2022.0131

地域や他大学との連携で学位プログラムを再構築-文科省の「SPARC」

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3行でわかるこの記事のポイント

●地域連携プラットフォーム、大学等連携推進法人の設置が必須
●設置形態の異なる大学の参加を課す
●学部・学科の再編をゴールにする申請タイプも

文部科学省は2022年度、新規に「地域活性化人材育成事業~SPARC」の実施を予定している。地域社会、および他大学との本格的な連携を通じて学位プログラムを再構築する取り組みを支援し、地域をけん引する人材の育成を促す。新たな学部・学科の設置をゴールにするタイプもあり、従来の単位互換等とは一線を画す「高度な連携」を求める。
*文科省の資料はこちら(P7)
他大学の開設科目を「自ら開設」とみなす連携法人制度、スタートへ


●連携開設科目の活用で各大学の教育機能を強化

 文部科学省は2022年度予算案で「地域活性化人材育成事業~SPARC(Supereminent Program for Activating Regional Collaboration)」に15億円を計上している。地域の大学が互いのリソースを活用し合って分野横断型のSTEAM(Science・Technology・Engineering・Art・Mathematics)教育を導入、または充実させ、学位プログラムを再構築する取り組みを支援。科学技術分野の人材育成を促し、イノベーションの創出を図る。
 SPARCに申請するためには、産官学に地域の金融機関も加えた地域連携プラットフォームを構築することが必須となる。さらに、「国・公・私」や「国立と私立」など、設置形態の異なる大学が組む大学等連携推進法人を設立し、協働で開設する科目を「自ら開設」とみなして単位認定する連携開設科目を活用することも要件の一つ。大学教育に地域のリソースを積極的に取り込み、それぞれの教育機能を強化してもらうことがねらいだ。

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●COCを発展させる形で教育本体に切り込む改革を促す

 文科省はこれまでも、自治体や産業界と協働して地域を担う人材を育成する取り組みを支援するため、「地(知)の拠点整備事業(COC)」「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」等を実施してきた。
 SPARCではこれらCOC事業と大学教育再生加速プログラム(AP事業)を統合する形で、地域リソースの活用による抜本的な教育改革を支援する。COCでは、124単位(以上)で構成される学位プログラムの枠外で、いわばオプションプログラムを構築するケースがほとんどだったのに対し、SPARCでは学位プログラムそのものを見直す点が大きな違い。従来の大学間連携で多かった「教職科目の相互提供」等も対象外で、大学教育の本体に切り込む改革を求める。
 自治体や企業は教育について意見を述べる役割にとどまらず、カリキュラムの設計や運営、教員の派遣など、直接、教育に関わってもらうことも従来の事業との違いだ。
 SPARCでは2つのタイプに分けて取り組みを公募し、事業期間はいずれも最大で6年間。
 連携開設科目を活用して教育機能を強化する「タイプ2」は4件を選定し、年間1億円(最後の2年間は逓減)を支援。参加大学すべてに学位プログラムの再構築が求められる。
 「タイプ1」ではこの取り組みを発展させ、支援期間終了後の2028年4月に学部・学科の新設等、再編するところまでをめざす。5件を選定し、年間2億円(最後の2年間は逓減)を支援。学部等の再編は参加大学の「半分程度」(文科省)に求められる。選定後2年を構想期間にあて、残り4年間で教育プログラムを実施、中間評価時に学部等の再編計画を提出するというスケジュールが想定されている。

●金融機関には地域の産業や人材要件に関する知見を期待

 大学は、プラットフォームに参加する自治体や企業から地域に必要な人材像や提供可能な教育資源の提示、教育プログラムの提案などを受ける。実務家教員を派遣してもらい、協働して地域でのPBLやアントレプレナーシップ教育などを展開。プラットフォームに金融機関を加えたのは、資金面での役割もさることながら、地域の産業や人材要件に精通していることへの期待があるという。
 一方、大学等連携推進法人では、連携開設科目の仕組みを生かす。コロナ禍の下でオンライン授業の整備が一気に進んだことも、授業の共同運営等の追い風になりそうだ。設置形態の異なる大学の参加を必須とすることについて、文科省は「本事業の目的を達成するには地域の高等教育全体の底上げを図る必要があるため」と説明。「国立大学の場合、3類型から地域貢献型を選んだ大学にとっては特に、地域に深く根を張ることができるこの事業への参加には意義があるはず」(担当者)と話し、豊富なリソースを有する国立大学の参加にも期待を寄せる。
 2月中に公募を開始し、夏に選定結果を発表する予定だ。今のところ、次年度の公募は予定されていない。
 文科省の担当者は「教育改革支援のスタートとなったGP事業では、規模の大小に関係なく改革に積極的な大学に光を当てることができた。今回の事業は大学等連携推進法人の設置や学位プログラムの再構築を要件とするなどハードルは高いものの、規模にかかわらず意欲ある大学の申請を期待している」と話す。