2018.1214

一法人複数大学検討会議が中間まとめ案-学長は法人の長が任命

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●透明性確保の下、学長の解任権も法人の長に
●指定国立大学としての予算を他大学に配分することの是非を検討
●一法人一大学における法人の長と学長の分離には慎重論も

「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」(座長:有川節夫放送大学学園長理事長)の5回目の会合がこのほど開かれ、年内に出す中間まとめの素案について議論した。指定国立大学に配分される予算の法人内での扱い、現行の一法人一大学における法人の長と学長の分離などについて活発な意見が交わされた。

*文科省の配付資料はこちら
*前回の会合の報告はこちら


●「屋上屋にならないよう、大学連携との違いに留意」と釘を刺す

 この日に示された中間まとめの素案では、一法人複数大学の意義について「複数大学の教育研究資源を確保したうえで、それぞれのミッションをふまえた効果的・効率的な配分が可能」「教員や研究組織の再編・統合、大学間の枠を超えた新たな教育研究部門の設置など、経営刷新や大学改革の取り組みを推進できる」などと説明。 
 一方で「安易な法人の統合や単に屋上屋を重ねるような運用とならないよう、大学連携や大学統合との違いに留意しつつ、一法人複数大学制度の活用の目的やメリット、将来的なビジョンをしっかりと検討することが必要」と釘を刺した。各大学が築いてきたブランド力や地域との関係性の維持を前提にすることにも触れている。
 現行の国立大学法人制度では学長が法人の長も兼ねるが、新制度では経営力強化を目的にそれぞれを別の人物が担い、役割分担することも可能になる。素案では法人の長が一大学の学長のみ兼務するパターンも「あり」とされたが、委員からは「法人の長として大学間の利害を調整するのが難しくなる。法人の長と学長はすべて別の人が担うのが現実的」との意見も。一方で「さまざまなパターンの中から法人の判断によって柔軟に選べるようにしておくべき」と、案の通り運用されても問題ないとの見解も示された。

●理事長による恣意的な学長任命を防ぐ手立てが必要

 中間まとめの素案では、法人の長は法人経営の責任者として人材・資源・予算を掌握して法人の目標や業務の成果を最大化することを任務とし、経営の失敗の責任も負うことから「学長よりも上位に置かれるべき」と明記。法人内の選考会議で法人の長の候補者を選び、文部科学大臣が任命する案を示した。
 学長は法人の方針の下、大学の自主的な運営・創意工夫による教育研究を行う裁量と権限を持ち、法人の長に対する責任も負う。法人の長が学長を任命するが、恣意的な任命を防ぎ透明性を確保する手段として、法人が選考方法を決めておく案などが示された。法人の長、学長の任命権者はそれぞれの解任の権限も持ち、学長の解任にあたっては任命と同様に透明性を確保すべきだとされた。

ninnmei.png

 前回の会合では、教育研究評議会は法人と大学どちらに置くこともあり得るとされたが、法人全体の方針の下、大学間の連携による教育研究を推進する観点から、素案では経営協議会と共に「引き続き法人に置かれることが必要」とされた。

●「一法人一大学での法人の長・学長分離の前にプロボスト導入の議論を」 

 指定国立大学に配分される予算の法人内での扱いについては、活発な議論が交わされた。素案では、各大学のミッションをふまえた効率的な資源配分が一法人複数大学制度の前提であることを理由に「指定国立大学法人制度については、法人全体ではなくその設置する大学を指定することとしてはどうか」との案が示された。これに対し、「今後はミッションを共有する法人単位の指定もあり得る」との意見も。
 大学単位で指定される場合、指定に基づいて配分された予算を法人内の他大学の活動にあてることについては意見が分かれた。「指定国立大学制度の趣旨に反する」との見解が示される一方、「指定国立大学としてのミッションに基づいて法人内の他大学と連携する活動も考えられ、予算を完全に切り分けるのは非現実的」「大学単位で積算された予算を法人の判断の下で配分することがまさに一法人複数大学制度の意義であり、柔軟な運用を認めるべき」との意見も目立った。
 一法人複数大学制度の一法人一大学への応用として、後者でも法人の長と学長を分けられるようにすべきか議論された。兼務の負担の大きさなどを理由に賛成論が出る一方、「アメリカの大学のプロボスト(教学担当副学長)を導入し、教学に関わる権限を移譲することを議論するのが先ではないか」といった慎重論も展開された。
 検討会議は2018年度末に最終まとめを出し、文科省が次期通常国会での関連法改正をめざす。


*関連記事はこちら
一法人複数大学検討会議-構想中の大学は「複数大学の利点」の説明を
国立大アンブレラ方式の検討会議始動、理事長と学長の役割分担が焦点に