入学定員管理厳格化の追加措置の有無・方向性、近く私大に通知
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2018.0418
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3行でわかるこの記事のポイント
●2019年度以降の「定員超過に応じた私学助成減額」の実行は流動的
●既存制度による一定の効果、23区規制等の新たな施策も考慮
●文科省は定員割れ以上に定員超過を問題視
入学定員管理厳格化の下、私立大学等経常費補助金が不交付になる定員超過率の基準の段階的引き上げが2018年度に完了し、2019年度以降の定員超過の扱いに大学の関心が集まっている。文部科学省は「2019年度以降は定員を超えて受け入れた学生数に応じて補助金を減額する」という当初の方針通りに新たな施策を講じるかどうか、この3年間の厳格化の効果もふまえて判断し、基本的な方向性について6月をめどに大学に通知する予定だ。
文科省は2016年度から2018年度にかけての定員超過による私立大学等経常費補助金不交付基準の段階的引き下げについて通知する際、2019年度以降については「1.0倍を超える入学者数に応じて学生経費相当額を減額」「定員超過率を0.95~1.0倍にした大学に補助金を上乗せ」という方向性を示した。これらは、東京をはじめとする大都市圏の大学に学生が集中している現状への問題意識の下、「定員超過よりは多少の定員割れになる方向に調整する大学を支援すべき」という、近年の同省の考え方を私学助成制度の中で具体化するものだ。
ただ、2017年度入試では大規模大学の定員充足率が下がり、中小規模大学で上昇するなど、同省ではこの間の入学定員管理厳格化に一定の効果があったと見ている。その結果、地方大学の定員割れが改善したのか、2018年度入試のおおよその状況も含め見たうえで、当初の方針通り定員超過抑制の追加的な施策を講じるか、当面は見送るかという基本的な方向性を決める。5月にも結論を出し、大学に対する6月の補助金説明会で通知したい考えだ。
文科省が追加的措置の見送りも視野に入れる背景には、既存の施策で一定の効果が出ていることに加え、東京23区内の大学に対する定員規制など新たな施策が動き出したことがある。内閣府が主導する定員規制について23区内の大学や私大団体からは、「大学の経営権を縛るものだ」という反発が強く、ある程度、配慮せざるを得ないとの判断も働いていると見られる。
一方、定員管理が厳格化され、23区での定員規制の具体化も進む中、大規模大学が収容定員を拡大する動きが顕在化。地方大学を中心に、さまざまな規制による実質的な効果を疑問視する声も根強い。
文科省の私学助成担当者は「定員以上の人数を受け入れないというのは、教育の質を担保するためのルールだ。それを守らないのと、18歳人口の急減といった社会的情勢や歩留まりの読み違えなどによる定員割れのどちらがより大きな問題か、答えは明白。私学助成を受けられる範囲内であればルール違反ではないと捉えられているなら、助成制度の何らかの見直しが必要ではないか」と話す。
2018年度からの私学助成配分ルールの変更では、定員割れの大学に対する減額率強化が焦点となり、どの程度の定員割れを問題とすべきか、減額率をどの程度にするか、文科省と財務省との最終調整が進んでいる。「教育の質という点も考えた場合、充足率が100%を切っている『すべて』の大学が『それほど』問題なのかというわれわれの主張には財務省も理解を示し、ある程度、柔軟に扱う方向になっている。むしろ、定員超過への対応を強化することを通じてメリハリ付けをするほうが、社会からの理解も得やすいのではないか」と担当者は見ている。
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