大学間連携で学位プログラムを再構築する「SPARC」に6件を選定
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2022.0920
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3行でわかるこの記事のポイント
●国公私の垣根を超えてリソースを共有し、地域の人材ニーズに応える
●工学部を持つ大学との連携で文系学部に工学系学科を新設する構想も
●次年度は新たに4件を選定する予定
文部科学省はこのほど、「地域活性化人材育成事業~SPARC」の選定結果を発表した。大学間連携、地域連携によるSTEAM教育の導入、学位プログラムの再構築に地方大学6組が挑む。小規模私立大学が国公立大学とのリソース共有によって人材育成機能を強化して地域貢献に取り組む例もあり、地方大学の新たな連携の成果が注目される。
*文科省の資料はこちら
*「地域活性化人材育成事業~SPARC」の詳しい説明はこちら
「地域活性化人材育成事業~SPARC(Supereminent Program for Activating Regional Collaboration)」は2022年度の新規事業で、15億円の予算が計上されている。地域の大学が連携してリソースを共有し合い、分野横断型のSTEAM(Science・Technology・Engineering・Arts・Mathematics)教育を導入して学位プログラムを再構築する取り組みを支援する。地域の高等教育全体の底上げというねらいの下、設置形態の異なる大学が参加する大学等連携推進法人を設立し、連携開設科目を活用することを必須とする。また、地域の人材ニーズを把握したり、地域の教育リソースを活用したりするため、金融機関を加えた産官学の地域連携プラットフォーム構築も要件となっている。
学位プログラムの再構築は、事業に参加するすべての大学に求められる。そのうえで、参加大学の半分程度に学部・学科等の新設も求められる「タイプ1」はいわば「ハイレベル型」で、「タイプ2」は「スタンダード型」と言える。いずれも事業期間は最大で6年間。タイプ1は年間2億円程度、タイプ2は年間1億円程度の支援を受ける。
初年度はタイプ1に4件、タイプ2に5件、計9件の申請があった。審査の結果、タイプ1はそれぞれ山梨大学、信州大学、山口大学を事業責任大学とする3件、タイプ2はそれぞれ岐阜大学、熊本大学、宮崎大学を事業責任大学とする3件が選ばれた。
以下、採択された事業3件の概要を紹介する。
タイプ1に選ばれた山梨大学と山梨県立大学は2021年に大学等連携推進法人を設立済みで、教養科目を中心に連携開設科目がすでに充実していることが強みだ。地元の産業界には、ワインをはじめとする伝統産業のDX化を進めなければ地域の持続的な発展は厳しいとの危機感があり、この分野をけん引する人材の育成が課題となっている。そこで、山梨大学が全4学部、山梨県立大学が全3学部のリソースを持ち寄ってこの課題解決に取り組む。
山梨大学は工学部と生命環境学部に文理横断の学際型プログラムを新設してDX人材の育成に取り組み、2028年度には学部等連係課程として「共生創造学環(仮称)」の新設をめざす。
一方、山梨県立大学は看護学部と人間福祉学部に新設する特別プログラムで医療・介護・福祉・教育分野のDX人材育成を図る。さらに、国際政策学部では最新技術とデータサイエンスによる地域産業の変革について学ぶ「地域デザインコース」の新設(2024年度)を経て、2028年度、工学系の「メイカーズ学科」(仮称)の新設をめざす。工学部を持つ大学との連携によって文系学部に工学系学科をつくる意欲的な構想が評価された。
同じく「タイプ1」に選ばれた山口県における事業では、山口大学、山口県立大学、山口学芸大学という国公私立3校が連携。「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」でS評価を受けた山口大学を中心に、2023年10月の大学等連携推進法人設立をめざす。
デジタル化を最重要施策と位置付ける山口県と山口市が「地域の課題を把握し、解決できる人材によるデジタル化の推進」を期待していることをふまえ、文系DX人材の育成に取り組む。山口大学は、文科省認定の「数理・データサイエンス・AI教育」リテラシーレベルのプログラム、山口県立大学はPBLを取り入れた地域学教育を、それぞれ連携開設科目として提供。3大学共同で、アントレプレナー教育を含む文理横断・地域課題解決PBL型のプログラムを開設する。
山口県立大学は既存学部の再編で2025年度に文化情報学部を新設、山口大学は2026年度に学部等連係課程として人間科学共創学環を新設し、それぞれ地域に根ざしたDXを推進する人材の育成をめざす。山口学芸大学はDX人材を育てる教員の養成をめざし、2026年度、教育学部に小・中STEAM人材育成コースを新設する予定だ。
「タイプ2」に選ばれた宮崎県における事業では、国立の宮崎大学を中心に私立の南九州大学、宮崎国際大学、宮崎学園短大が連携して地域の高等教育全体の底上げを図る。健康栄養学部、環境園芸学部を持つ南九州大学が、宮崎大学の農学部等のリソースを活用して農業生産や食品加工の分野における人材育成機能を強化するなど、各大学が連携のメリットを生かす。
文科省は2023年度の概算要求で、SPARCについて対前年3億円増の18億円を計上、新たに4件を選定したい考えだ。3月頃の募集開始を予定している。
担当者は「設置形態や規模にかかわらず、それぞれの大学が強みを持っていると思う。それを持ち寄ることによって一つひとつの大学が魅力を増し、地域の高等教育を底上げする事業だ。特に、地域貢献型を自任する大学の参加に期待している。募集までにはまだ時間があるので、各地域で大学等の話し合いを進め、積極的に申請してほしい」と話す。