分野横断型学習プログラムとして大正大学など6件を選定―文科省
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2020.1214
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3行でわかるこの記事のポイント
●「知識集約型社会」人材育成事業のメニューは「学修の幅を広げる」と「突出した能力の伸長」
●プログラムに加え、教学マネジメントなど「継続的提供の仕組み」も審査
●次年度は「4学期制+集中的学修プログラム」が対象
文部科学省は分野横断型の学習プログラムを構築し、それを持続的に提供するための全学的な教学マネジメント体制を整備することを要件とする「知識集約型社会を支える人材育成事業」で新潟大学や大正大学など6校を選定した。2年目となる2021年度は4学期制を導入し、特定のテーマについての集中的なプログラムを構築する大学を新たに募集する予定だ。
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2020年度からスタートした「知識集約型社会を支える人材育成事業」は、2018年の中央教育審議会「グランドデザイン答申」で打ち出された「文理横断・学修の幅を広げる教育」「全学的な教学マネジメントの確立」などの具体化に取り組む大学を支援する。初年度は4億円が計上されている。
この事業がめざすのは、複雑化・高度化する社会において正解のない課題に対応できる人材の育成だ。その実現のため、普遍的な見方で物事の全体像を捉えるのに必要な体系的で幅広い知識を修得させる一般教育・共通教育、および学部・研究科の枠を超えた教育プログラムで複数分野にわたる深い専門知を修得させる専門教育、それぞれの実現・両立に取り組む大学を支援する。
教育プログラムの新たな構築が必須だが、審査されるのはプログラムの中身だけではない。支援期間終了後も継続的にプログラムをブラッシュアップしながら自走していくことを担保するものとして、教学マネジメントや管理運営の体制、社会・産業界との連携といった「仕組み」についても説明を求められる。
事業には2つのメニューがある。
メニュー1「文理横断・学修の幅を広げる教育プログラム」は文理横断型、あるいは文系内、理系内で分野を横断する形で複数の深い専門知を修得させるプログラムが対象。全学横断の担当組織の下での共通教育の再構築のほか、副専攻制度、学部等連携課程制度等の活用による学部の枠を超えた学位プログラムの新設などが例示されている。1件あたり年間5000万円程度、最大5年間の補助を予定している。
メニュー2「出る杭を引き出す教育プログラム」は特定の分野で突出した資質を持つ学生を見出し、高校・大学・大学院が連携して早期からのハイレベルの教育で能力を伸ばすプログラムが対象。例えば飛び入学の場合、学生の関心を広げて他の研究分野との融合を促すような科目提供が求められる。1件を選定し、3400万円程度、最大5年間の補助を予定している。
今回、メニュー1に22件の申請があり、5件が選定された。メニュー2は1件のみの申請で、選定された。
選定されたのは下表の計6件。
大正大学の「新時代の地域のあり方を構想する地域戦略人材育成事業」では、地域の多面的な課題を解決するため、さまざまな専門分野の人材を統合・調整する新しいリーダーを「地域戦略人材」と定義。その育成のため、2021年度に全学共通科目を刷新、文系の学生もデータサイエンス教育を履修できるようにするなど、文理横断型のプログラムを整備する。継続的な推進の仕組みとして、学長が機構長を務める総合学修支援機構(DAC)を設置。これを司令塔にして全学横断的な教育改革を進める一方、ガバナンス強化による組織改革、教職協働体制の確立、さらに目指す人材育成に向けた地域・社会とのインタラクション強化にも取り組む。
2年目となる2021年度は6億円の予算を要求している。メニュー1、2の新規募集はなく、新たにメニュー3「インテンシブ教育プログラム」での募集を予定。4学期制を導入し、その中の1つの学期に特定のテーマに関する集中的なプログラムを開講することが要件だ。例えば、SDGsをテーマに1学期間、基礎知識の修得からPBL等による実践まで集中的に学んで、課題解決力を育成するプログラムなどが想定されている。
文科省の担当者は「現在、およそ5.5%の大学が4学期制を導入しているが、2学期制を単純に分割しただけで学期ごとに科目が完結しないなど、実体を伴わないケースも見受けられる。細分化された学修内容をテーマに沿って統合し、精選された少数科目の授業を週に複数回開講する実質的な4学期制を整えてほしい。短期集中で学ぶことによって、学生自ら『〇〇ができるようになった』と実感し、意欲が高まるようなプログラムを支援したい」と説明する。
メニュー3は3件を選定し、1件あたり年間6000万円を最大4年間支援する予定だ。