2017.0920

次年度の私立大学等改革総合支援事業はこうなる-概算要求に見る変更点

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3行でわかるこの記事のポイント

●私立大学等改革総合支援事業の予算は13億円増で要求
●大学間、産官との連携による「プラットフォーム形成」の支援対象を大幅に拡大
●「産業界との連携」「他大学等との連携」別々の募集で小規模大学にもチャンス

目下、多くの私立大学で、2017年度の私立大学等改革総合支援事業への申請準備が進んでいる。私学助成の配分が競争型へとシフトしていく中、この種の事業に申請して補助金の上積み最大化をめざすことが大学の財政上、必須となりつつある。文部科学省は2018年度も、私立大学等経常費補助による主要な事業を継続する方向で予算を要求。概算要求の内容をもとに、私立大学等改革総合支援事業をはじめとする各事業の概略、変更点などを解説する。
*2018年度概算要求の私学助成関係の資料はこちらhttp://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/08/30/1394955_2.pdf


●「他大学等との広域・分野連携」は国内留学プログラム等を支援

 文科省は2018年度の私立大学等経常費補助として、2017年予算から130億円増となる3283億円を要求している。そのうち一般補助は2733億円(44億円増)、特別補助は550億円(86億円増)。これらの一部をあてて、2017年度に引き続き下記のような申請・選定型の事業を実施する。
①私立大学等改革総合支援事業 189億円(13億円増)
②私立大学研究ブランディング事業67億円(12億円増)
③私立大学等経営強化集中支援事業40億円(2017年度と同額)

*各事業の内容、および2016年度の選定結果は下記の各記事を参照
私立大学等改革総合支援事業の選定結果発表-海外留学派遣は依然、低調
文科省省の私立大学研究ブランディング事業で問われた「全学的な価値」
私大経営支援事業に見る地方中小規模大学の改革状況-留学生確保が課題

 私立大学等改革総合支援事業は、6年目となる2018年度、選定対象のテーマが再編される。事業の基本スキームと、予定している選定校数は以下の通りとなる。

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 2017年度から引き続き設定されるのは、タイプ1「教育の質的転換」(240校を選定。前年度の当初予定数は350校)、タイプ4「グローバル化」(前年度と同じ80校)、さらに、地域の複数大学間の連携、自治体・産業界等との連携によって地域の発展をめざすタイプ5「プラットフォーム形成」(50~100グループ。前年度は5~10グループ)の3つ。
 一方、社会人の受け入れや生涯学習機能等、地域に根差した活動を支援してきたタイプ2「地域発展」(前年度は160校)は、タイプ5に統合される形で廃止。さらに、従来のタイプ3「産業界・他大学等との連携」(前年度は80校)を分割する形で、新たにタイプ2「産業界との連携」(60校)、タイプ3「他大学等との広域・分野連携」(60校)が設けられる。
 タイプ5「プラットフォーム形成」は、今年6月に提言をまとめた文科省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の議論を受けて2017年度に新設された。特に、学生募集が厳しい地方の大学群が産官と共同して地域の高等教育の中長期計画を策定し、個々に特色化・資源集中を図ることを促進すべく、支援対象を10倍規模に拡大する。体制の整備状況を評価する「スタートアップ型」と、中長期計画の実施状況を評価する「発展型」の2層で支援する。
 タイプ3「他大学等との広域・分野連携」は、他地域の大学との連携を支援する点がタイプ5との違い。同じ分野を持つ大学同士が共同で教育プログラムを開発したり、国内での交換留学制度を設けたりといった取り組みが想定されている。従来ひとくくりになっていた「産業界との連携」と切り離されたことにより、産学連携でポイントを稼ぐことが難しい短大や小規模大学にとって選定の可能性が広がりそうだ。
 タイプ1「教育の質的転換」では従来、教育の質保証と質向上に関する取り組みを評価していたが、2018年度から私立大学等経常費補助の配分ルールを変更し、教育の質保証については補助金を受給する全ての大学に求める方向になった。

*私学助成配分ルールの見直しについては下記の記事を参照
私学助成の配分法見直しへ-無策による継続的定員割れは支援打ち切りも

 これにより、タイプ1の調査票には従来以上の変更が加わりそうだ。

●私学助成の効率的・効果的配分に向けた委託調査を実施

 学長のリーダーシップの下、特色ある研究で全学的なブランド力向上を図る取り組みを支援する私立大学研究ブランディング事業は、2017年度と同様、50~60校程度の選定を予定している。
 三大都市圏以外に所在する収容定員2000人以下の大学を対象とする私立大学等経営強化集中支援事業は、2017年度当初予定より50校少ない100校程度の選定を予定。タイプA(経営強化型)の対象は従来、定員充足率80~107%の大学だったが、選考委員から「定員を超過している大学の経営強化を支援するというのはおかしい」との声が挙がり、80~99%に引き下げる。
 文科省は、同事業をスタートした2015年度から2017年度までを「経営強化に向けた体制・仕組みの構築促進」期間、2018年度から2020年度までを「さらなる経営改革・経営基盤の強化に向けた計画の推進」期間と位置づけている。2018年度の申請では、従来のような全大学一律の調査票方式ではなく、中期計画の進捗状況、特に学生募集の改善状況を確認し、必要に応じて日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)が指導・助言をするなど、よりきめ細かい支援をする方向だ。
 2018年度の概算要求では、新規事業「私学助成改革推進委託事業」の11億円も計上された。教育成果を指標にするなど、私学助成をより効率的・効果的に配分するため、これまで行ってきた年度ごとの配分法の調整ではなく、恒常的なシステムの見直しを図る。大学間連携やリカレント教育など、私立大学の政策課題について現状や阻害要因、成功事例などの委託調査を実施。分析結果を私学助成の配分システム見直しに反映したい考えだ。