2019.0311

改革総合支援事業の4年制大学の選定率は66%から49%に低下

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3行でわかるこの記事のポイント

●申請校数、選定校数とも前年度から大きく減少
●「プラットフォーム」の個別大学の選定では参加の実態をチェック
●「他大学等との広域・分野連携」の選定校数は当初予定を下回った

2018年度の私立大学等改革総合支援事業の選定結果がこのほど発表された。「タイプ1 教育の質的転換」の支援対象数が絞り込まれたこともあり、4年制大学の選定校数は前年度より100校以上少ない431校となった。4年制大学の状況を中心に解説する。
*選定校の一覧はこちら
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*記事内の表はいずれも文科省の公表資料から。


●2018年度の予算総額は131億円

 私立大学等改革総合支援事業は大学、短大、高専が対象で、今回が6年目となる。2018年度の予算額は前年度より45億円少ない131億円。「タイプ1 教育の質的転換」の一部項目が一般補助の「教育の質の指標」に移行したことなどにより、予算と選定校数が少なくなった。
 前年度までの「産業界・他大学等との連携」を「タイプ2 産業界との連携」「タイプ3 他大学等との広域・分野連携」に分割。「タイプ1 教育の質的転換」「タイプ4 グローバル化」「タイプ5 プラットフォーム形成」と合わせ、5つのタイプで募集・選定した。
 大学は複数のタイプに申請できる。申請時には、タイプごとに設定された改革の進展度の評価項目について自己評価する。総合得点の高い順に選定され、配分額に得点が反映される。
 大学単位で申請するタイプ1~4について、4年制大学は延べ761校(実数で431校)が申請し、延べ294校(実数で210校)が選定された。実数での選定率は49%だった。前年度は延べ1143校(実数で478校)が申請して延べ497校(実数で317校)が選定(選定率66%)されており、今回は申請、選定とも大きく減少した。

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 5タイプ全てで選定されたのは東京都市大学のみ。4タイプで選定されたのは東北公益文科大学、芝浦工業大学、東洋大学、法政大学、金沢工業大学、同志社大学、関西大学、神戸学院大学、福岡工業大学、長崎国際大学の10校だった。

●「大学単独による地域連携も選択肢として検討を」

 2年目となる「タイプ5 プラットフォーム形成」は、地域の大学群と自治体、産業界の連携を通じた大学改革を支援する。今回から、すでに体制が整備されたプラットフォームを対象に中長期計画の実行・達成状況を評価する「発展型」と、体制整備の状況を評価する「スタートアップ型」の2つの区分ができた。初年度からの継続支援となる「発展型Ⅰ」は「地方型」「都市型」合わせて7件47校(青森市産官学連携プラットフォーム、大学コンソーシアム京都など)、それ以外の「発展型Ⅱ」は6件23校(世田谷プラットフォーム、大学等による「おおいた創生」推進協議会など)、「スタートアップ型」は10件64校(山形県未来創造プラットフォーム、ちば産学官連携プラットフォームなど)が選定された。

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 初年度はプラットフォームとして選定されると、申請した参加校はほぼ全て選定されたが、今回は大学個別の評価項目で「プラットフォームへの参加・貢献の実態があるか」を評価し、実態が乏しいと判断した場合は支援対象から外した。「発展型Ⅰ」に申請した7件のプラットフォームは全て選定されたが、これらの参加校として申請した大学等82校のうち選定されたのは47校にとどまった。
 文科省の担当者は「選定されなかった大学等は必ずしも地域連携の意識が低いわけではなく、所在地が拠点から遠いために単位互換等への参加が難しいケースもあるのでは」と見る。「現状、府県レベルのプラットフォームが目立つが、今後は連携するエリアの適正規模を考える必要がある」と指摘。2019年度は、プラットフォーム形成とは別に大学単独での地域連携も支援対象にすることを念頭に、「広域的な地域コンソーシアムへの参加が難しければ、参加を必須と考える必要はない。リソースや抱える事情は大学ごとに違う。自学のミッションをふまえて単独で所在地の自治体や産業界に連携を働きかけ、単独型で申請するという発想もあっていい」と話す。

●「他大学との連携」は選定校の実施率が7%の項目も

 「タイプ5 プラットフォーム形成」が地域における大学等の連携を支援するのに対し、分離・新設された「タイプ3 他大学等との広域・分野連携」は所在地が離れ、同じ、または近接した分野を持つ大学同士の教育・研究連携を支援する。選定された4年制大学は27校、短大を合わせても28校で、当初予定の50校を大きく下回った。評価項目で要求された取り組みのハードルが高いためで、タイプ全体での選定率29%、申請校の平均得点率17.3%とも、他のタイプと比べて低さが目立つ。
 全17項目のうち「ナンバリングの共有」「共同によるキャリア形成(キャリア教育プログラムの共同実施、到達目標の共有化、 キャリア相談体制整備の共同実施―の全てを実施)」「教員と職員両方の人事交流」「50講座以上のeラーニングシステムの共有化」などは選定校でも実施率が7%にとどまる。10%台の項目も4つあった。これについて、選定にあたった事業委員会は委員長所見で、文部科学省に「より有効な設問の設定に意を用いていただきたい」と求め、評価項目と要求レベルの妥当性に疑問を投げかけた。
 2019年度の私立大学等改革総合支援事業は、「タイプ1 特色ある教育の展開」「タイプ2 特色ある高度な研究の展開」「タイプ3 地域社会への貢献」「タイプ4 社会実装の推進」の4タイプに再編される。「タイプ3」はプラットフォーム形成と大学単独型の地域連携の両方を対象にし、単独型は30~50件の採択を予定している。「グローバル化」は改革総合支援事業のテーマからはなくなり、特別補助の増額メニューに移行することが決まっている。


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