2021.0510

英語による授業や留学必修で先駆け、他大学のモデルに-宮崎国際大学

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●「THE世界大学ランキング日本版2021」で「国際性」分野8位に
●1994年の開学以来「英語によるリベラルアーツ」を実践
●教員に教育力向上の努力を促す独自の雇用システム

3月に発表された「THE世界大学ランキング日本版2021」の「国際性」分野で、学生数約600人の小規模大学・宮崎国際大学が8位にランクインした。1994年の開学時から一貫して「英語によるリベラルアーツ」「必修の海外研修」を特色として掲げ、グローバル系大学・学部のモデルにもなった。密度の濃い海外研修プログラムや、教員に教育力向上の努力を促す独自の雇用システムなど、「本気のグローバル人材育成」の仕組みを紹介する。
*関連記事
「THE世界大学ランキング日本版2021」-東北大学が2年連続トップ


●理事長が「リベラルアーツこそ理想の教育」と共感し、設立

 「THE世界大学ランキング日本版2021」における宮崎国際大学の「国際性」の順位は、前年の19位タイから11ランクアップの8位。高校教員調査や学生調査に基づく教育充実度は101位タイで100位以内をうかがう位置につけ、総合ランキングは前年の151-200位から121-130位に上がった。学長補佐を兼務する西村直樹グローバル教育センター長は「国際性という強みをアピールできるランキングや調査には積極的に参加し、データを開示している」と説明。その言葉からは「自学こそが日本の高等教育におけるグローバル人材育成の先駆者」という誇りがうかがえる。
 宮崎国際大学は国際教養学部(入学定員100人)、教育学部(同50人)の2学部からなる。開学は1994年。中学、高校や短大を擁する学校法人宮崎学園の当時の理事長・大坪久泰氏が「リベラルアーツこそ、知識偏重の日本の大学に求められている理想の教育だ」と共感し、比較文化学部のみの単科大学として設立した。同氏は防衛庁(現・防衛省)技術研究本部在職中にアメリカ海軍センターに交換研究員として赴任。そこでのアメリカ人研究者との交流が、リベラルアーツ大学の価値に触れる原体験だったという。
 「リベラルアーツを通じて精神と知の自由を獲得し、ものごとをさまざまな角度から捉えて自分の考えを導き出す力をつけさせたいという大坪理事長の理念が、本学の出発点だ」。西村センター長はそう説明する。当初からクリティカルシンキングを重視し、あらゆる授業にアクティブラーニングを取り入れてきた。グローバル時代の到来を見越し、すべての授業を英語で行い海外研修を必修化。教育の柱はあくまでもリベラルアーツであり、その学びを通して英語力を伸ばすという考え方だ。
 2006年に学部名を国際教養学部に改称し、2014年には教育学部を設置した。

●2021年度の外国人教員比率は77%

 「THE世界大学ランキング日本版」の「国際性」の4つの指標を、国際教養学部について直近のデータで見ていくと次のようになる。
・2021年4月現在、留学生比率は12%。韓国をはじめ中国、カメルーン、ベトナム、ネパール、カザフスタンなどから受け入れている。
・2021年4月現在、専任教員31人中24人(77%)が外国人。アンデルソン・ パッソス学部長もブラジル国籍だ。
・卒業までに留学等の海外体験をする学生の割合は、2020年度82%(経済的理由や健康上の理由で海外研修に参加しない学生もいる)。
・2019年度に開講した授業のうち英語による実施割合は88%。
 ランキングでは、これら各指標の所定期間のデータを教育学部と合算・平均したものが使用されている。

●英語力を高めるうえで日本語運用能力も重視

 ランキングの「国際性8位」に結びつくさまざまな施策が盛り込まれた国際教養学部のカリキュラムの概要を紹介する。
 1年次の前期は英語で授業を行う科目を5科目履修する。そのうち2科目は人文科学、社会科学、総合科学全般に関連する科目から選択。これらの授業は各分野の専門家と英語教育の専門家によるチームティーチングで行われる。残り3科目は英語のオーラル・コミュニケーション、リーディング、アカデミック・ライティングで、習熟度別にクラスが編成される。
 英語力に加えて日本語運用能力も重視し、1年次から3年次まで「日本語表現」が必修。「大学がどんなに素晴らしい英語教育をしてもネイティブ並みにすることは不可能だし、その必要もない。日本人にとっての真の英語力とは、日本的な文化や思考様式を深く理解したうえで最適な表現によってコミュニケーションする力のこと。そのためには日本語の力を高めることが不可欠だ」(西村センター長)。
 ほとんどの科目が週2コマ開講され、少数科目を集中的に学んで確実に力をつけさせるアメリカ型のカリキュラムになっている。

