2020.0420

THE世界大学ランキング日本版-「国際性」順位が向上した大学<下>

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3行でわかるこの記事のポイント

●「国際性」のスコアが10ポイント以上アップした4大学の取り組み
●関西外国語大学は留学希望者を厳しく選考
●恵泉女学園大学にはアジア各言語のネイティブ教員も

「THE世界大学ランキング日本版2020」では、いくつかの私立大学が「国際性」分野の順位を大きく上げた。そのうち「国際性」のスコアが10ポイント以上アップした4大学(梅光学院大学、創価大学、関西外国語大学、恵泉女学園大学)について留学生の受け入れ、外国人教員の採用、留学送り出し、外国語による授業の開講という4項目における取り組みを2回に分けて紹介する。「日本人学生による留学生支援の仕組み」など、参考になりそうな共通項がある一方、それぞれの教育の理念、特色を根幹に据えていることもわかる。今回は関西外国語大学と恵泉女学園大学を取り上げる。

「THE世界大学ランキング日本版-「国際性」順位が向上した大学<上>」
「THE世界大学ランキング日本版2020」-東北大学が初のトップに


関西外国語大学(「国際性」の順位:2019年18位→2020年10位)
―海外協定校の教員が日本での留学準備教育を担当

<外国人学生比率>
 2018年度の外国人学生比率は5.8%。出身地は約40の国・地域にわたり、正課・課外を通じて日本人学生とのさまざまな文化交流が進んでいる。630人の留学生が入居する「GLOBAL COMMONS 結 -YUI-」では、生活を共にしながら安全性・快適性の面で支援する日本人学生のレジデント・アシスタント(RA)が活躍している。

<外国人教員比率>
 55カ国・地域393大学(2020年4月現在)とのネットワークの下、外国人教員を多数配置し、2018年度の外国人教員の比率は44.9%。専門分野も英語学、英語教育学に加え比較文化、国際政治、日本学など多岐にわたる。

<日本人学生の留学比率>
 現地の学生と共に学士課程で学ぶことを重視し、ダブル・ディグリー留学、2カ国留学、専門留学など多彩な制度を設けている。2018年度の留学経験者は全学生1万890人のうち1カ月未満が174人、1カ月以上が1771人だった。留学修了後、海外の大学院に進学する学生もいる。
 外国語大学ならではの留学支援制度の充実ぶりも目を引く。年間約8億円規模の奨学金予算を確保。「谷本国際交流奨学金」「短期大学部活性化奨学金」では留学中の授業料を免除(または支給)し、住居費、食費も支給する。留学中の授業料を免除(または支給)して住居費、食費も支援する「フルスカラシップ留学」は2018年度248人、留学中の授業料を免除(または支給)する「スカラシップ留学」は2018年度1130人が活用している。2019年度には、企業の協賛を得て成績優秀者に現地への往復交通費を支援する奨学金を新設、初年度は10人が受給した。
 留学希望者には厳しい資格審査を実施。TOEFL550点以上、GPA3.0以上を基本とし、留学プログラムごとに筆記、スピーキング、面接など2次から4次にわたる審査を行う。
 2018年4月にスタートした「関西外大流グローバル人材育成プログラム」では、外国人留学生と共に国際関係や政治、歴史、経済、ビジネスなど60以上の科目でプレゼンテーションやレポート作成等、留学先の正規授業と同様の内容を英語で学ぶ。留学候補生となった学生には同プログラムから所定の科目の受講を義務付けている。協定大学から派遣された教員が担当する留学準備教育「Super IES プログラム」も開講している。

<外国語で行われている講座の比率>
 留学準備教育「Super IES プログラム」、高度で実践的な英語運用能力、諸外国・地域の歴史や文化に対する幅広い知識、国際感覚の向上をめざす「関西外大流グローバル人材育成プログラム」など、特色あるカリキュラムや科目群があり、2018年度、外国語で行われている講座の比率は14.2%だった。


恵泉女学園大学(「国際性」の順位:2019年42位タイ→2020年25位)
―4年間、英語による授業を行う選抜型プログラム

<外国人学生比率>
 2018年度、学生数約1000人のうち主に中国、韓国などアジア圏からの留学生が約30人在籍。ほかに中国・韓国・台湾の協定校から年間約10人を受け入れている。日本語や日本文化について学ぶ夏期研修プログラムには中国、韓国、台湾、タイなどの協定校から約40人の学生が集まる。

<外国人教員比率>
 2018年度の外国人教員比率は6.9%だった。英語の実践的運用能力の修習に加え、第二言語の習得によって多文化社会に通用する豊かな国際感覚を身につけることを重視。英語圏のみならず中国、韓国、タイ、インドネシアなど、アジアを中心とする各言語のネイティブ教員が授業を担当している。

<日本人学生の留学比率>
 2018年度の日本人学生の留学比率は13.7%だった。
「世界各地を教室に、実体験を通してグローバル時代を生き抜く本物の知性と行動力を身につけてほしい」という考えの下、さまざまなプログラムを開設。協定校に半年間、または1年間派遣する留学プログラムや長期休暇中の2週間~1カ月間程度の各種語学研修プログラムがあり、英語のほか第二言語(タイ、中国、韓国など)の力を伸ばす機会もある。
 タイの現地NGOや農山村で体験学習をする長期フィールドスタディ(5カ月間)、アメリカ、オーストラリア、アジア各地での短期フィールドスタディ(2週間程度)など、海外体験の機会を充実させている。

<外国語で行われている講座の比率>
 英語の実践的運用能力を身につけさせるため、ネイティブ教員による授業に力を入れている。2016年度からは所属学科を問わず、グローバル社会と深く関わりたいと考える学生の中から履修者を選抜する4年間の「Global Challenge Program」を開設。1年次は少人数クラスで週10時間以上のインプットを行い、多様なトピックを英語で学んだりスピーチコンテストに挑戦したりする。2年次は4週間の英語トレーニングキャンプに参加するなど、多様な活動を通して4年間で「TOEIC800点相当の英語力に到達」することをめざす。 

●学生の意識とニーズ、自学のリソースと教育理念をふまえた取り組みを

 4大学それぞれが、外国人教員の採用→外国語による授業の開講、外国人教員の採用・留学生の受け入れ(→日本人学生との交流)、外国語による授業の開講→留学の送り出しという具合に、施策を関連づけながら国際化に取り組んでいることがうかがえる。日本人学生が外国人留学生を支援する仕組みを通して海外への興味を喚起する、ボランティア活動など体験型の留学プログラムで参加へのハードルを下げるなど、複数の大学に共通する実践も見られる。
 一方で、英語圏だけでなくアジアに学生の目を向けさせる、教育力の国際通用性を重視するなど、大学ごとの力点、特色を根幹に据えていることもわかる。
 国際性の向上をめざす大学は学生の意識やニーズを把握したうえで自学のリソース、根幹に据えるべき教育の理念を再確認し、すぐできることと中長期的な課題とを整理して着実に取り組むことが重要だろう。