国立大アンブレラ方式の検討会議始動、理事長と学長の役割分担が焦点に
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2018.1001
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3行でわかるこの記事のポイント
●「2019年度中の法改正」明示を受け、具体的な仕組みを検討
●一律の適用ではなく選択肢としての制度を設ける方向
●「スケールメリット向上、リソースの効率的投下」というねらいを確認
国立大学のいわゆるアンブレラ方式の制度設計について議論する「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」(座長:有川節夫放送大学学園長理事長)の初会合が9月26日に開かれた。法人の統合によってスケールメリットを高め、多様な資金調達など、経営力強化につなげるという目的を確認、「法人の長と学長の役割分担をどうするかが最大の論点」との認識で一致した。
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国立大学の一法人複数大学制は、大学の連携・統合を円滑化する施策として中央教育審議会大学分科会の将来構想部会の中間まとめで提起された。同じ時期に閣議決定された政府の「統合イノベーション戦略」では、「2019年度中に国立大学法人法を改正し国立大学の一法人複数国立大学経営を可能化する」と期限が明示された。
実際に、岐阜大学と名古屋大学、静岡大学と浜松医科大学、小樽商科大学と帯広畜産大学と北見工業大学、奈良教育大学と奈良女子大学、4件の法人統合が各大学間で検討されている。こうした動きを受け、文部科学省が選択肢としての制度化を念頭に有識者による検討会議を設けた。
「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」は、有川座長はじめ筑波大学の永田恭介学長、金沢工業大学の黒田壽二学園長、関西学院大学の村田治学長、筑波大学の金子元久特命教授、公立大学協会の奥野武俊専務理事、グッゲンハイムパートナーズ(株)の酒井重人社長ら14人の委員で構成されている。
初会合では、一法人複数大学制に慎重な立場を取る金子氏が「この制度について議論をしていくと、現在の国立大学法人制度そのものの課題に踏み込むことは避けられない」と指摘。黒田氏も「国立大学を法人化する時、文科大臣が学長を任命する仕組みによって国と大学の関係を明確化するために一法人一大学制にしたと理解している。一法人複数大学制では(学長の任命権者が変わることもあり得るため)、国と大学の関係をどう位置付けるのか考える必要がある」と述べた。
一方、京都大学の土井真一教授は「国立大学に一般化した議論ではなく、実際に一法人複数大学をやりたいというニーズがあり、それを認めることに一定の意義があるのだから具体的に議論するというミッションにすべきだ」との考えを示した。
文科省がこうしたやりとりを引き取る形で「この会議自体は、制度を設けることを前提に具体的な中身を検討する場という位置付けだ。その過程で、一法人一大学のままの大学にとってもメリットとなる新たな仕組みが見つかれば(国立大学法人制度全体に)取り込みたい」とした。
委員から出た主な意見は次の通り。
<最大の論点は「法人の長と学長の役割分担の明確化」>
・私立では、理事長と学長を別にしているか兼ねているかにかかわらず、理事会が教学のことを理解し、黒子に徹して資金計画を立てているところがうまくいっている。国立でも、学長に経営力があるなら理事長を兼ねてもいい。それぞれの役割をどう位置付けるかが最大の論点だ。
・国立大学の法人化のねらいは経営と教学の一体化だった。私立の学校法人の課題も同様で、理事長と学長の分離・兼務という形式ではなく実態として一体化しているかどうかが重要。
<議論において留意すべき点>
・少子化や国の財政難という環境下でスケールメリットを高めてリソースの集中、効率的投下を図り、経営能力を上げるための制度だと理解している。「18歳人口が減るから大学の数を減らす」ということを出発点にすべきではない。
・趣旨には賛同するが、一法人複数大学制が目的化してはいけない。その選択をする大学は、一般論としてのメリットではなく、当該大学それぞれにとっての積極的理由を明確にすべき。
・制度ができても国立大学への一律の適用には慎重であるべき。各大学がそれまで積み上げてきた価値、特色が失われることにもなりかねないからだ。
・多様性を許容する制度であることが重要。
・法人統合だけでなく、なぜ大学の統合をしないのかということも論点になる。
<一法人複数大学制そのものに対する慎重論>
・私立の一法人複数大学制には歴史的経緯があり、世界的に見ても極めて特異な例だ。それを国立に広げるのが適切なのか。
・国立大学は多様化すべきだが、この制度はそれに逆行するのではないか。
次回の会合は10月16日、非公開で開かれ、法人統合を検討している4組の大学からヒアリングを行う予定。
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