2018.0409

英語検定の受検期間の例外対応案めぐり議論-新共通テスト有識者会議

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3行でわかるこの記事のポイント

●経済的困難、離島在住などの事情があれば高2での成績活用を認める
●高2の成績活用の要件として示された「C1以上」に異論が相次ぐ
●既卒者について「高3時点の成績活用を認めるべき」との意見も

文部科学省はこのほど、2020年度からの大学入学共通テストで導入する英語外部検定試験について、「高校3年の4月から12月までに受検」という原則の例外を認めるパターンを整理し、それぞれの扱いについてたたき台の案を示した。例外措置の必要性について委員から反対意見はなかったが、高2での受検結果の活用を認める場合の条件などについて疑問の声が相次ぎ、再検討を求めた。


●海外在住、病気など「高3で受検できない」パターンを提示

 文科省がたたき台を示したのは3月下旬の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」検討・準備グループの会合。2017年7月に大学入学共通テストの実施方針をまとめた際に明示しなかった「高3で検定試験を受けられない事情がある受験生の救済措置」等に関する案となっている。
 たたき台の概略は以下の通り。「参加試験」とは、GTECやTOEFL、TOEICなど、所定の要件を満たして「大学入試英語成績提供システム」への参加が認められた検定試験を指す。

1.参加試験を高2で受検してCEFRのC1以上の成績を修めた生徒で次の①~③のいずれかに該当し、高校の学びに支障がないと学校長が認めた場合、上記2年生段階の成績の活用を認める。
① 受検した試験が「高校生のための学びの基礎診断」として認定されたものである。
② 非課税所得世帯であるなど、経済的に困難である。
③ 離島・へき地等、検定試験の受検が容易でない。
 これについて委員から異論が続出した。C1以上を要件としたことについて、文科省は「一般的に高校で到達できるのは高くてもBレベルとされる。それより高いC1に達していれば通常、さらに引き上げることは期待できないためこのレベルに設定した」との趣旨を説明。委員からは「高校生でB2に該当する英検準1級を持っているのは3%程度とされ、C1は極めて少ない」「一般的に大学生でもB2でレベルが高いとされる中、C1だと実質的には使われない例外規定になるのでは」と懐疑的な見方が示された。
 参加試験の中でも「学びの基礎診断」に認定されているか否かで活用の可否が分かれるのは問題だとの声もあった。

2.高3の4月から12月に海外に住んでいる場合、この期間内に参加試験と同種同名の海外の試験結果を活用できる。  
 これについては、同種同名の試験でも海外では監督体制が日本に比べて緩いなどとされることから、公平性の観点で疑問が投げかけられた。

3.既卒者も含め、病気等のやむを得ない事情で受検できず、特別に配慮すべき生徒については前年度の参加試験の結果を活用できる。

4.既卒者については、入試を受ける年度の4月から12月までの試験結果を活用する。
 これについて文科省は「2回分の成績までしか活用できない現役受験生と同じ扱いにするため」と説明。委員からは「高校までの教育成果を評価するという今回の入試改革の理念をふまえるなら、既卒者も高3段階の成績の活用を認めていいのでは」「過去2年間程度の成績の活用を認めている大学も多いので、高校時代のものでも問題ない」といった意見が出た。

5.障害のある受験生については、障害の内容によって不利益が生じないよう試験結果の取り扱いに関して各大学で積極的な配慮を求める。

●「将来的には全科目、段階別評価のみに」について意見が分かれる 

 今回のたたき台に対し、委員からは「そもそも検定試験をどう使うのかという哲学を明確にしないと、具体的な対応を決められない。大学が求めるレベルを到達目標として示し、ここまで到達できている生徒は高校生活で他のことに力を入れてほしいというメッセージにするのであれば、例外措置でもあまり高いレベルを課す必要はないし、選抜に使うのであれば高いレベルを設定すべきだろう」「どの期間に受検したものを使うかは大学に任せ、柔軟にやらせてほしい」といった声が挙がった。
 会合では英語外部検定試験、および国語と数学における記述式の段階別評価の活用についても話題に上った。国立大学協会は先に公表したガイドラインで活用法の大枠を示したが、国立以外の大学について文科省は「各大学の自主的判断で対応してほしい」と説明。これに対して高校側の委員から「センター試験に替わる共通テストなので、段階別評価の活用法についてある程度の共通性を担保してもらわないと、高校生は受験する大学ごとに調べなければいけなくなり、負担が大きい」と述べた。
 過去の会合では「1点刻みの評価から脱却すべく、英語以外の科目についても将来的には段階別評価に移行すべき」との主張が出ている。今回、「入試結果を分析するため、大学にとっては素点も必要なので残してほしい」との声が挙がり、文科省は「大学に分析結果を公表してもらい、それを入試改革に反映していくサイクルをつくりたい」と述べた。
 これに対し素点廃止を主張する委員からは「1点でも多くとるための指導に高校現場が時間をかける現状は問題。合否判定は段階別評価のみで行い、その後、分析用の素点を提供することも検討すべきだ」との意見が出た。


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