jikanwari.png

●海外研修では受講のかたわら英語によるレポート3本を提出

 2年次前期には英語科目と「日本語表現」に加え、「英語圏社会の文化」「現代日本の芸術文化」などの学際的科目やキャリア関連の科目を履修する。これらの授業も一部、チームティーチングで運営される。
 2年次後期には必修の海外研修(約16週間)があり、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど英語圏5か国、15の協定校に送り出す。リベラルアーツと英語の力を異文化の中で活用しながら自分の考え方と自立心を身につけてもらう。協定校の英語集中コースで学ぶ一方、滞在中に3つのテーマで英語による計1万5000語のレポートを書く。「英語」では授業を中心とする英語学習の報告、「地域研究」では異文化社会での経験や所感をまとめる。「自由研究」で取り組むのは、その国に関連するテーマの下、アンケートやインタビューに基づくデータを入れて構成する論文だ。
 海外研修からの帰国後、3年次からは人文科学、社会科学、特別研究(英語圏言語文化、国際社会文化、グローバル・スタディ、心理学の4分野がある)の中から専攻を選んで学び、4年次に卒業論文をまとめる。
 2020年度は新型コロナウィルス感染拡大のため、海外研修への派遣を断念。協定校との共同授業をオンラインで実施した。自学の教員と現地の教員が共同してそれぞれの国の歴史や文化を解説するプログラムを設け、現地の学生との交流の機会もつくって「地域研究」のレポート、「自由研究」の論文の作成に取り組ませた。
 2021年度の派遣も4月下旬現在、厳しい状況にある。ビザの申請手続きのタイムリミットとなる6月はじめをにらみ、オンラインによるプログラム実施も視野に入れつつ難しい判断を迫られることになりそうだ。 

●教員は任期制、再任用希望者は教育力のエビデンスを提示

 外国人教員が多数を占める国際教養学部では「日本の大学の中でも本学だけではないか」(西村センター長)という独自の雇用システムを採用している。
 学部長や日本人教員を含め、全員が2年契約を基本とする。契約更新を希望する教員は授業でのチャレンジや学生による授業評価など、主に教育に関わる業績をティーチングポートフォリオに記録し、教授会で選出された再任委員会に提出。その審査結果に基づいて学部長、さらに学長が再任用の可否を判断し、理事長決裁で契約更新が決まる。
 教員が永年雇用に安住することなく自らの教育力を磨き続けるためのこのシステムも、開学時から維持されている。希望する教員のほとんどが実際に再任用されているが、これはシステムの形骸化によるものではなく、授業のクオリティアップに努めることが当たり前の風土になっているからだという。

●奨学金制度の拡充で学生募集が好転

 英語によるリベラルアーツや海外研修の必修化など、先進的な教育は当初なかなか受け入れられず、学生募集では苦戦が続いた。2003年度には入学定員を50人減らしている。
 しかし、グローバル人材育成に対する社会的ニーズと関心の高まりを受け、近年は入学者が徐々に増加。入学定員100人に対し2016年度は57人だったが、2017年度68人、2018年度87人、そして2019年度は120人と定員充足を果たし、2020年度も117人を迎えた。
 教育改革、入試改革、奨学金制度の拡充と、これらを伝えるための高校訪問、ガイダンス、オープンキャンパス等、広報活動の強化が学生募集の好転につながった。奨学金制度については、一般選抜とセンター試験利用選抜の成績上位者、高校で英語外部検定の成績基準をクリアした者などを対象に、授業料の全額または半額を免除する多数の枠を設けている。
 入学時点でこれらの基準にあてはまらなくても入学後、学業成績や英語外部検定の成績、芸術・スポーツ等の分野での成果など、奨学金受給のチャンスが数多くある。2021年度からは、地元経済界からの支援による新たな給付型奨学金も導入予定だという。
 メディアの活用にも力を入れるようになった。数年前には大学のウェブサイトを一新。キャンパス紹介や英語による授業の動画、「リベラルアーツ教育とは?」といった受験生の疑問に英語で答える動画などを多数掲載し、サイトはアクティブな印象だ。
 「データで見る国際教養学部」のページでは、「THE世界大学ランキング日本版」の「国際性」の指標をはじめ、さまざまなデータをアピール。2020年度の4年次のTOEIC平均スコアが、英語専攻の全学生の583点を大きく上回る675点だったことも示されている。

website.png

●「出口をイメージできるリベラルアーツ」への転換を検討

 コロナ禍によって海外留学が難しくなっていることが影響し、2021年度入試では国際・外国語系学部の志願者数が大きく落ち込んだ。宮崎国際大学の国際教養学部の入学者数も再び定員を割り込み、79人に。
 コロナ問題の収束が見通せない中、今春、就任した村上昇学長は教育のブラッシュアップという本質的な課題解決によって受験生にアピールする戦略を練っている。「出口をイメージしにくい」というリベラルアーツの弱点に対応すべく、具体的な出口を想定したコースを設けて、モデルカリキュラムやカリキュラムフローチャートを示すことなどを検討中だ。必修科目の内容を見直して教職課程の単位に換算できるようにし、教員志望者の履修負担を軽減することも考えている。
 「英語による授業」「海外研修の必修化」を掲げる後続の大学や学部の一部については、構想段階で視察・ヒアリングに協力してきたという。西村センター長は「私たちの理念が時代を先取りし、広く社会から求められるものであったと自負している」と話す。建学の理念とグローバル人材育成のパイオニアとしての誇りを原点に、独自のポジション確立をめざす小規模大学の今後が注目される。