2019.0618

高等教育無償化で大学等の要件確認の申請受け付けが間もなくスタート

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3行でわかるこの記事のポイント

●7月中旬まで申請を受け付け、9月中下旬に対象校を公表
●設置認可申請中の大学も認可手続きと並行して事前相談が可能
●GPAの分布状況を説明する資料の参考例が示された

2020年度にスタートする高等教育無償化(修学支援新制度)で対象になるための大学等の機関要件確認の申請が間もなく始まる。高校では給付型奨学金の予約採用に向けた募集案内の配付がスタート。支援を受ける学生が最大75万人とされる大規模な学費支援制度が、実施に向けていよいよ動き出す。申請受け付けに先立って文部科学省が示した手続きの詳細や関連資料を基に、大学が押さえておくべきポイントや新たな情報について解説する。

*文科省が作成した制度に関するQ&A集はこちら
*制度の情報を集約した文科省のサイトはこちら


●政省令を公布次第、手続きを開始

 大学等修学支援法案は5月10日に成立した。文科省は法律に基づいて支援額や機関要件について定める政省令の案を公表し、6月8日までパブリックコメントを募集。その結果をふまえて政省令の制定を急いでおり、近くこれらを公布したうえで6月中にも機関要件確認の申請受け付けを始める方向だ。7月中旬に締め切り、審査を経て9月中下旬に新制度の対象となる大学等を公表する。

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●初年度対応として申請受け付け前も相談に対応

 機関要件の確認は、国立・私立の大学等は文科省、公立の大学等は設置者である自治体、私立専門学校は所轄する都道府県が「確認者」となり、申請の受け付け、審査、結果公表等を行う。
 申請書の提出はインターネットからも受け付ける。書類に不備がある場合は10日間程度を再提出期限として修正を求める。期限までに再提出されず、その後も適切な修正がなされる見込みがないと判断されると審査の打ち切りもあり得る。要件を満たして制度の対象校として確認を受けると、自学のウェブサイトで申請書類を公開する必要がある。受験生に進路選択の参考にしてもらうことがねらいだ。
 初年度は申請の受け付けから締め切りまで1カ月前後というタイトなスケジュールになるため、要件を満たしているにもかかわらず書類上で的確に説明できないケースも出てくると予想される。文科省は「制度を円滑に実施するため、要件を満たす大学等は1校でも多く対象になってほしい」との考えで、「事前準備」として受け付け開始前でも記入した申請書類に基づいて相談に応じている。

●次年度以降は5~6月に機関要件確認の申請手続き

 2020年度新設をめざして認可申請中の大学は認可され次第、確認申請ができる。要件を満たすことが確認された大学等による公表は「可能な限り早期、遅くとも今年度末までに」とされている。既存の大学以上に厳しいスケジュールとなるため、認可手続きと並行して文科省等の確認者に申請書案を提出して事前相談を受けることができる。新設校に対しても、シラバスや成績評価等については既存の大学と同様の要件が課され、開学後の方針・予定として示す必要がある。
 経営に課題のある法人を除外する基準のうち「直近3カ年で連続して収容定員充足率が8割未満」は、専門学校については経過措置が設けられる。2019年度の要件確認では2017~2019年度の充足率が「6割未満」かどうかを確認。段階的に基準を引き上げ、2022年度からは大学等と同じ「8割未満」にする。多くの専門学校の経営実態をふまえて当初はハードルを下げ、受験生の選択肢を広げる考えだ。
 2020年度以降は5月1日から6月末日までが機関要件確認の申請期間となる。すでに制度の対象になった大学等も毎年、この期間に申請書を更新して提出し、継続の確認を受ける必要がある。

●学修意欲に関する指標として「授業外での学修」も例示

 支援を受ける学生側の要件に関連して追加で示された情報もある。
 支援対象の学生はGPA等が学部で下位4分の1になると大学から警告を受け、警告が連続すると支援を打ち切られる。今回、文科省は機関要件の確認時に大学等に提出を求める成績分布の資料の参考例を示した(下図)。

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 参考例①では下位4分の1のGPAは1.3となるが、1.3の学生が多く、これ以下の者が全体の3分の1を占めるような場合も1.3の学生は「下位4分の1」とみなされるのか等、運用の詳細については近く示される。
 また、資格取得率が高く全体的に優秀なケースなどを想定し、下位4分の1に該当しても特例措置として警告の対象から外す「斟酌すべきやむを得ない事情」の具体的中身については引き続き検討され、次の省令改正に反映される予定だ。
 支援打ち切りの対象として「出席率5割以下」を例示してきた学修意欲の他の例として、「課題提出状況」に加え、新たに「授業外での学修(予習・復習)」が示された。各大学等はこれらの例を参考に、支援対象者の学修意欲の状況を判定する必要がある。

●入学後に支援を申請する1年生の手続きも規定

 支援を受ける側についてはこれまで、現在の高3生、および2年次以上の在学生の採用について、要件や手続きのスケジュールが示されていたが、新たに2020年度の1年生の在学採用に関する説明が加えられた。これは、進路を確定していなかった等の理由で高3の時に予約採用の手続きをしなかった者が大学等に進学してから支援を申し込むケースなどを想定しており、大学等の対応が必要になる。支援対象になるための要件は高校での評定平均値3.5以上、または学修意欲の確認など、高3生の要件とほぼ同じになる。
 文科省からの大学等に対する要請や確認事項も示された。入学金は入学前に徴収するのが一般的だが、この制度で支援対象となる可能性がある学生については授業料と合わせ入学金の徴収を猶予するよう要請している。また、制度の対象となった大学がその後、機関要件を満たさなくなり対象からはずれた場合、それまで支援を受けていた学生が卒業するまで授業料を減免しなければいけないことも明示された。


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