今年度の改革総合支援事業は入試での多面的評価と教育との連動を評価
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2020.0804
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3行でわかるこの記事のポイント
●ブランディング事業分の除外により予算は前年度から33億円減の114億円
●研究支援へのシフトで「高度な研究」「社会実装」の両タイプを強化
●STEAM教育など文理横断プログラムも新たな評価対象に
2020年度の私立大学等改革総合支援事業の調査項目がこのほど、大学に通知された。大学の関心が特に高い「タイプ1 『Society5.0』の実現等に向けた特色ある教育の展開」の内容を中心に見ていく。
私立大学等改革総合支援事業は大学、短大、高専が対象で、今回が8年目。教育、研究、地域貢献、産学連携などのカテゴリ(タイプ)があり、大学は複数のタイプに申請できる。申請時には、タイプごとに設定された改革の進展度の評価項目について自己評価する。総合得点の高い順に選定され、補助金が傾斜配分される。
2020年度の事業予算は114億円で、研究ブランディング事業選定校の支援分30億円も含んでいた前年度に比べると33億円少ない。今年度はブランディング事業分が他に移され、ここには含まれていない。
2019年度にはタイプの再編をはじめ評価項目が大きく見直されたが、今回は小規模な変更にとどまった。タイプの枠組みは基本的に前年度と同じで、教育に関する「タイプ1」は政策のキーワードを冠して「『Society5.0』の実現等に向けた特色ある教育の展開」となった。他は「タイプ2 特色ある高度な研究の展開」「タイプ3 地域社会への貢献」「タイプ4 社会実装の推進」。
予定されている選定校数はタイプ1が前年度の175校から110校に減る一方でタイプ2は40校から50校に増えた。タイプ3は前年度と同じ165校、タイプ4は80校から90校に増加。若手研究者育成を含む研究支援強化の一環で、タイプ2とタイプ4の枠を拡大。各大学での取り組みが進んできたタイプ1を減らしたこととあわせ、教育から研究へのシフトと言えそうだ。
「タイプ1」には新たに3つの項目が設けられた。
①2020年度入試での多面的・総合的評価に連動した取り組み
入試で多面的・総合的評価を行い、評価した能力を伸ばすための初年次教育等を行っているか。例えば、入試で英語外部検定試験を導入している場合、入学後に4技能を伸ばす支援をしているかなど、入試と教育との連動が問われる。
②2021年度入試での「数学」または「情報」の出題
数理・データサイエンス・AIを応用できる力を判定するため、文系・理系を問わず「数学」または「情報」を出題することを募集要項に明記しているかが問われる。高校の新学習指導要領で2022年度から「情報Ⅰ」が必修化されるのに先駆けた対応だという。
③文理両方を学ぶ「リベラルアーツ教育」「STEAM教育」「分野・学部等横断カリキュラム」のいずれかの実施
この項目の前には「分野・学部を超えた横断的なカリキュラム編成を推進する検討組織」の有無を問う項目があり、同組織による具体的なアウトプットとなる教育プログラムの設置を求めるものだ。検討組織の有無に関する前年度の設問では「STEM(Science、Technology、 Engineering、 Mathematics)教育」とされていたが、今回は「Art」を加えた「STEAM教育」になった。「Artは芸術だけでなく人文・社会科学系も含む」と説明され、文理横断のカリキュラムとして「STEAM教育」を求めている。
今回の改革総合支援事業でも前年度と同様、データサイエンス教育や情報公表が重視されている。
データサイエンス教育については「データサイエンスに関する科目を全学部で開講しているか」に加え、「データサイエンスと社会とのつながりについて教えられる教員を養成するためのFDを実施しているか」「企業等の実データを用いて課題解決のためのデータ分析を行う実践的なデータサイエンス教育を実施しているか」といった設問がある。特に文系の学生対象のデータサイエンス教育ではデータ活用の面白さや学ぶ意義を理解させて抵抗感を軽減することが重要と言われており、これらの設問にもその考え方が反映されている。
成長実感や満足度を聞く卒業時のアンケート、キャリア(就職・進学)に関する卒業生調査や就職先への調査は、いずれも結果を公表しないと得点できない。卒業生調査は、結果を教育活動の改善に反映させる仕組みがあれば点数が加算される。
新型コロナウィルスの影響に配慮し、大学からの申請締め切りは例年より1カ月遅い11月末となっている。1月に選定結果が公表され、支援対象校は年度末の補助金最終交付段階で増額される。