2019.0212

法曹コース制度化へ~法学部と法科大学院が連携し5年間の一貫教育

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3行でわかるこの記事のポイント

●協定に基づく特別選抜で法科大学院に接続
●体系的・一貫的教育課程編成のための協定を文科省が認定
●時間的・経済的負担の軽減で法科大学院志望者の増加を図る

法学部3年間+法科大学院2年間の5年一貫教育で司法試験合格をめざす「法曹コース」制度が2020年度からスタートする見通しとなった。司法試験挑戦までの時間的・経済的負担を軽減して法科大学院進学者を増やすことがねらいで、予備試験経由の司法試験合格者の増加に対する法科大学院関係者の危機感も背景にありそうだ。多様なバックグランドを持つ人材が法曹として活躍するという理念を掲げて2004年度に創設された法科大学院制度は、大きな転換点を迎える。

*文科省の公表資料はこちら


●法科大学院未修者コース1年次の内容を法曹コースで修得

 1月末に開かれた中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会は、法曹コースの制度化について文部科学省が示した案を大筋で了承した。2019年度の法学部入学者の2年次進級時に法曹コースへの振り分けが可能となるよう、今後、文科省が制度の細部を詰めて大学に通知する方向だ。法曹コース開設をめざす大学はすでに、修了者の送り出し先となる法科大学院を確保すべく動き出している。
 文科省が新設をめざす法曹コースは、法学部3年間+法科大学院2年間(3+2)の5年一貫教育を可能にする新たな法曹養成制度。法学部に法曹コースを設け、法科大学院と連携した体系的・一貫的教育課程によって3年間で修了し、法科大学院の既修者コースに進学できるようにする。法科大学院未修者コースの1年次で学ぶ内容を学部3年間で学ばせ、接続させる仕組みだ。
 法学部での法曹コースへの振り分けは一定程度の教養科目履修後の2年次進級時が妥当という考えから、制度の実質的なスタートは2020年度の2年次からになる方向だ。
 法曹コース制度構想の背景には、法科大学院修了者の司法試験合格率低迷と志願者減少、相次ぐ募集停止という厳しい現状がある。法科大学院を経由せず予備試験から司法試験合格をめざす者が増える中、法科大学院制度の存在意義を問う声も出ている。
 学部の早期卒業や飛び入学を前提とする法曹コースは、法曹をめざす受験生や法学部生の時間的・経済的負担を軽減して法科大学院進学のインセンティブを高めることがねらい。特に、法科大学院撤退が相次ぐ地方の法曹志望者を支援するという観点もある。法学部にとっては法曹志望の優秀な受験生の確保、法科大学院にとっては学生募集の安定化が期待されている。

●法科大学院の定員の4分の1を上限に5年一貫型の特別選抜枠

 法科大学院等特別委員会で示された法曹コースの概要は以下の通り。
 法学部を持つ大学が自学、または他大学の法科大学院と連携し、法科大学院の既修者コースに円滑に接続する体系的な教育課程を編成。具体的には、共同開講科目の設置、科目等履修の活用などが想定されている。
 法学部と法科大学院が、教育課程編成や法科大学院で受け入れる際の選抜方法に関する協定を結び、文科省の認定を受ける。認定されると、法曹コース修了者は法学既修者認定の対象となり、学部での成績を重視する「特別選抜」を受験して法科大学院に進学できる。法曹コースの質保証のため、法科大学院の認証評価では法曹コースから特別選抜で入学した学生の司法試験合格率をチェックすることなどが検討されている。
 法曹コースの学生を対象とする法科大学院の特別選抜の概要は図の通り。

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 特別選抜は、協定先の法曹コースを対象とする「5年一貫型」に加え、協定関係にない大学の法曹コースからも受け入れる「開放型」も設けることができる。いわば前者が指定校推薦型で後者が公募推薦型と言えそうだ。 
 5年一貫型は法曹コースでの成績を中心に面接等も実施して選抜する。開放型はこれらに加え、法律基本科目の論文式試験を課す方向。各法科大学院はこれらのいずれかのみ実施することも、両方を実施することも可能だ。5年一貫型の募集人員は法科大学院の定員の4分の1を上限とし、これと開放型を合わせた特別選抜枠全体で定員の2分の1を上限とする。
 残り2分の1を一般選抜枠とし、主に法律未修者を含む法曹コース以外からの受け入れが想定されているが、特別選抜で合格できなかった者など、法曹コースからも一般選抜の受験は可能。

●「3+2」を基本に「4+2」での特別選抜受験も可能

 法曹コースの1学年の規模は、2019年度の法科大学院入学定員の約半分にあたる1100人程度を想定。コース生の法科大学院進学に関する予測可能性を高めるため、大学は協定先法科大学院の特別選抜の募集人員をふまえたコース定員を設定することになる。
 法曹コースは基本的に3年間での修了が前提となるため、大学は協定先法科大学院と円滑に接続する知識・能力を3年間で修得させる教育課程の編成と修了認定要件の設定が求められ、この点がコース開設のハードルとなりそうだ。4年間での修了も可能で、その場合も特別選抜を受験できるが、学生の負担軽減の観点から「あくまで3+2が基本で、4+2も例外的に認める」というのが制度の位置づけだ。

●新潟大学、熊本大学などが複数の法科大学院と連携を協議

 法曹コースの制度化をにらみ、特に法科大学院の募集を停止した地方大学の法学部と法科大学院との間で協定に向けた動きが活発化している。2017年に法科大学院を廃止した新潟大学は東北大学、神戸大学、中央大学それぞれの法科大学院と連携協定を締結し、協議をスタートさせた。同じ年に法科大学院を廃止した鹿児島大学は神戸大学、中央大学の法科大学院と連携協定を結んだほか、九州大学、琉球大学の法科大学院との間でも調整を進めている。
 一方で「国立大学や有力私立大学の法科大学院以外にとって、他大学の法学部に連携先を確保するのは難しい」(中堅私立大学の法科大学院関係者)という実情もあるようだ。「他の法科大学院からも同様の話を聞いた。中堅以下の法科大学院は開放型の特別選抜で門戸を開いておき、実質的には自学の法学部から『自給自足』で学生を確保する方向になるだろう」と話す。こうした状況の下、法曹コースの制度化によって法科大学院の淘汰がさらに進むとの見方もある。
 また、現状でも各大学の早期卒業制度はGPA等の要件が厳しいため実際の利用者は少なく、「3+2」を基本とする法曹コースが実質的に機能するか疑問視する声も。
 「法曹コースの導入によって、多様なバックグランドを持つ法曹の養成という法科大学院制度の理念は曲がり角に来ている」との指摘も聞かれる中、文科省は未修者コースの教育の充実についても今後、検討することにしている。