2020.1013

社会科学系の学生に求められる学びとは?-ベネッセセミナー<下>

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3行でわかるこの記事のポイント

●学生に人気の業界の人事・教育担当者に業界の変化と人材要件をヒアリング
●共通点は「時代に合わせた業態の更新」「事業を経営する視点を持つ」など
●社会科学系では、実社会でのデータサイエンスの応用例に関する理解が必須

企業が社会科学系の学生に期待しているのは「AI・データサイエンスのリテラシーを新たな価値創造につなげてビジネスを変革する力」。ベネッセコーポレーションは、社会人の学習履歴データと企業へのインタビューからこのような結論を導きだした。その詳細を報告した大学教職員向けセミナーを2回にわたってレポートする。後半では企業インタビューを基に「今後、活躍できる人物像」を掘り下げる。
社会科学系の学生に求められる学びとは?-ベネッセセミナー<上>


 ベネッセコーポレーションによるセミナー「これからの時代に対応した教育の在り方を考える会(社会科学編)」の第1部「社会人のリカレント教育の学習歴データの分析と企業インタビューのご報告」の後半部分の概要は以下の通り。
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 企業の人事・教育担当者へのインタビューを通して社会科学系の学生に求められる学びについて考えてみたい。オンライン学習プラットフォーム「Udemy for Business」を導入している企業の中から学生に人気がある商社と金融業界の代表的企業2社に「今後、活躍できる人物像」「その業界の人が学んでいるジャンルや講座の背景にあるもの」について聞いた。

●商社―基本体なITリテラシーはExcelと同様、当たり前の素養に

 商社については住友商事へのインタビューから次のようなことがわかった。
 商社のビジネスモデルは大きく変わりつつある。インターネットが普及したことによって、世界中から集めた情報に基づく貿易の展開という従来のビジネスに新たな付加価値が求められている。川上から川下までにわたる幅広い投資にとどまらず、商社自ら事業を行うケースも増加。どの事業分野でもビジネスの高度化のためにDXを推進している。
 こうした変化の下、新卒採用においては従来の社員とは異なる強みを持つ多様な人材を獲得すべく、デザイン思考選考も導入している。
 入社後も幅広い学びが求められ、経営の基礎となる財務・会計、昇進・海外赴任につながる語学、新たなビジネスを生み出すための最新のITリテラシーなどの講座が受講されている。プログラミングについては、専門知識がなくてもどこにどんな発注をすればいいか、仕組みを考えられるスキルが必要とされる。こうした基本体なITリテラシーは今後、ExcelやPowerPointと同様、当たり前の素養になりそうだ。
 商社で活躍できる人材についてまとめると、①社会で実現したいことを明確に持っている、②ITリテラシーなど最新の技術や知識を幅広く学びビジネスを創造できる、③入社後も先を見越して自ら学び続ける―となる。
*住友商事へのインタビューについての詳しいレポートはこちら

●金融―統計、会計からブロックチェーンまで幅広い講座で学習

 金融業界についてはみずほフィナンシャルグループへのインタビューから次のようなことがわかった。
 デジタル化、少子高齢化、グローバル化によって顧客のニーズが多様化する中、同社では異業種とのオープンな協業やデジタルテクノロジーの活用による次世代金融への転換を図っている。それを支える人材要件をまとめると、①自ら変革を起こす力を持ち新しいビジネスを創造できる、②世界を相手にビジネスができるグローバルマインドセットを持つ、③AIなどの情報技術に関する知識を持ち、活用できる―となる。
 こうしたニーズに対応すべく、金融業界で働く人はデザイン思考、統計、会計、プレゼンテーションやコーチング、Excel、さらにAI・テクノロジー分野では金融との親和性が高いブロックチェーンなど、幅広い講座で学んでいる。ブロックチェーンへの関心はフィンテックへの活用、プレゼンテーションやコーチングは社外パートナーとの連携への対応がそれぞれ目的となっている。
*みずほフィナンシャルグループへのインタビューについての詳しいレポートはこちら

●主体的な学びの機会を提供し、活用を推奨

 商社と金融に共通する変化として次の6つを挙げることができる。①過去の業態を時代に合わせて変化させている、②自ら事業を経営する視点を持つようになった、③グローバル化を背景に英語力が必須となっている、④生産性向上の観点からOAスキルの向上を重視、⑤ビジネスの変革や創造に役立つAI・データサイエンスの活用イメージを持つことを重視、⑥主体的な学びの機会を提供し、活用を推奨している。
 業界を代表する企業のこうした変化は、大学の人材育成においても注視する必要があるだろう。

●DXによる課題解決の概観把握で「誰に何を相談すべきか」がわかるリテラシーを

 下表は前半で取り上げた金融、コンサル、メーカー、テックの4業種のリカレント教育に関するキーワードを抽出したものだ。 
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 これらすべてのスキルを学生のうちに修得するのは難しい。それでも将来、より良い社会を形成するための仕組みづくりに携わる社会科学系の学生には、最低限のベースは修得しておいてほしい。例えばIoT、ビッグデータ、AIといったキーワードからDX化された課題解決の概観をつかめれば、目の前の課題を解決するために社内外の誰に何を相談すればいいかがわかる。これはまさにリテラシーだ。
 下の図ではデータサイエンスに関わる能力を整理している。社会科学系の学生の最低限のゴールは実社会でのデータサイエンスの応用例や仕組みづくりについて説明できることであり、もう少し力をつけたい場合はコンピューティングや数学・統計まで学んでおくといいだろう。

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 以上、社会人の学びの実態と社会科学系の学生に求められる学びを解説してきた。各大学のカリキュラム設計や改組のヒントになれば幸いだ。
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 セミナーの第2部では、社会科学系のカリキュラム設計や改組を支援するオンデマンド型動画配信サービス「Udemy」が紹介された。
*大学向けの「Udemy」紹介サイトはこちら