「THE世界大学ランキング日本版2019」の指標-学生調査を追加

●「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野で構成
●多様なステークホルダーを重視し、回を重ねるごとに指標が充実
●2019年は学生調査3項目の追加で全16項目に

このほど発表された「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)世界大学ランキング日本版2019」は、多様なステークホルダーの視点を取り入れて大学の教育力を可視化している。今回は学生調査によって教育の受け手の視点が導入され、指標がさらに充実した。3回目となる2019年版のランキング指標について解説する。

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●学生調査の追加で「教育充実度」と「教育成果」の比重が変わった

 「THE世界大学ランキング日本版2019」は前回同様、大学の教育力に焦点を当てた指標を採用。変更点を下表にまとめた。

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 「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野での構成はこれまでどおりだが、高校教員の評判調査を項目としていた「教育充実度」に今回、学生調査が追加された。ピアレビューの観点を持つ研究者、大学の入り口と接続する高校教員、出口と接続する企業の人事担当者に加え、教育の受け手である学生の視点が加わることによって、より多様なステークホルダーの声が反映されるランキングとなった。
 「教育充実度」には、学生調査から「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」の3項目が加わった。これにより、ランキング指標全体に占める「教育充実度」の比重が4ポイント上がって30%になり、その分、「教育成果」の比重は16%に下がった。
 「教育充実度」の中では高校教員の評判調査の「グローバル人材育成の重視」「入学後の能力伸長」の2項目の比重が7ポイントずつ下がり、学生調査の3項目と合わせ5項目すべてが6%の比重となった。
 一方、「教育成果」の「企業人事の評判調査」と「研究者の評判調査」の比重はそれぞれ10%から8%に下がった。
 このランキングは今年で3回目だが、前回は「国際性」に「日本人学生の留学比率」「外国語で行われている講座の比率」の2項目が追加された。全分野を合わせたランキング項目数は初年度11、2年目13、今回は16と回を重ねるごとに充実している。

●指標の「安定性」と「進化」の両方を重視

 各指標のポイント算出に使われるデータソース、および各評判調査の概要は下表のとおり。

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 以下、分野ごとの各指標について説明する。

<教育リソース 34%>
①学生一人あたりの資金(8%)
  ②の教員比率と共に教育環境の充実度を示す指標として使用。
 経常収入÷在籍学生数
②学生一人あたりの教員比率(8%)
 教員数÷在籍学生数
③教員一人あたりの論文数(7%)
 研究の卓越性が教育に還元されるという観点から論文の生産性を見る。エルゼビア社のデータベースを使用。
 論文数(2013~2017年)÷教員数
④大学合格者の学力(6%)
 「どのような学力レベルの学生と共に学ぶ環境か」を教育リソースとして捉える。
 ベネッセ総合学力テストにおける大学合格者の学力データを使用。
⑤教員一人あたりの競争的資金獲得数(5%)
 大学が獲得している競争的資金獲得件数から教育環境の充実度がわかる。
 内閣府ホームページ「競争的資金制度 平成29年度競争的資金制度一覧」掲載分が対象。

<教育充実度 30%>
⑥学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会(6%)<新規>
 「教授陣や先生方と交流する機会はどの程度あるか」等の設問(0~10点)の回答平均値
⑦学生調査:授業・指導の充実度(6%)<新規>
 「クリティカル・シンキングのスキルの成長が支援される機会はどの程度あるか」等の設問(0~10点)の回答平均値
⑧学生調査:大学の推奨度(6%)<新規>
 「友人や家族に自分の大学をどの程度勧めるか」という設問(0~10点)の回答平均値
*「学生調査」はベネッセコーポレーションが大学に在籍する学生を対象に実施。各大学の教育改革を学生が認識しているか、0~10点で回答してもらった。3項目とも日欧米共通の質問。
➈高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視(6%)
 「グローバル人材育成に力を入れている」という設問の大学別得票数
⑩高校教員の評判調査:入学後の能力伸長(6%)
 「生徒の力を伸ばしている」という設問の大学別得票数
*「高校教員の評判調査」はベネッセコーポレーションが高校の進路指導担当教員を対象に実施。卒業生からさまざまな情報を集めて多くの高校生に進学に関するアドバイスをしている進路担当教員の意見を通して学生の満足度を見る。

<教育成果 16%>
 ⑪企業人事の評判調査(8%)
 日経HRの「企業人事担当者から見た大学のイメージ調査(2017年)」のデータを使用。
 ⑫研究者の評判調査(8%)
 THEが世界ランキングのために世界の研究者を対象に実施した評判調査の結果から、日本の研究者が日本の大学について評価したデータを抽出。「日本で素晴らしい教育をしていると思う大学」を6つ挙げてもらい、大学ごとの得票数を合算。

<国際性 20%>
 ⑬外国人学生比率(5%)
  ⑭の教員比率と共に、日本の大学の課題であるグローバル化を促すために、学内の多様性確保の状況を見る。
  在籍外国人学生数÷在籍学生数
 ⑭外国人教員比率(5%)
  在籍外国人教員数÷教員数
 ⑮日本人学生の留学比率(5%)
  日本人学生の留学生数÷在籍学生数
 ⑯外国語で行われている講座の比率(5%)
  留学生を教育する仕組みの充実度を見る。
  外国語で行われている講座数÷全講座数

 以上16の指標項目について0~100のスコアに換算し、それぞれの比重に応じて合計したスコアで総合ランキング、分野別ランキングが決まる。
 THEはランキング指標について、年度ごとの比較が可能な安定性・継続性と、大学の意見を反映した進化の両方を重視している。今回のランキング発表時の来日でも、多くの声を集めるため大学関係者とのコミュニケーションを深めた。