改革総合支援事業を再編-「研究」が加わり「グローバル」は他に吸収
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2018.0911
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3行でわかるこの記事のポイント
●2018年度で廃止される研究ブランディング事業を統合
●従来の5タイプから「教育」「研究」「地域貢献」「社会実装(産学連携)」の4タイプに
●地域貢献はプラットフォーム型に加え大学単独での申請も可能に
2019年度、私立大学等改革総合支援事業が大きく変わる。2018年度限りで廃止される私立大学研究ブランディング事業を統合し、従来の5つのテーマを組み替えて4つに再編。研究ブランディング事業での採択をめざしていた大学は次年度に向けてどう動けばいいのか? 改革総合支援事業のグローバル化のメニューに取り組んできた大学は? 大学が次年度以降の採択に備えるうえで理解しておくべき「新生・改革総合支援事業」の概要を解説する。
文部科学省幹部による汚職事件があった私立大学研究ブランディング事業は廃止される。2018年度は予定通り公募を行い、50件程度を採択する。3年間での採択は全私立大学・短大の約2割にあたる150件になることから、同省は「所期の目的は達成した」と説明している。
文科省の概算要求で示された2019年度からの私立大学等改革総合支援事業は、現在の5タイプの枠組みを抜本的に見直して4タイプに再編される。私立大学研究ブランディング事業ですでに採択された大学もその中で引き続き支援する。中央教育審議会の大学分科会将来構想部会で、大学の人材育成における機能別分化のイメージとして示された3つの観点(「世界を牽引する人材」「高度な教養と専門性を備えた人材」「具体的な職業やスキルを意識した高い実践能力を備えた人材」)をふまえた選択を各大学が行い、改革総合支援事業が機能の明確化を支援するという位置付けだ。
2019年度からの私立大学等改革総合支援事業は、「タイプ1 特色ある教育の展開」「タイプ2 特色ある高度な研究の展開」「タイプ3 地域社会への貢献」「タイプ4 社会実装の推進」の4タイプになる。
採択方法にも変更が加えられそうだ。現在の改革総合支援事業は調査票による得点のみで採否が決まるが、次年度からは研究ブランディング事業で実績のある計画書も併用する方向で検討されている。調査票で示されるタイプごとのメニューに取り組むだけではなく、大学の創意工夫による独自の取り組みも積極的に評価するねらいがある。各大学は今のうちから次年度の同事業について理解を深め、中教審等で示される大学改革の方向性に注視しながら自学の取り組みをブラッシュアップし、いずれかのタイプに位置付けてその意義を説明できるよう準備を進めておきたいところだ。
従来の改革総合支援事業と研究ブランディング事業の各タイプを念頭に置いた現在の取り組みを次年度からどのタイプに読み替えて申請するかは大学ごとの判断に委ねられるが、おおよそ想定される対応関係を示すと以下のようになる。
「タイプ1 特色ある教育の展開」は、学修成果の可視化に基づく教育方法の改善や文理横断的な教育プログラムの開発、教育の質向上のための取り組み、および入試体制の強化や高大連携といった高大接続の取り組みを支援する。一部項目が私学助成一般補助の「教育の質の指標」に移行した後の「旧タイプ1 教育の質的転換」に対応する。また、複数の大学がそれぞれの強みを持ち寄る共同プログラム構築なども対象となるので、「旧タイプ3 他大学との連携」の要素も入ってくると考えていいだろう。
「タイプ2 特色ある高度な研究の展開」は研究ブランディング事業の「タイプB 世界展開型」から移行し、社会的要請の高い課題の解決に向けた研究やイノベーション創出に寄与する研究を支援。他大学との共同研究も対象とし、改革総合支援事業の「旧タイプ3 他大学等との連携」も取り込む。
「タイプ3 地域社会への貢献」は、研究ブランディング事業の「タイプA 社会展開型」から移行し、地域と連携した教育課程の編成や地域の課題解決に向けた研究など、地域の経済・社会、雇用、文化の発展に寄与する取り組みを支援する。都市部の大学が地方の自治体と連携するような遠隔型の地域貢献も対象だ。また、改革総合支援事業の「旧タイプ5 プラットフォーム」もここに統合され、大学間、自治体・産業界等との連携のプラットフォーム形成を支援する。つまり、複数の大学によるプラットフォーム型と大学単独型、両方の地域貢献が対象となり、単独型は30~50件の採択を予定。文科省は、単独型についても連携先の自治体に対する総務省の特別交付税措置を求めていく考えだ。
「タイプ4 社会実装の推進」は、改革総合支援事業の「旧タイプ2 産業界との連携」から移行し、産学連携部門の強化や企業との共同研究・委託研究、知的財産・技術の実用化などを支援する。研究ブランディング事業の両タイプの要素もここに吸収する。
これら全タイプを通じて、成果の発信とリカレント教育への配慮が何等かの形で評価さる点も抑えておきたい。
「旧タイプ4 グローバル化」は改革総合支援事業からはなくなり、特別補助の増額メニューに移行する。理由について、文科省の担当者は「多くの大学がグローバル化に取り組むようになり、独立したタイプを設けて支援すべき段階を終えた。新しい4つのタイプいずれにもグローバル化の視点は入ってくるので、これらに分散吸収されたとも言える」と説明する。これまでは、グローバル化のメニューに集中的に取り組む大学を改革総合支援事業の枠内で支援してきたが、今後はグローバル化に関わる個々の取り組み対して一定額の加算という方式で支援する。
グローバル化の際立った取り組みで改革総合支援事業に申請する場合は、例えば建学の精神に即した内容の留学プログラムを必修化するという計画書を添えて「タイプ1 特色ある教育の展開」に申請することなどが考えられそうだ。
2019年度の改革総合支援事業の予算は、研究ブランディング事業の分を統合する形で前年から69億円増の200億円を要求(私立大学等経常費補助全体の概算要求額は35億円増の3189億円)。2018年度の採択件数は両事業合わせて約500件となる見通しだが、2019年度の改革総合支援事業では約480件とやや縮小される。これまでの事業に対するばらまきとの見方を意識した面もありそうだ。
担当者は「次年度、新規採択があるのは改革総合支援事業だけになるが、この事業では1年ごとの努力が効いてくる。大学にとって取り組みの指針となり得る項目を提示していくことで、不断の改革へのモチベーションを生み出す原動力であり続けたい」と話す。
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