私立大学等改革総合支援事業の選定結果発表-海外留学派遣は依然、低調
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2017.0313
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3行でわかるこの記事のポイント
●私大全体の8割にあたる487校が申請し、325校が選定された
●入試での記述式導入など、高大接続の評価項目を新規に追加
●学生の10%以上が留学したのは「グローバル化」選定校でも20%のみ
文部科学省の私立大学等改革総合支援事業の選定結果がこのほど発表され、大学では東北福祉大学、多摩大学など9校が4つのタイプ全てで選定された。申請大学、選定大学の評価項目ごとの達成状況から、私立大学全体として改革が進んでいる部分と遅れている部分がわかり、自学のおおよその位置を把握できる。グローバル化については、海外留学の送り出しの推進が他大学との差別化のカギになりそうだ。
*選定校の一覧はこちら
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/07/1340519_301.pdf
*文科省公表の各種資料はこちら
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1340519.htm
私立大学等改革総合支援事業は大学、短大、高専が対象で、タイプ1「教育の質的転換」、タイプ2「地域発展」、タイプ3「産業界・他大学等との連携」、タイプ4「グローバル化」の4つの課題の下、全学的に改革に取り組む大学等に対し、経常費、設備費などを一体的に支援する。複数のタイプへの申請が可能で、4年目となる2016年度の予算総額は201億円。申請時には、タイプごとに設定された改革の進展度の評価項目に回答する。その総合得点の高い順に選定され、配分額に得点が反映される。私学助成の配分が厳しくなる中、多くの私立大学が改革を競い合うこの事業で補助金の上積みをねらう。
4年制大学について見ていくと、2016年度は延べ1150校、実数では私立大学全体の81.2%にあたる487校が申請し、延べ520校、実数で325校が選定された。実数での選定率は67%。東北福祉大学、国際医療福祉大学、東京都市大学、芝浦工業大学、武蔵野大学、多摩大学、金沢工業大学、福岡工業大学、長崎国際大学の9大学が4タイプすべてで選ばれた。
評価項目では同じ取り組みについて毎年度継続的に聞いており、各大学の改革の進展に伴って年々、選定ラインが上がっている。下のグラフではグローバル化の評価項目の一つを例に、短大、高専も含む改革の進展状況を示している。
実施率が100%近くに達したものは評価項目から削除され、新たな取り組みが追加される。
2016年度は、タイプ1「教育の質的転換」に「高大接続の推進」関連の項目群が追加され、2017年度入試におけるアドミッション・ポリシー(AP)の記載内容、学力の3要素を見る多面的・総合的評価の実施状況などを聞いている。
その結果を見ると、選定校中、2017年度の一般入試において全学部で記述式問題を出題しているのは72%、AO入試や推薦入試で基礎学力を把握するために独自の検査、センター試験の成績、評定平均値等のいずれかを全学部で活用するのは96%だった。求める学力要件と具体的な入学者選抜方法を明示したAPの公表が2017年度から義務づけられることもふまえ、これら評価項目のような改革に取り組みそれを発信していくことが選定にも結び付きそうだ。
タイプ4「グローバル化」では、2015年4月からの1年間で学生の10%以上が海外留学(短期留学も含む)を経験したのは選定校の20%だった。この実施率は全30項目中、「海外留学の必修化」「秋入学など入学時期の弾力化」「外国人留学生の割合」に次いで低く、留学生の送り出しがグローバル化における差別化のカギになりそうだ。一方、外国語の到達目標として外部検定試験を全学部で活用しているのは、選定大学の51%だった。
私立大学等改革総合支援事業の申請大学は、2013年度520校、2014年度505校、2015年度502校、2016年度487校と減少傾向にある。文科省の担当者は、「公表している選定ラインが年々上昇しており、新たに申請しようと思っても選定ラインに届きそうにないからと断念してしまう大学があるのでは」と推測する。その場合、同事業による支援が受けられないのはもちろん、申請のための自己点検作業もなされず、さらに改革が遅れるということになりかねない。
文科省は各大学でこの事業が、改革に消極的な学内勢力を動かすための大義名分として活用されることを期待しており、担当者は「申請初年度の選定の可能性によらず、多くの大学に積極的に申請してほしい」と話す。