国大協に聞く―外部検定・記述式の活用ガイドラインにおける考え方
学生募集・高大接続
2018.0411
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●高大接続の理念に基づく認定試験の選抜活用が重要
●受験生の利便性を第一に考えた「全認定試験の指定」
●高校現場では外部検定の受検が着実に進行
国立大学協会は先ごろ、大学入学共通テストで導入される英語外部検定試験等の活用に関するガイドラインを公表し、センターが認定した全ての外部検定を対象にする方針を示した。2023年度までは、共通テストの英語の試験と外部検定の両方を全ての受験生に課すこともあらためて表明。2021年度入試からの新たな仕組みに対応するうえで、公立・私立大学からも注目されているこのガイドラインにおける基本的な考え方について、国大協の木谷雅人常務理事に聞いた。
*「大学入試英語成績提供システム」に参加する英語外部検定のことを、国大協のガイドラインでの表記に合わせて「認定試験」としている。
*国大協のガイドラインはこちら
*2020年度以降の入試に関する国大協の基本方針(2017年11月発表)はこちら
国大協が3月に公表したガイドラインの概略は次の通り。
1.英語認定試験
「一般選抜」の全受験生に認定試験を課すとともに、2023年度までは共通テストの英語の試験も併せて課し、それらの結果を入学者選抜に活用する。
・全ての認定試験を対象とする。
・「出願資格」「加点方式」のいずれか、または両者を組み合わせて活用する。
2.共通テストの記述式問題
記述式問題を含む国語と数学を「一般選抜」の全受験生に課す。
・国語は段階別評価を点数化してマークシート式の得点に加点する。
・数学の段階別評価は正誤のみの判定であること、マークシート式問題と一体で出題され配点もなされることから、従来のマークシート式と同様に扱う。
*認定試験の加点方式、および国語の記述式の段階別評価に基づく加点、それぞれの具体的な方法については別途、例を示す。
ガイドラインの考え方、および各国立大学の対応や今後の課題に関する木谷雅人常務理事の話は次の通り。
―認定試験と共通テストの英語、両方を課すのは高校生にとって負担が大きいとの声が大学関係者からも出ているが。
入試における認定試験の活用について十分な実績、経験のデータがない中、検証してデータをそろえていくうえでもまずは両方を課す必要があるという判断になった。
前期日程と後期日程で別の大学に出願する高校生もいるので、大学ごとにどちらを課すかバラバラでは混乱を来す恐れがある。
共通テストの英語の試験は学校の授業をきちんと受けていれば点数が取れるという想定だし、高校の先生方によると生徒の外部検定受検もかなり進んでいるようだ。従って、両方を課すことが必ずしも過大な負担になるとは言えないのではないか。
―東京大学が認定試験の選抜での活用に懸念を示したことで、高校現場は地元の国立大学はじめ、全国の大学でどのような検討がなされるか注目している。
今回のガイドラインは各国立大学の意見をふまえて決定していて、東大も了承したものと理解している。東大でも認定試験への具体的対応はまだ決まっておらず、ガイドラインをふまえた検討がなされるものと考えている。
入試は各大学の主体的な判断に基づいて決めるものであり、他大学がある一つの大学と同じ方向に動くということはないだろう。国大協としてはあくまでも、高校で4技能を育てる重要性をふまえ、入学者選抜でそれを適正に評価することが高大接続の理念にかなっているとの認識の下、各国立大学にガイドラインに沿った対応を期待している。
―全ての認定試験を対象とする方針の基本的考え方とは?
学校単位や個人でさまざまな検定試験を受ける受験生にとっての利便性を第一に考えた。大学によって活用できる試験がバラバラだと混乱を来し、公平性も保証できない。
―出願資格としての活用に関するただし書きで「他の教科・科目との関連性もふまえ、受験生の受験機会の確保について十分に配慮する」とあるが、その意図は?
英語の認定試験の成績が良くないという理由だけで出願すらできない受験生が多く出るような、高いレベルを出願資格として設定するのは避けるべきということだ。多くの受験生が英語以外の科目も含めて総合的な評価を受けられるようある程度、間口を広くしておくのが望ましい。
―加点方式のただし書きには「制度の大幅な変更による受験生や高等学校教育への影響を鑑み、英語全体に占める認定試験の比重については適切なものとなるよう十分に考慮する」とある。一部報道にあったように「英語全体の得点の1割以内に抑える」という具体的な数値も検討されたのか。
1割というのは、加点方式の具体的イメージを分かりやすく説明するために、われわれのシミュレーションの例を示した参考資料に出ていたものであり、仮の数字に過ぎない。
―加点方式の具体的な方法について今後、例を示すとのことだが、いつ頃になるか。
春のうち、おそらく5月から6月にかけてと考えている。各国立大学は例年通りでいくと次年度入試の要項を7月頃から公表する見通しで、同時に2021年度入試の大きな変更点も示す大学が多いと予想される。それに間に合わせることが望ましい。
―国語の記述式の段階別評価を点数化・加点方式にした理由は?
1点刻みからの脱却に逆行するとの見方もあるかもしれないが、国語全体が段階別評価になるわけではなく、一部だけなので、総合的に評価するためにはそのような組み込み方にならざるを得ない。記述式の小問それぞれの段階別評価に加え、それらの総合的な段階別評価を出す案も示されており、そうした詳細な情報が出てきたところで加点の方法をさらに検討したい。
―新共通テストの成績提供時期が現状より1週間程度遅くなることで、個別試験の実施スケジュールが厳しくなる。対応について各大学の検討は進んでいるのか。
個別大学の状況は詳細には把握していないが、共通テストの成績を利用した総合型選抜、学校推薦型選抜を行う大学において、個別試験までの期間が極めて短くなってしまうことが頭の痛い問題だ。1週間の遅れで済むと確約されたわけでもない。決まった日程の中でできることをやるしかないが、記述式の採点ノウハウが蓄積され、将来的には成績提供がもう少し早くなるよう期待したい。
一方で、分離分割方式については、受験機会の複数化、選抜方式の多様化等の観点から当面維持することとしている。国大協では総合型選抜、学校推薦型選抜という丁寧な選抜による募集人員を全体の3割まで拡大することをめざしている。そのような状況の変化を踏まえつつ、一般選抜でも十分な時間を確保して丁寧な選抜を実施するうえで、国大協の「基本方針」にあるように、将来的には分離分割方式を廃止して一般選抜を一本化することも検討課題として今後、議論を尽くす考えだ。
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