2023.0328

3/10現在、私大の総合型選抜の志願者数は対前年指数113

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3行でわかるこの記事のポイント

●学校推薦型と合わせた年内入試の指数は104
●年内入試志願者数が前年超えの大学の割合は年々上昇
●合格者数も増加し、受験生と大学の双方で年内入試シフトが進行

2023年度の私立大学における年内入試(総合型選抜と学校推薦型選抜)の志願者数は、3月10日時点で対前年度指数104.1。合格者数も増え、受験生と大学の双方で年内入試シフトが一段と進行している。こうした状況下で入学者の数と質を確保するためには、高校低学年での接触、および接触者の自学に対する関心、共感を継続的に高めていくコミュニケーションの設計が、いよいよ重要になる。

*各数値は今後、変動する可能性がある。
*記事中の対前年指数は特に断りがない限り、豊島継男事務所がまとめた前年同時期のデータとの比較。
*参考記事(Between情報サイト)
2月3日現在の私大一般選抜志願者指数は98.2、大規模校志向が復活


●全私立大学の約3割にあたる164校のデータを集計

 進研アドと連携する豊島継男事務所では、2022年度入試の総合型選抜、学校推薦型選抜の志願者数が非公表、または不明の大学を除く私立大学を対象に、2023年度入試の志願者データを集めている。志願者数をウェブサイトで公表している大学、および同事務所が独自にデータの提供を受けている大学を合わせ、3月10日現在164校(専門職大学などを除く私立大学全体の28.1%に相当)のデータを集計した。
 3月10日時点の年内入試志願者数は下表の通り。

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※非公表の大学が多い指定校推薦、および帰国生や付属校対象の入試は除外している。
※12月までに実施された特別奨学生選抜(給費生選抜)も除外。
※総合型選抜と学校推薦型選抜の志願者数を合算して公表している大学があるため、表中および本文の「総合型+学校推薦型」の志願者数は各選抜の志願者数の合計と等しくならない。

 「総合型+学校推薦型」の志願者数は31万4740人で、対前年指数は104.1。総合型選抜の志願者数は5万5601人で指数113.3、学校推薦型選抜の志願者数は25万4197人で指数102.2。18歳人口の指数は97.8なので、両選抜とも志願者増と言える。
 「総合型+学校推薦型」の志願者が前年より増えた大学の割合は、2021年度33.2%→2022年度50.0%→2023年度53.0%と上昇。受験生の年内入試シフトが年々進んでいる状況がうかがえる。
 豊島継男事務所の調査では、私立大学一般選抜(大学入学共通テスト利用方式を含む)の志願者数の対前年指数(3月3日時点)は97.3。年内入試シフトによって、受験生が一般選抜から離脱する傾向もさらに進行している。

●併願可能な大学が多い近畿で、志願者増が目立つ

 集計対象164校における両選抜の志願動向について、詳しく見ていく。
 総合型選抜の志願者数が1000人を超えたのは12校で、上位5校は京都芸術大学(6288人)、森ノ宮医療大学(2946人)、甲南大学、立教大学、京都精華大学。京都芸術大学は2年連続で最多となった。
 総合型選抜の志願者数が前年より増えた大学は94校(70.7%)、減った大学は39校(29.3%)。2022年度入試では半々だった。200人以上の増加は、甲南大学(1192人増)、京都芸術大学、森ノ宮医療大学、東京農業大学、日本体育大学、京都精華大学の6校。2022年度はゼロだった「300人以上の増加」も4校ある。
 
 一方、学校推薦型選抜の志願者数が1万人以上の大学は近畿大学、龍谷大学、追手門学院大学、摂南大学、京都産業大学の5校で、近畿勢が占めた。一部、順位の入れ替わりはあるが、顔ぶれはこの3年間変わっていない。志願者数5000人以上まで広げると14校あるが、やはりすべて近畿地区の大学だ。
 志願者数が前年より増えたのは56校(40.3%)で、減ったのは83校(59.7%)。1000人以上増えたのは龍谷大学(5646人増)、追手門学院大学、大阪経済大学、関西外国語大学、神戸女子大学の5校。一方、1000人以上減った大学は3校あり、いずれも近畿の大学だ。
 これらのデータとは別に集計した指定校推薦(39校)の志願者数は対前年指数96.1と減少している。集計数が少なく参考値にとどまるが、指定校推薦へのシフトによって公募制学校推薦型の志願者数増加率が小さくなったわけではなさそうだ。

 総合型選抜、学校推薦型選抜とも近畿の大学で志願者が多いのは、このエリアには募集人員や入試の実施回数が多い大学、併願可とする大学が多数あるためだ。入試日程や前年度の志願倍率を見て受験生が動くため、年度ごとに志願者数が大きく変動する大学も目立つ。

●志願者数増は57校、合格者数増は70校

 下の表では、集計対象164校のうち合格者数も公表している115校(私立大学全体の19.7%)について、志願者数と合格者数をまとめている。

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 115校中、志願者が増えたのは57校だが、これを上回る70校が合格者を増やした。志願者が減った58校のうち22校が合格者を増やしている。受験生が一般選抜まで残らないことを見越して入学者の早期確保に動いた大学が多く、「志願者数÷合格者数」の倍率は前年度の2.53倍から2.45倍に下がった。

 年内入試で手堅く入学先を決める、あるいは併願可能な年内入試で合格したうえで、一般選抜では志望度の高い大学のみ受けるといった動きが今後、成績上位層にも広がりそうだ。このような受験生の動向をふまえ、大学側も年内入試シフトが不可避となる。年内入試において入学者の数と質を確保するためには、低学年のうちから受験生と接触し、自学に対する興味・関心、共感を高めて出願に導くようなコミュニケーション戦略が大切になる。志望度の高い出願者を多く集め、自学との相性を見極める適切な選抜方法を開発できれば、積極的な選択として合格者を増やすこともできるはずだ