2019.0107

一法人複数大検討会議-法人の長を「理事長」とし従来の「学長」と区別

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3行でわかるこの記事のポイント

●制度の見直し範囲を巡り文科省と委員の間で攻防
●「法人の長は学長を兼務しない」を基本パターンとすべきとの意見も
●一法人一大学でも法人の長と学長の役割分担が可能に

「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」(座長:有川節夫放送大学学園長理事長)は2018年12月下旬の第6回会合で、文部科学省から示された中間まとめの案を大筋で了承、同省がパブリックコメントにかけた。会合では、法改正を最小限にとどめたい文科省と制度全体の一貫性を求める委員との間で攻防が展開され、「現実的対応」で決着を図る提案もなされた。

*文科省の配付資料はこちら
*パブリックコメント(1月9日締め切り)はこちら
*前回会合の報告はこちら


●同じ法人の長でも「理事長」と「学長」という名称が混在?

 検討会議はパブリックコメントの内容もふまえて1月以降、議論を継続。2018年度末に最終まとめを出し、次期通常国会で法改正して2020年度からの制度施行をめざす。岐阜大学と名古屋大学は同年度の経営統合に向け、協議を進めている。
 現行の国立大学制度では学長が法人の長を兼ねるのに対し、一法人複数大学制度では経営力や教学ガバナンスの強化を目的に、両者を兼務せず役割分担する選択も可能になる点がポイント。中間まとめ案では、この選択肢を一法人一大学にも導入することが盛り込まれた。
 中間まとめ案では、一法人複数大学制度の下で法人の長が学長を兼ねない場合のみ、「現行法の『学長』と区別し、その名称を『理事長』とする」とされた。下図にあてはめると、①パターンのみ法人の長を「理事長(〇〇国立大学法人の理事長)」とし、同じ法人の長でも②パターンでは現行通り「学長(●●国立大学法人の学長)」で「A大学の学長も兼ねる」とする案だ。

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 この案に対して委員からは「混乱が生じる」など、異論が続出。「どのパターンでも法人の長は『理事長』とし、理事長が学長を兼ねるケースもあるという整理にすべき」「一法人一大学でも名称はそろえるべき」など、わかりやすい制度を求める声が目立った。学校教育法と国立大学法人法との間で「学長」の定義が違う点、一法人一大学を必須としてスタートした点など、「そもそも、現行の国立大学制度に矛盾がある」との指摘も聞かれた。
 文科省は「一法人複数大学はあくまで例外として位置づけ、それを可能にする制度を考えることがこの会議の趣旨。2019年度中に法改正という閣議決定がなされ時間的制約もあるので、現行制度の根本的な問題については(検討会議とは分けて)引き続き検討したい」と応じた。
 9月の初会合では複数の委員から「一法人複数大学について議論をしていくと、今の制度そのものの課題に踏み込まざるを得ない」との見解が示され、文科省が「一法人複数大学を可能にする制度に絞った議論を」と要望する場面があった。会合を重ねて具体的な議論が展開される中、最小限の制度改正にとどめたい文科省と、制度全体の整合性を求める委員との攻防が表面化した格好だ。
 法人の長の名称については、委員から「一法人複数大学はあくまで例外としたうえで、これを採用する場合には(図の①~③のいずれでも)『理事長』とする、というのが現実的対応だろう」との提案があり、これもふまえて文科省が再検討することになった。

●指定国立大学は、例外的に法人内の一部大学を対象とする仕組みも導入

 最終まとめに向けて議論が集約されつつあるが、法人の長と学長の兼務に関する3案に懐疑的な考えを示してきた委員は、あらためて「法律論は別としても、教育研究の現場では精神論に関わる問題が予想される」と述べた。先に示した図の②パターンにおいて、学長が法人の長も兼ねるA大学の教職員と、そうではないB大学の教職員とでは学長の権限に対する認識が大きく異なり、両大学の関係に様々な影響をもたらすと指摘。他の委員からも「3つのパターンからの選択が可能にはなるが、法人の長と学長がすべて異なるパターンを基本とすべきだ」との意見が出た。
 前回、議論が交わされた指定国立大学法人制度との関係について中間まとめでは、一法人複数大学では「現行制度の法人全体を指定する仕組みだけでなく、特例的に一部の大学のみを指定する仕組みを設ける」とされた。指定国立大学法人に適用される特例措置は、指定された大学のみに適用するものと法人全体に適用するものを明確にすべきとも明記。
 この日の会合では、大学や学部・学科の新設における設置審査のように、一法人複数大学への移行が適正なプロセスでなされたことを担保する仕組みが必要との指摘もあった。文科省が次回、その点をふまえた移行プロセスの案を示すことで了承された。


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