改革総合支援事業、「申請しない大学」に奮起を促す新項目も
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2021.0830
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3行でわかるこの記事のポイント
●前年からの得点率の伸びを評価し、「2年計画での採択」をめざしてもらう
●「入試改革のインセンティブ」となる新規項目は次年度以降
●データサイエンス教育の改善・波及に関する取り組みは特別補助に移行
2021年度の私立大学等改革総合支援事業の評価項目がこのほど、大学に通知された。教育改革に関わる取り組みを評価する「タイプ1」では、採択校が固定化して「申請をあきらめている大学」が多い現状を打開すべく、「前年からの得点率の伸び」を評価する項目が新設された。
私立大学等改革総合支援事業は大学、短大、高専が対象で、今回が9年目。教育、研究、地域貢献、産学連携の4つのタイプ(カテゴリ)があり、複数のタイプに申請できる。申請時には、タイプごとに設定された改革の評価項目について自己評価する。総合得点の高い順に選定され、補助金が傾斜配分される。2021年度の事業予算は前年から4億円減の110億円。
前年と同様、「タイプ1 『Society5.0』の実現等に向けた特色ある教育の展開」「タイプ2 特色ある高度な研究の展開」「タイプ3 地域社会への貢献」「タイプ4 社会実装の推進」の4つのタイプがある。評価項目の見直しは前年に続き小幅なものとどまった。
特に多くの大学が申請する「タイプ1」の採択校数は前年実績の130校から105校に減り、年々狭き門になりつつある。一方で「タイプ4」は前年実績の52校から80校に拡大される。
文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」が7月にまとめた提言では、外部検定の活用等による英語4技能評価や記述式問題の出題は、私学助成等によるインセンティブを設けて各大学の個別試験での導入を促す方向性が示された。この提言の改革総合支援事業への反映は次年度以降となり、今回の「タイプ1」の高大接続関連の評価項目は「一般選抜における記述式問題の出題」「総合型選抜における基礎学⼒の把握」といった既存のものをはじめ、前年とほとんど変わっていない。
文科省の担当者は「大学にとって準備期間が必要であることも念頭に、今年度はこれまでの改革を評価する内容にした。提言で示された改革メニューを改革総合支援事業で後押ししていくことは間違いなく、今後どのタイミングでどれを評価項目に入れるか検討していく」と説明する。
2021年度から、特別補助でデータサイエンス教育を支援する新たな仕組みが導入されるのに伴い、改革総合支援事業の「タイプ1」からは、データサイエンス教育関係の項目の一部がなくなった。削除されたのは「FDの実施」で、教育改善・波及・展開に関する取り組みは特別補助での評価に移る。改革総合支援事業では「数理・データサイエンス・AI科目の開講」「実践的なデータサイエンス教育の実施」など、科目の開設・実施に関わることについて評価する。
それ以外の「タイプ1」の変更点には以下のようなものがある。
・前年の「IR機能強化のため、IRの企画・実施等に関する研修会に派遣」に加え、「学外向け研修会の主催など、他大学へのIRの積極的な波及・普及の取り組み」が評価される。
・前年の「TA、SAに対する研修の実施」が「学生が大学の教育研究活動に参画する機会の設定」にレベルアップ。
・卒業時アンケート調査における回収率の最高得点基準を80%から85%に引き上げ。
「タイプ1」では、「採択校の固定化の緩和」を目的に、新たな評価項目「教育改革全体の総括」が設けられた。満点に対する自学の得点率が前年より20ポイント以上アップしていたら5点、10ポイント以上で3点、5ポイント以上で1点、加点される。この項目は次年度以降も設定される予定。
教育改革への継続的な取り組みが評価される「タイプ1」は評価のハードルが徐々に上がって採択校が固定化し、取り組みが遅れている大学は最初からあきらめて申請しない傾向がある。「教育改革全体の総括」はそのような大学にチャレンジを促す仕掛けだ。
文科省の担当者は「2年計画のつもりでまずは申請し、次年度のための土台を作ってほしい」と説明。学内の取り組みを総点検し、進展させられそうな項目を見つけて計画的・集中的に取り組めば、次年度以降に得点を伸ばして採択される可能性が出てくるというわけだ。ボーダーラインで採択校の入れ替わりが起きれば、「チャンスあり」と見てチャレンジする大学が増えるのではないかと期待を寄せている。
改革総合支援事業の申請期限は11月末で、1月に採択結果が公表される予定。