4技能評価や思考力の育成は大学入学後に―文科省の大学調査速報
学生募集・高大接続
2020.1028
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●全大学を対象に実施、学部単位で回答
●記述式についての考えは設置形態、規模による違いも
●有識者会議では「個別入試での記述式充実にインセンティブを」との声
文部科学省は2021年度入試での導入を見送った英語4技能評価や記述式問題について、大学の考え方を把握するために実施した調査の結果を、10月27日の「大学入試のあり方に関する検討会議」で報告した。思考力・判断力・表現力、および4技能については、入試での評価以上に大学入学後に育成したり評価したりすることを肯定する大学が多かった。
*記事中の図表は文科省の公表資料から引用(一部、編集部で加工)
*調査結果の資料はこちら
*「大学入試のあり方に関する検討会議」の全資料はこちら
この調査は2020年7月から9月にかけて全大学771校を対象に、学部単位で実施。699大学(2222学部、4万6007選抜区分)から回答を得た(回収率90.7%)。27日の「大学入試のあり方に関する検討会議」では速報版として、英語4技能評価、記述式問題の出題、思考力・判断力・表現力の評価に関する意見のほか、3つのポリシーの策定・公表と記載、選抜の妥当性・信頼性の検証、入試方式別の募集人員の増減予定等について報告された。
英語のスピーキング・ライティングについては、下のグラフからわかるように「大学入学共通テストで評価すべき」、「個別入試(一般選抜)で評価」、「個別入試(総合型、学校推薦型)で評価」と肯定的な回答(とてもそう思う+そう思う)が多くなっていくが、これらを上回り最も多かったのは「大学入学後の教育で評価」という考え方。大学入学後に「各大学が独自に評価」が76.7%、「外部検定で」が69.0%に上った。
記述式問題について、「個別入試(一般選抜)で充実すべき」の肯定的回答は58.8%で、「共通テストで出題すべき」の15.0%を大きく上回った。
「記述式問題は個別入試で」の肯定的な回答は国立が77.6%、公立が78.9%だったのに対し、私立は52.4%と差が大きい。
大学の入学定員を3段階に分けた規模別で見ると、「記述式問題は個別入試で」に肯定的な回答は300人未満の大学で69.5%、300~1000人の大学で64.1%、1000人以上の大学で52.4%と、規模が大きいほど肯定率が低い。
受験者数の多い私立大学、大規模大学では学内で記述式問題を採点するのは負担感が大きいと推測される。
「入試において思考力・判断力・表現力をどこで評価すべきか」という問いでの肯定的な回答は「共通テストのマークシート問題で」(53.5%)、「個別入試(一般選抜)で」(65.4%)、「個別入試(総合型、学校推薦型)で」(76.9%)と多くなっていくが、最も多いのは思考力等の育成のために「大学入学後の教育を充実させるべき」(90.8%)だった。
報告を受けた同検討会議では産業界代表の委員が、3つのポリシーに英語の能力に関する記載がない大学が多いことを問題視。これに対し、大学側の委員は「医療系の大学であれば国家試験に合格させるため、アドミッション・ポリシーで英語より理科の力を重視する。全ての学生が企業に入るわけではなく、一律に4技能が必要とは言えない」と反論した。
記述式問題を「個別入試(一般選抜)で充実すべき」を肯定する国公立大学が8割近くに上り、私立大学も半数以上が肯定的であることについて、「各大学での記述式問題の充実にインセンティブを設けるべきだ」との意見も聞かれた。