入学前教育への期待①城西大学-基礎学力と学習習慣の定着で中退を予防

●入学後のリメディアル教育とセットで未履修者のフォロー
●難易度が上がりがちな教員によるオリジナル教材は廃止
●取得データに基づきリメディアル授業をチューニング

年内入試による入学者が増える中、入学前教育は高大接続の重要な要素になっている。「早期合格者の学習習慣の維持」にとどまらないねらいと戦略を持ってプログラムを実施する大学もある中、3大学の事例をシリーズで紹介する。

入学前教育への期待②東京家政学院大学-学生募集や入試改革に生かす
入学前教育への期待③医療創生大学-教育力による評価で生き残りを図る


●データ取得を重視し、任意受講から必修に切り替え

 城西大学の薬学部医療栄養学科は、2001年の学科開設当初から入学前教育を実施してきた。薬学の知識を持つ管理栄養士を養成するが、入学後に必要となる化学と生物を入試で必須にしていないため、未履修者のフォローをし、学習習慣の維持・定着を図る必要があったという。近年は、全入学予定者を対象にオリジナル教材による学習を必修化、外部のプログラムも任意受講で提供してきた。
 2021年度の入学者からは、オリジナル教材を廃止したうえで外部プログラムを別のものに変えて入学前教育を一本化、全員に必修で課すことにした。新しいプログラムは、入学後の専門的学びに誘い、そこに生物や化学がどう関わってくるかを理解させる内容と、実際に両科目の基礎を学ぶリメディアル的な内容で構成され、同学科では後者は入学後に集合形式で開講する。
 「本学科は従来、資格取得という目的意識の高い入学者が多いが、近年はモチベーション、知識量とも低下傾向にある。そこで、入学前教育の見直しが必要ではないかという結論になった」。学科主任の内田博之教授はそう説明する。

●受講者任せにせず、教員が責任を持ちプログラムを実質化

 オリジナル教材の廃止は、入学者にとってのハードルを下げるためだ。「教員が教材を作ると、どうしても『これくらいのレベルは修得してほしい』という願望に傾いて教材の難易度が上がり、かえって学ぶ側のやる気を損ないかねない」(内田教授)。代替となる外部のプログラムは、入学後の学びへの期待から未履修科目に対する意欲も高め、基礎的な知識を定着させることを重視した内容になっている。
 さらに、新しいプログラムからは知識修得度のデータ、およびアンケートに基づく受講者のモチベーションや学習習慣等に関するデータがフィードバックされる点が選択の決め手になった。それらのデータが、リメディアルをはじめとする各授業のスピードや解説のかみ砕き具合、個別ケアを検討する際の材料になると考えたのだ。
 内田教授は「従来、われわれ教員が授業や試験を通して入学者のこうした特性を把握できるのは1年次前期の終わりくらいだった。入学前教育を通してデータが早く得られれば入学直後から学生のケアができる」。プログラムを必修にしたのも、授業のチューニングに活用するからには全員のデータが必要と考えたからだ。
 同学科では、教員1人あたり6人前後の学生を受け持つ担任制を採用。担任は担当する学生一人ひとりのデータを確認しながら相対することになっている。
 「未履修によるドロップアウトを防ぎ、基礎学力と学習習慣の定着を図る」という目的の下、入学前教育とリメディアル教育を形式的なものにせず、実質化することが常に意識されている。入学前プログラムを修了した段階で確認テストを実施、定着度を確認したうえで必要に応じて反復学習を取り入れる。学外の教材を使っていても受講を学生任せにはせず、リメディアルの授業では教員が常に後ろに控え、つまずいている学生を素早くフォローする。

●「受け入れた以上は成長させる責任がある」

 リメディアル教育とセットで展開される入学前教育の最終的なゴールは留年や中退の防止だ。「多くの場合、留年や休学・中退の背景には学力面の問題がある。未履修科目に対する苦手意識をなくし、基礎学力と学習習慣の定着を図れば、これらの問題は自ずと減っていくはずだ」と内田教授。
 城西大学の薬学部医療栄養学科には、教員が学生本位で発想して汗をかくという文化があるようだ。「教員間の風通しが良く、学生の様子について日常的に言葉を交わす。『今どきの学生は...』と嘆くのではなく、そういう学生を受け入れている以上、きちんと成長させて社会に送り出すのがわれわれの責任だ。そういう意識が当たり前に根付いているかもしれない」。


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