2016.1024

工学院大学-企業が提示する支援金付き課題研究に取り組む新プログラム

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3行でわかるこの記事のポイント

●建築学部がセブン&アイ、フジタと連携
●4年生と院生が卒論、修論のテーマとして応募し、企業が選考
●教員配下ではなく学生が研究主体として企業と連携

工学院大学は2016年度、セブン&アイ・ホールディングスと総合建設業のフジタが支援金付きで提示する課題に、学生が卒論や修論としても取り組むことができる「ISDC(アイ・エス・ディー・シー、Industry-Student Direct Collaboration)プログラム」を始めた。初年度は建築学部の学生計11人(10組)が、2月の最終発表会に向けて課題研究に取り組んでいる。


●学生11人にコラボ支援金

 学生と企業とのダイレクトなコラボレーションを特色とする「ISDCプログラム」には、建築学部の4年生と大学院生が任意で応募する。企業側が出した課題の中から取り組みたいテーマを選び、研究計画書を教員に提出。教員がセブン&アイとフジタの課題それぞれで候補者10人程度を選んで両社に通知し、研究に取り組む「コラボ学生」各5人程度を最終決定してもらう。両社は調査費用等として各学生にコラボ支援金を支給。大学は卒論、修論としても課題研究の指導にあたる。
 セブン&アイのグループ会社でショッピングセンターの店舗開発を手掛けるモール・エスシー開発は、少子高齢化、ネット社会などの時代変化に対応する新しいショッピングセンターという大テーマの下、5つの課題を出した。「大型商業施設における高齢者のウォーカビリティ向上の可能性」「新しい人の流れを作るショッピングセンター」などについて、学生ならではの斬新な発想を期待しているという。
 一方のフジタは、材料、設計、環境、まちづくりなど7つの分野から、「地方都市における広場の日常利用に関する研究」「タイル付きコンクリート外壁の環境負荷低減型解体方法」など16の課題を提示した。
 学生が、課題提示企業の職場見学、トップや現場リーダーとのコミュニケーションを通して自分の専門分野と実社会のつながりを実感し、就業意識を高めることを大学側は期待している。2月には、参画企業の経営陣や研究テーマに関連した部署のリーダーなども出席する最終発表会でプレゼンテーションし、評価を受ける。

●今後は他の企業の参加も得て他学部への拡大をめざす

 工学院大学の担当者は、「従来のこの種の連携では、企業が研究室や教員と連携し、学生は教員の下で課題に取り組むという形をとっていた。それに対し今回のプログラムは、学生が直に企業から選ばれ、研究主体としてさまざまな支援を受けながら課題に取り組む点が特長であり、モチベーションがより高まる」と説明する。2015年度にセブン&アイとの間で実験的にプログラムを実施。教育的効果が見込めると判断し、2016年度はフジタの参加も得て本格的にスタートさせた。
 他にも参加を検討している大手企業が複数あり、大学側は今後、建築学部以外の専門性を生かせるよう課題の領域を広げ、他学部にもこのプログラムを拡大したい考えだ。
 建築学部は2013年度に始まった「ハイブリッド留学」にも先陣を切って参加した。これは、英語力と二重の授業料(国内と渡航先)という2つの「留学の障壁」を取り払うべく、教員が留学先に同行して日本語で専門科目の授業を行う一方、現地の教員による英語の授業やホームステイも経験させる同大学独自の留学プログラムだ。
 大学側は、建築学部の学生の中でも特に、3年次の4カ月間、イギリスのカンタベリーで歴史的建造物に囲まれて過ごした「ハイブリッド留学」参加者が、「ISDCプログラム」にも積極的に挑戦するよう期待している。担当者は「留学後のモチベーションの高まりを受け止めるプログラムであり、留学(海外)と実社会(企業)の両方を経験することで、よりとがったユニークな人材に育つのではないか」と話す。