2018.0903

私学助成の「教育の質」指標は前年の改革総合支援事業より高い要求水準

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3行でわかるこの記事のポイント

●教学マネジメント体制、IRなど14項目の評価で一般補助を2%まで増減
●従来の選択肢「一部の学部で実施」が「半数以上の学部で実施」に
●改革総合支援事業とセットで教育の質向上を促す

私学助成における一般補助の増減率算定のため2018年度、新たに導入された「教育の質」の指標、および私立大学等改革総合支援事業の評価項目が各大学に通知された。「教育の質」については、従来の改革総合支援事業の「タイプ1 教育の質的転換」の一部項目を移す形で指標が設けられたが、単純な移行ではなく要求水準を上げた項目が多い。これまでの改革総合支援事業で示された改革テーマに継続的に取り組んできた大学ほど、補助金の基本額獲得が有利になりそうだ。


●アセスメント・ポリシーの整備は改革の標準的要件に

 私学助成配分のために導入された「教育の質」の指標は、「全学的チェック体制」「カリキュラムマネジメント体制」「学びの保証体制」の3分野で計14項目が設定された。段階別評価による合計点を基に、一般補助が-2%~+2%の5段階で増減される方向だ。
 改革総合支援事業における従来の「タイプ1 教育の質的転換」の評価項目の中から、大学が標準的に取り組むべき課題として「3つのポリシーをふまえた点検・評価」「学長を中心とした教学マネジメント体制の構築」「カリキュラムマップの作成・ナンバリングの実施」「GPA制度の導入・活用」「学修成果の把握」などの項目が移行された。
 項目の一つ「アセスメント・ポリシーの整備」は従来の改革総合支援事業にもなかったもので、今回、大学改革の標準的要件として位置付けられたことになる。IRについては「機能を整備しているか」に加えて「IR情報を公開しているか」という項目も設けられ、学修時間や留学率、単位修得状況、就職率等の数値データの公表度が問われる。
 多くの項目で前年度の改革総合支援事業の設問より要求水準が上がっている点が注目される。「教員の教育面における評価制度」「第三者によるシラバスチェック」など、前年度の改革総合支援事業では「一部の学部で実施」で得点できた項目も、最低要件が「半数以上の学部で実施」になった。さらに、「学長を中心とした教学マネジメント体制の構築」は、「構築されている/されていない」という外形的な評価から「構築され、構成員に全学部長が含まれている/半数以上の学部長が含まれている」と、より実質に踏み込んだ評価になっている。

●改革総合支援事業もSD参加率など、実質化を問う形で要求水準アップ

 一方、2018年度の改革総合支援事業「タイプ1 教育の質的転換」には、新たな項目が多く追加された。「学修成果に関する卒業時の調査の実施」を調査の回収率等も問う形で新設。「キャリアに関する卒業後の調査の実施」と合わせ、卒業生の声をふまえた改革を重視する方針を打ち出している。
 授業外の学修時間確保が求められる中、「事前事後学修を促す授業」も「当該年度開講科目のうち80%以上/50%以上」という段階別評価で新設された。多くの大学で未整備と推測される「専門的知識を有する教職員(カリキュラム・コーディネーター等)のカリキュラム編成への参画」という項目も、"改革の道しるべ"(文科省の担当者)として加わった。その他の新設項目は「アセスメント・ポリシーをふまえた成績評価のためのFDの実施」「情報リテラシー教育の授業開講」「ICTを活用した双方向型授業や自主学習支援の実施」など。
 既存の項目は、新しい要素を加えたり要求水準を上げたりしたものが多い。「SDの実施」は「専任教職員の全員が参加/4分の3以上が参加」と実質化を問う内容に。「学長裁量経費の設定」も前年度の「設けている/設けていない」から、「教育研究経費支出予算の5%以上または1000万円以上の規模で設定/同3%以上または500万円以上の規模で設定」という設問になった。
 「教育の質」に移された項目の一部は、より発展的な取り組みを評価する内容で「タイプ1」でも設定されている。IRについては「機能強化のために専門的な高等教育プログラムを履修した担当教職員を配置しているか」という項目を新設。カリキュラムマップ・ナンバリングについては、これらを作成・実施したうえで「ホームページ等で公表しているか」と、他大学との単位互換の推進という目的をふまえた設問になっている。 

●「教育の質」がゼロ点の大学は改革総合支援事業への申請不可に

 ここまで見てきた構造と内容から、「教育の質」で基本的なレベルを課して一般補助を傾斜配分したうえで、改革総合支援事業「タイプ1」でより発展的な取り組みを課して補助金を上乗せすることにより、各大学の教育の質向上を促そうという文科省の意図が読み取れる。一部の改革テーマについて、2017年度の改革総合支援事業「タイプ1」、2018年度の「教育の質」および改革総合支援事業「タイプ1」を対比させると下表のようになる。

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 改革総合支援事業については、従来の「タイプ2 地域発展」を「タイプ5 プラットフォーム形成」に統合し、「タイプ3 産業界・他大学との連携」を「タイプ2 産業界との連携」「タイプ3 他大学との広域・分野連携」に分けるなど、枠組みが変更された。「教育の質」の全設問でゼロ点の大学は改革総合支援事業全5タイプのいずれにも申請が認められなくなる方向だ。


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