経営強化支援事業の選定率ダウン、今後はさらに絞り手厚い支援にシフト
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2018.0307
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3行でわかるこの記事のポイント
●地方小規模大学の経営改革を支援
●「経営改善型」の4年制大学選定率は20ポイント減の78%
●次年度からは主に経営改革計画の内容を審査
このほど、2017年度の「私立大学等経営強化集中支援事業」の選定校が発表された。3回目を迎え大学の申請数が増えつつある中、選定率は大幅にダウン。本来の事業の趣旨、基準に立ち返ったためで、次年度以降は「本当に支援を必要とし、支援のしがいがある大学」にさらに絞り込み、きめ細かい支援へとシフトする予定だ。
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*記事中の図表は文科省発表資料より
私立大学等経営強化集中支援事業は、地方小規模大学等に対する経営改革支援を目的に、2015年度にスタートした。三大都市圏以外に所在する収容定員2000人以下の大学、短大、高専が対象で、収容定員充足率80%~107%の「タイプA(経営強化型)」と同50%~80%の「タイプB(経営改善型)」がある。平均配分額はAが3000万円でBが3500万円。申請時には、経営改革の取り組みとして示される各評価項目について自己評価し、総合得点に基づいて選定され私立大学等経常費補助金が傾斜配分される。
2017年度の予算額は前年度より5億円少ない40億円で、タイプA、B合わせて106校が選定された。当初の選定校数の目安はタイプAが60~70校、タイプBが70~80校の計150校程度だった。
4年制大学について見ると、タイプAは対象となる83校のうち55校が申請し、36校が選定された。選定率は65%。タイプBは対象となる51校のうち36校が申請し、28校が選定された。選定率は78%だった。定員割れの状況がより厳しいタイプBは風評被害の懸念もあってか、初年度から申請が低調だったが、徐々に増加。しかし今回、選定率は前年度の97%から20ポイント近くダウン。タイプAの選定率も7ポイント下がった。
これについて文科省の担当者は「前年度までは、なるべく多くの大学にチャンスをあげようというのが選考委員会のスタンスだった。3年目になり、本来の選定基準に立ち返った」と説明する。定員充足率107%まで対象になっている点に委員から疑問が出たこと、補助金が定員割れ大学の延命策になっているとの財務省の見解などをふまえ、本当に支援を必要とし、支援の成果が期待できる大学に絞り込んだという。
申請時の質問項目の中で地域・産業界との連携について具体的な記述を求め、一部の回答を公表した。岩手県花巻市の富士大学は県内2町との包括連携協定の下、地元の高校生の受け入れと地元での就職支援を盛り込んだ「地域定住人材育成プログラム」を実施、2017年度は2町の高校から学生1人ずつを受け入れた。また、福島県いわき市の東日本国際大学は温泉リゾート施設の運営会社と包括連携協定を結び、協働カリキュラムを開発・実施している。
2018年度以降、私学助成の配分ルール変更に伴い、私立大学等経営強化集中支援事業も規模や選考方法が見直される。次年度予算は2017年度の半分以下の18億円に縮小、対象校数の目安も150から40~50に減る。タイプA・タイプBの区分も廃止する方向で検討されている。
従来の申請時の評価項目は大幅に簡素化され、経営改革計画の内容を審査する方式に変更。入学者数の増加、収支状況の改善、組織体制の強化等のKPIを盛り込んだ計画と経営改善状況を基に計画の妥当性、実効性を審査する。
文科省の担当者は「これまでは補助金を出して終わりという面があったかもしれない。次年度以降は日本私立学校振興・共済事業団の経営相談機能とも連携し、真に改革意欲のある大学に絞り込んだうえで、きめ細かい支援によって成果を出していきたい」と話す。
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