「THE世界大学ランキング日本版2020」の指標解説

●「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野で構成
●学生、高校教員、企業人事など、多様なステークホルダーの視点を導入
●2回目の学生調査に約4万5000件の回答

「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)世界大学ランキング日本版2020」は4分野16項目の指標を用いて大学の教育力を可視化している。学生や高校教員、企業など多様なステークホルダーの視点を取り入れたランキング指標について解説する。

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●指標の「安定性・継続性」と「進化」の両面を重視

 「THE世界大学ランキング日本版2020」では下表の通り「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野16項目の指標が使われた。内容と比重は前年と同じ。

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 「教育充実度」の算出には前年から導入された学生調査も活用。ピアレビューの観点を持つ研究者、大学の入り口と接続する高校教員、出口と接続する企業の人事担当者、教育の受け手である学生という多面的な視点で大学の教育力を可視化している。

 各指標のポイント算出に使われるデータソースは下表の通り。

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 各項目について説明する。

<教育リソース 34%>
①学生一人あたりの資金(8%)
 経常収入÷在籍学生数
②学生一人あたりの教員比率(8%)
 教員数÷在籍学生数
③教員一人あたりの論文数(7%)
 エルゼビア社のデータベースを使用。
 論文数÷教員数
④大学合格者の学力(6%)
 「どのような学力レベルの学生と共に学ぶ環境か」を教育リソースとして捉える。
 ベネッセ総合学力テストにおける大学合格者の学力データを使用。
⑤教員一人あたりの競争的資金獲得数(5%)
 競争的資金制度の大学別獲得件数÷教員数

<教育充実度 30%>
⑥学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会(6%)
 「教授陣や先生方と交流する機会はどの程度あるか」等の設問(0~10点)の回答平均値
⑦学生調査:授業・指導の充実度(6%)
 「クリティカル・シンキングのスキルの成長が支援される機会はどの程度あるか」等の設問(0~10点)の回答平均値
⑧学生調査:大学の推奨度(6%)
 「友人や家族に自分の通う大学をどの程度勧めるか」という設問(0~10点)の回答平均値
*「学生調査」の設問については後述する。
➈高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視(6%)
 「グローバル人材育成に力を入れている」という設問の大学別得票数(2カ年分データ使用)
⑩高校教員の評判調査:入学後の能力伸長(6%)
 「生徒の力を伸ばしている」という設問の大学別得票数(2カ年分データ使用)
*「高校教員の評判調査」はベネッセコーポレーションが高校の進路指導担当教員を対象に実施。卒業生からさまざまな情報を集めて多くの高校生に進学に関するアドバイスをしている進路担当教員の意見を通して学生の満足度を見る。

<教育成果 16%>
 ⑪企業人事の評判調査(8%)
 日経HRの「企業人事担当者から見た大学のイメージ調査」のデータを使用(2カ年分データ使用)
 ⑫研究者の評判調査(8%)
 THEが世界大学ランキングのために各国の研究者を対象に実施した評判調査の結果から、日本の研究者が日本の大学について評価したデータを抽出。「素晴らしい教育をしていると思う大学」を最大15大学挙げてもらい、大学ごとの得票数を合算(2カ年分データ使用)

<国際性 20%>
 ⑬外国人学生比率(5%)
  在籍外国人学生数÷在籍学生数
 ⑭外国人教員比率(5%)
  在籍外国人教員数÷教員数
 ⑮日本人学生の留学比率(5%)
  日本人学生の留学生数÷在籍学生数
 ⑯外国語で行われている講座の比率(5%)
  外国語で行われている講座数÷全講座数

 以上16の指標項目について0~100のスコアに換算し、それぞれの比重に応じて合計したスコアで、総合ランキング、分野別ランキングが決まる。
 THEはランキング指標について、年度ごとの比較が可能な「安定性・継続性」と、大学の意見を反映した「進化」の両面を重視している。

●学生調査で有効回答数に達したのは278大学

 「教育充実度」の項目として使われた「学生調査」は前年と同様、アメリカ版、ヨーロッパ版との比較検証用を含む11の設問で実施された。各大学の教育改革を学生が認識しているか、0~10点で回答してもらう方式だ。
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 学生調査はベネッセコーポレーションが大学に在籍する学生を対象に実施した。事務局から全大学に対して調査の案内を送付。大学から学生に協力を呼びかけ、ウェブ上で回答してもらった。本人のみが回答できるよう、協力依頼や回答など、一連のプロセスでは大学支給のメールアドレスが使用された。
今回は前年の3万6881件を上回る4万5017件の回答が得られ、有効回答数50に達した大学は278校あった。前年調査と合わせた2カ年分のデータがランキングに使用された。
 設問には「協働学習」「クリティカル・シンキング」「グローバル人材の育成」といった大学改革のキーワードが盛り込まれている。アメリカ版、ヨーロッパ版のランキングと共通する11の設問のうち1~7がランキング指標分野「教育充実度」の「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」の3項目として使用された。
 学生調査を実施したすべての大学に、改革のための参考データとして活用できるよう、調査結果がTHE世界大学ランキング日本版事務局から送られる。