2016.1201

大学分科会で社会人向けプログラムに対する企業の評価を報告

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3行でわかるこの記事のポイント

●「本業に支障が出る」と企業の1割が学び直しを認めず
●「社会人対象プログラムの整備予定なし」の大学等は85%
●委員からは「『学び直しが普通』のアメリカ型社会に」との声

11月30日の中央教育審議会大学分科会で、社会人の学び直しが議題となった。大学の社会人対象プログラムに対して企業が魅力を感じておらず、社員を積極的に送り出す状況にないことが、調査結果からあらためて浮かび上がった。


●大企業とそれ以外では制度や実績に大きな差

 大学分科会では、2015年12月から2016年2月にかけて大学等、企業、社会人学生を対象に実施した文部科学省の調査の結果が報告された。「大学等」には大学院、短大、高等専門学校も含まれ、学部、研究科、学科等の単位で調査がなされた。
調査結果はこちら。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1371459.htm
 企業に、社員が大学等で学ぶことを認めているか聞いたところ、全体では67.8%が「特に定めていない」と回答。「原則認めていない」は11.1%に上った。大企業と中小企業とでは差が大きいが、大企業でも「原則認めている」は20.8%にとどまった。

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 過去5年間で社員を大学等へ送り出した実績も、大企業が37.6%だったのに対し、中堅企業は8.9%、小規模企業は3.5%と大きく差が開いた。

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 「大学等で学ぶことを原則認めない」と答えた企業にその理由を聞いたところ、「本業に支障をきたすため」が56.6%、「教育内容が実践的ではなく現在の業務に生かせないため」が24.3%だった。
 大学等に重視してほしいカリキュラムは「特定職種の実務に必要な専門的知識・技能を修得できる内容」が35.5%、「特定の分野を深く追求した研究・学習が可能な内容」27.0%の順だった。

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●カリキュラムで重視する点は大学・企業とも共通だが...

 一方、大学等に対して同じ選択肢で、社会人対象プログラムのカリキュラム内容で重視している点を聞いたところ、「特定職種の実務に必要な専門的知識・技能を修得できる内容」48.0%、「特定の分野を深く追求した研究・学習が可能な内容」43.1%の順だった。
 カリキュラムで重視する点の上位2つは大学、企業とも同じだが、重視する点を具体化した大学等の教育内容について、企業は「実践的ではなく業務に生かせない」、むしろ「本業に支障をきたす」と捉え、社員を積極的に送り出していないと言えそうだ。

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 こうした状況の下、大学等の側も社会人の受け入れには必ずしも積極的とは言えない。すでに社会人対象のプログラムを提供している大学等のうち、「さらに取り組みを推進」と答えたのは44.1%と半数を切り、「取り組みを縮小させる」も2.7%あった。

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 一方、社会人対象のプログラムを提供していない大学等に今後の提供の可能性を聞くと、「今後もその予定はない」が85.4%に上った。その理由としては、「社会人の入学が見込めないため」が65.1%で、「教員の確保が困難なため」の41.6%を大きく上回った。

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●高卒者の学び直し支援の必要性を指摘する委員も

 調査結果の報告を受け、委員の間からも「大学が企業のニーズに応えきれていない」との問題意識が示された。ただし、「短期的な視野でニーズに対応すると、時代変化によってすぐに有用性がなくなる。普遍的な学問的価値を盛り込むことが重要」との注文も出た。
 また、「アメリカでは、以前に比べてMBAの希少価値は薄れたものの、大学卒業後、一度社会に出てお金を貯めてからキャリアアップのために学び直すのが普通という社会の意識は変わっていない。日本でも同様の意識を根付かせる必要がある」「社会人の学び直しというと大卒者を想定しがちだが、地方では高卒で働く人も多く、格差の問題が深刻。その人たちが大学で学ぶためのパスも考えるべき」といった意見も聞かれた。