2020.1118

2020年度私大入学者の56%がAO・推薦経由-文科省の大学調査

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3行でわかるこの記事のポイント

●選抜区分ごとの状況について699大学が回答
●一般入試による入学者は国立88%、公立72%に対し私立は44%
●私立では2割近くが外部検定活用入試で入学

文部科学省は2020年度入試におけるセンター試験や英語外部検定の活用実態について、全大学を対象に実施した調査の結果を「大学入試のあり方に関する検討会議」で報告した。私立大学がAO・推薦入試によって多くの学生を確保している状況があらためて明らかになった。

*記事中の図表は文科省の公表資料から引用
*調査結果の資料はこちら
*「大学入試のあり方に関する検討会議」の全資料はこちら


●私立の推薦入学者のうち半数超が指定校推薦

 この調査は2020年7月から9月にかけて全大学771校を対象に実施、699大学(2222学部、4万6007選抜区分)から回答を得た(回収率90.7%)。10月の「大学入試のあり方に関する検討会議」で英語4技能評価や記述式問題に対する大学の考え方について報告したのに続き、11月16日には直近の入試における選抜区分単位の状況を説明した。
 以下、調査結果の概要を説明する。

 まず、入試方式ごとの状況について見ていく。
 入試方式別に見た選抜区分の割合は、全体では一般入試52.3%、AO入試13.5%、推薦入試33.7%だった。設置形態別に見ると国公私いずれも一般入試が50%台で大きな差はない。
 一方、入試方式別に見た入学者数の割合は私立ではAO・推薦が55.6%で、一般入試が大部分を占める国公立とは大きく異なる。

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 また、国公立ではAO入試の実施回数は「1回」がほとんどであるのに対し、私立では「2回」~「6回以上」が計30%近い。AO入試に該当する選抜区分の割合は国公立とさほど変わらないが、各選抜区分で複数回の入試を実施して多くの入学者を確保していることがうかがえる。

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 多面的・総合的な評価という観点からAO入試での学力把握方法を聞いた質問では、「調査書等」「面接・討論」「推薦書などの書面」といった答えが多かった。

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 推薦入試による入学者は、国公立では公募型がほとんどであるのに対し、私立では指定校推薦の割合が最も高く50%を超えているのも特徴的だ。

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 文科省の入試実施要項では一般入試で学力検査を課す場合は2月1日以降に実施するよう求めており、私立大学の一般入試は12.1%が2月1日の実施。その一方で、1月に実施されているものも一定程度あった。

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●AO入試の40%近くで外部検定を「活用」または「活用予定」

 次にセンター試験と英語外部検定の利用状況について見ていく。
 私立大学の一般入試では、センター試験を利用しない選抜区分が55.0%ある一方で、独自試験を課さずセンター試験のみで合否を決める選抜区分が34.9%ある。

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 会議ではこれまで、私立大学ではセンター試験を経ずに入学する学生が多数を占めることを根拠に、共通テストの変更を入試改革の柱にすることへの疑問がたびたび述べられてきた。
 また、この日の会議で入試改革に対する意見を発表した日本私立大学協会の代表者は、センター試験のみでの選抜に対する批判があることについて「大学入学共通テスト実施大綱には、共通テストを一次試験とする旨はどこにも記載されていない」と指摘。「共通テストで一定レベルの能力があることを確認できた受験生を受け入れ、社会人として活躍できる人材に育てて中間層の形成に貢献するということも、大学のあり方として否定されるものではない」と述べた。
 英語外部検定の利用は、全体ではAO入試で最も進んでいて「活用あり」と「活用予定」を合わせると40%近くに上る。国立大学ではこの割合が44.4%。

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 外部検定を活用した選抜区分による入学者(延べ人数)の割合は全体では17.1%で、設置形態別にみると私立大学の19.7%が最も高い。国立は10.5%、公立は6.2%となっている。

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