2018.0305

2040年の大学進学者数は12万人減の51万人~文科省試算

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3行でわかるこの記事のポイント

●進学率が57%まで上昇と仮定しても18歳人口の減少をカバーできず
●定員充足率は5県で60%台に
●委員から「国立は定員規模縮小を」との提起も

文部科学省は進学率上昇を前提とした今後の大学進学者数を試算し、2月下旬の中央教育審議会の大学分科会将来構想部会に提示した。試算によると2040年度の進学者数は2017年度より12万4000人少ない50万6000人。大学の定員が現状のままだと仮定した場合の入学定員充足率は東北3県で60%台になるなど、地方を中心に厳しい状況があらためて浮き彫りになった。

*文科省の試算はこちら
*記事中の図表は文科省の公表資料より


●進学率は男子が最大5ポイント、女子は最大で男子と同程度まで上昇と仮定

 文科省が進学率の上昇を加味した進学者数を細かく試算するのは初めてだという。18歳人口が減少する中、大学関係者の間には進学率の上昇に期待する向きもあることから、現実的な試算によって今後の厳しい経営環境を再認識するよう促すねらいもありそうだ。
 今回の試算では2040年度まで大学進学率が上昇すると仮定し、2014~2017年度の都道府県別、男女別の大学進学率の伸び率を基に今後の伸び率を設定。男子の進学率は2017年度から5ポイント以上上回った年以降、据え置いた。女子の進学率がその県の男性の進学率を上回った場合、それ以降は男性の進学率と同じになると仮定。2014~2017年度の進学率が下降している場合は2017年度の進学率が維持されると仮定している。
 これらの前提に基づき試算された大学進学率は、2017年度の52.6%(男子55.9%、女子49.1%)から2040年度に57.4%(男子58.4%、女子56.3%)まで上昇。一方、この間に18歳人口は119万8000人から88万2000人と26.4%減る。進学率の上昇が18歳人口の減少をカバーできず、進学者数は2017年度をピークに減少局面に入ると予測、2040年度には20%減の50万6000人になるとしている。

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 2040年度の入学定員充足率は、国公私の入学者の割合が2017年度と同じとの前提で試算された。最も高いのは沖縄の97.3%で、東京は92.1%、大阪は79.6%。一方、青森(69.4%)、岩手(66.0%)、秋田(66.5%)の東北3県をはじめ、新潟(68.3%)、徳島(66.9%)は70%を切っている。

●将来構想部会では試算を受けた政策の議論へ

 報告を受け、黒田壽二委員(金沢工業大学学園長・総長)が「国立大学も現在の定員を維持することを前提に試算されているが、教育の質という観点からも国立は当然、規模を縮小すべき」との意見を述べた。益戸正樹委員(バークレイズ証券株式会社顧問、株式会社肥後銀行取締役)は「40年以上企業で採用にかかわってきて、母数が大きいほうが優秀な人材が多いと実感している。進学者がこれだけ減ることがはっきりした以上、機能別分化による質保証の議論に時間を割くべきだ」と提案した。
 将来構想部会では次回以降、この試算を基に高等教育の供給規模など、2040年を見据えた政策の方向性について議論する。


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