2018.0614

早稲田大学が2021年度入試で主体性等に関する情報を出願要件に

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3行でわかるこの記事のポイント

●主体性情報は当面、選抜には使わず、入学後の教育の参考資料として活用
●政経学部の一般入試で共通テストを課し、独自の科目試験は廃止
●国際教養学部は共通テスト・外部検定に加え、独自の英語試験で思考力や論理展開力を評価
●スポーツ科学部は共通テストを課す3パターンの一般入試に

早稲田大学は2021年度入試における全学共通の変更点と政治経済学部など3学部の変更点を発表した。全学部の一般入試と大学入学共通テスト活用入試で主体性等に関する経験の記入を課し、3学部の一般入試で全受験生に大学入学共通テストを課す。主体性等の情報は選抜には活用せず、入学後の教育の参考資料として生かすという。早稲田大学の発表を受け今後、他大学でも入試改革の検討が加速し、発表する動きが活発化しそうだ。

*早稲田大学の発表内容はこちら


●主体性情報の選抜での活用は2025年度入試に向けて検討 

 早稲田大学は記者発表で「細かく決まっていない点もあるが、大きな変更点についてはなるべく早く受験生に知らせる必要がある」と説明した。
 全学共通の改革として、一般入試、および大学入学共通テスト(以下、共通テスト)利用入試のWeb出願時に「主体性・多様性・協働性」に関する経験の記入を課す。調査書への記載ではなく、受験生本人に自身の経験を振り返って文章化してもらう。記入を出願要件とするが、選抜には使わず、学生調査データの一部として入学後の教育や学生支援、入試改革などに反映するという。
 その背景として「学内で教育改革を進める中、次期学習指導要領の下で主体性等を育てる高校教育の改革には大きな期待を寄せている」と説明。現状、自学が推薦・AO入試以外では主体性等を評価できていないとの認識も示した。しかし、選抜に活用するには今の時点で高校側の環境や体制が十分とはいえず、大学側も得点化のノウハウや選抜期間の確保などクリアすべき課題が多いと見ている。まずは出願要件にすることで、高校に教育改革を促すメッセージを送りたい考えだ。選抜での活用は、次期学習指導要領に対応した入試となり、調査書の電子化も検討されている2025年度入試に向けて検討を続ける。

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●政経学部では数学を必須に

 政治経済、国際教養、スポーツ科学の3学部の一般入試では、全ての受験生に共通テストを課す。国際教養学部の独自の英語試験以外、学部独自の科目試験はなくなり、長文読解や小論文によって学部ごとに重視する能力を評価する方向へと変わる。
 政治経済学部の一般入試は、「高校での学習成果を見る共通テスト(100点)」と「入学後に必要な学力を見る英語学部検定試験(30点程度)と学部独自試験(70点程度)」の2部構成となる。共通テストでは外国語、国語、数学Ⅰ・数学Aの3科目を必須とし、地歴、公民、数学、理科から1科目の選択とする。同学部の入試で数学が必須になるのは初めてで、入学後は全学科で今後、統計科目を必修にするなど、数学の力が不可欠になるためだという。
 英語外部検定試験は共通テストで活用される試験を前提に検討中で、スコアを30点満点程度で換算して加点する方式となる。
 学部独自試験は日英両言語による教科の枠を超えた長文の読解で、記述式の問題も出題。英語の長文では図表の入った文章を読み解いて判断を加える内容が想定されている。2018年夏にもサンプル問題を公表する予定だ。
 学部独自の科目試験は廃止するが、学部として重視する「歴史の捉え方」などは独自試験の長文読解を通じて問う。ただし、特別な対策を要する難解な問題にはしないため、「これまでのような早稲田の政経専用の受験勉強は必要なくなり、高校の授業にしっかり取り組んで幅広く学んだ生徒が受けやすくなるのでは」(須賀晃一学部長)と見ている。
 学部の定員を徐々に減らすという全学的な方針に加え、他の入試方式への定員の移行もあり、2018年度は450人だった同学部の一般入試の募集人員は2021年度、300人になる。

●共通テスト活用の有無は学部ごとの判断に委ねる

 国際教養学部の一般入試は共通テスト、すでに実施している英語外部検定試験(スコア提出者に加点)、独自の英語試験で構成。すべての授業を英語で行うため、外部検定で4技能を評価し、独自試験では英語による思考力や論理展開力を評価するなど、英語力を多面的に評価したい考えだ。
 スポーツ科学部の一般入試は従来の枠組みを維持する形で、①共通テスト(2科目)と学部独自試験(小論文)、②共通テストのみ(4科目)、③共通テスト(3科目)と競技歴調査書の3パターンを実施する。
 3学部で共通テストを必須にするのは、早稲田大学の課題となっている地方の国公立志望層の受け入れを推進するねらいもある。
 今回は大きな変更がある学部について発表した。他の学部でも入試改革の検討が進んでいるが、共通テスト活用の有無は学部ごとの判断に委ねるという。


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