グランドデザインと大学の課題③ 当事者として関わる「地域連携」が大学の持続可能性を高める
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2019.0710
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3行でわかるこの記事のポイント
●地域社会から見た大学の姿の再確認が地域連携の第一歩
●大学も含む地域の構成員全員が資源を持ち寄り課題解決
●「世界の中の地域」を意識し開かれた地域連携を
「地方創生」は日本全体の共通の課題であり、それは大学の存亡を左右すると言っても過言ではない。本誌編集長が「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」を読み解き、地域と大学の持続性を高める大学の地域連携のあり方について、考える。
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*「グランドデザインと大学の課題①」はこちら
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(株)進研アド Between編集長
中村浩二
なかむらこうじ●1990年(株)福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社。高校事業部にて高校の教育改革支援に携わった後、(株)進研アド九州支社勤務を経て2017年より現職。大学基準協会短期大学評価委員会委員。
〈講演活動〉
大学基準協会主催短期大学シンポジウム、千葉県大学・短期大学入試広報連絡会、九州地区私立大学入試・広報連絡協議会ほか、大学・高校向けの入試改革、大学改革についての講演多数。
グランドデザイン(答申)の内容をふまえると"人材育成"と"地域貢献"における機能強化が、大学の持続可能性を高めるキーとなっています。このうち後者の地域連携は、国の最重要課題である「地方創生」にとって要となるものです。もとより、多くの地方大学がその地域で生き残るためには、地元から支持されることが不可欠です。
しかしこれまで大学は、地域からすると「どこに相談してよいかわからない」「どんな資源があるのか、何ができるのかわからない」存在だったとの声を聞くことがあります。そもそも地域という狭い世界の中で、課題を解決する側、される側として向き合うこと自体に無理があるのかもしれません。その意味で地域と本気で向き合うには、まず自学が地域からどのような存在と見られているかを確認することが出発点となります。
下の図表に「これから」の連携の形をまとめました。今後は、大学も地域の一構成員として、地域の課題解決の当事者となる連携が求められるのではないでしょうか。つまり、お互いの関係性をよくするためだけの連携から、地域のめざす将来像に向かって各ステークホルダーが共に資源を持ち寄り取り組む連携へと変える必要があるのです。
高校でも2019年度から「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」がスタートするなど、地域との協働による改革が進められています。このように地域連携は、地元高校との関係を強化する取り組みでもあるのです。
地域連携を進めるにあたり、取り組むべき課題は3つあります。
まずは「地域の将来像」です。未来のコンセプトをつくり上げるには、対話を行う場所と、コンセプトワークをリードする人が必要になります。対話に適した施設を有する大学、社会科学系に強みを持つ大学などが、この活動をリードすることが期待されます。
次に、「地域の活性化」です。これは町に"にぎわい"を取り戻す活動です。地元就職者の割合が高い大学は、活動そのものがキャリア教育にもなるため、積極的に取り組みたい課題です。
最後は、「地域イノベーション」です。これは、地域に産業を興し、イノベーションに挑戦する企業や人材を育成する取り組みです。理工系に強みを持つ大学だけでなく、人材育成や社会実装では人文社会系の教育研究成果が大いに求められます。いずれにせよ、各大学がそれぞれの強みを生かすことが大切です。
さて、今の時代、地域の課題といえども、グローバル化の波を無視することはできません。よって、"世界の中の地域"という視点も重要です。「開かれた連携」が地域と大学の持続可能性を高めると言っても過言ではないでしょう。