムを履修することになる。
応用基礎レベルは現代社会学部のプログラムで認定を受けた。リテラシーレベルの3科目に加え、「情報社会と情報倫理」「人工知能とその活用」「プログラミング基礎」「データサイエンス基礎I」(いずれも必修、各2単位)の4科目の履修、さらに「データサイエンス実践演習I」「データサイエンス実践演習II」(各2単位)のどちらかの履修によって応用基礎レベルを修了する。
リテラシーレベルで「プラス」に選ばれた6大学のうち、私立は大正大学のみ。地元自治体や企業と連携し、現実の課題や実データを活用したリアリティのある学修内容、多数の実務家教員の配置など、学習効果向上に努めていることが「先導的で独自の工夫・特色がある」と評価された。
ベネッセコーポレーションで大学のデータサイエンスプログラム導入を支援する社会人教育事業部の黒岩友樹グループリーダーは「リテラシーレベルの各プログラムの中身を概観すると、動機づけを重視してAI・データサイエンスの世界に誘うプログラムがある一方、自学でできることをふまえ、数理・統計やセキュリティ関連の授業にウエイトを置くプログラムも多く見られる」と解説。応用基礎レベルについては「大学としての認定という高いハードルをクリアしたプログラムは特に注目される。学部・学科単位のプログラムも対象になることを考えると申請件数はやや少ない印象で、大学の一層の取り組みを期待したい」と話す。