2018.0823

23区内定員抑制の政令案-域内の授業が半分超の学年を収容定員に算入

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3行でわかるこの記事のポイント

●収容定員の算定方法を具体的に説明
●例外として純増を認める「社会人」は就労時間や所得で定義
●地方大学の都心サテライトキャンパスはキャップ制を条件に設置を認める

内閣府と文部科学省はこのほど、東京23区内にある大学の定員増を抑制するための政令等の案を策定し、パブリックコメントにかけた。例外的に純増が認められる「社会人」の厳密な定義などは、「地方からの若者の流出を防ぐ」というねらいと、「23区内の大学やそこで学びたい者の権利を必要以上に縛らない」という配慮との間で産み出した「苦肉の策」と言えそうだ。
パブリックコメント(9月9日まで)はこちらから


●郊外キャンパスから学部の一部学年を移すことも不可能に

 先に公布された地方大学・産業創生法では、東京23区(特定地域)内にある大学の定員増を原則10年間認めないこととされた。郊外で学ぶ学部の一部学年を23区内のキャンパスに移すことなどもできなくなる。
 今回の政令等の案では、抑制対象となる23区内の収容定員の算定方法、例外的に定員増が認められるパターンについて具体的な内容(「社会人」の定義、機関決定の要件など)を示した。
 4年制大学の学部の収容定員の算定については、「学科の学年」という単位で見る方式になっている。学科の収容定員のうち、「その学科が開講する科目の単位数の2分の1以上が23区内のキャンパスで開講される学年」の分を合算した人数を「23区内の収容定員」と定義。

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 23区内にある専門学校を廃止して4年制大学を設置する場合、専門学校の1学年分の定員の平均値×4学年分とした収容定員を設けることができる。例えば、下図のように2年制の専門学校を廃止して4年制大学を設置することが可能。

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 スクラップ・アンド・ビルドにおいては、今回の制度施行以前に行った「スクラップ」を活用した「ビルド」ができないよう、「スクラップ」を行う前に「ビルド」について届け出る必要があるとされている。

●例外枠の対象者については募集要項に要件を明示

 純増が認められる社会人については、「進学や就職による地方からの若者の流出を抑制する」という地方大学・産業創生法の趣旨をふまえた厳密な定義が示された。例えば、「30歳以上」なら無条件で社会人枠での受け入れを可とする。一方、「就業者」はアルバイトをする浪人生等が含まれないよう、入学前1年間に「就労者の場合は週20時間以上働いている」または「個人事業主の場合は1年間の所得が57万円以上」で、出願前の3カ月~6カ月間、一都三県など通学可能な地域に住んでいるという要件を満たす必要がある。同様に、主に主婦を想定した要件も示されている。
 今後、これら例外的な収容定員枠を設けた大学については、対象となる者の要件を募集要項に明記し、証明できる書類を提出させるなど、詳細な運用方法が示される予定だ。
 地方大学の活性化の観点から、一都三県以外の大学が低学年次に修業年限2分の1以内の期間、23区内のキャンパスで学ばせることも例外的に認める。その場合も23区のキャンパスでは一定のキャップ制の実施を課す。学生が2年間で卒業要件の単位を修得した後、地方のキャンパスで学ぶことなく、都心に残って就職活動をするといったことができないようにするためだ。

●法人間での定員譲渡は合併・統合等の協議記録を提出

 政令等の案ではほかに、留学生についても純増を認めること、専門職大学と同様に専門職学科も純増を認める(2024年3月末までの認可に限定)ことなどが示された。
 経過措置の一つとして純増が認められる「相当程度の準備」については、法人としての機関決定、刊行物やウェブサイトによる公表、校舎建設や土地の購入、機械・器具の購入等の支出を要件として明示。これら意思決定・公表・支出が、認可事項については23区内における定員増の原則禁止方針を告示した2017年9月末までに、それ以外の事項については2018年9月末までになされている場合に限定している。
 学校法人間で定員を譲渡するなどの形で学部の新設や定員増を行う場合は、合併や統合に関する協議の内容を記した書類を提出する必要がある。
 これらの政令等はパブリックコメントを経て10月1日に施行される予定だ。


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