「入試における多様な評価」に関する進研アドの調査研究成果を公表
大学(募集・接続・教学)
2026.0604
大学(募集・接続・教学)
3行でわかるこの記事のポイント
●文科省の委託で2025年に24大学を調査
●ルーブリック作成で複数評価者の協働における一貫性・公平性を確保
●担当者の負担軽減のため、アウトソーシングの検討に触れた大学も
文部科学省は進研アドに委託した、入試における多様な評価方法に関する調査研究の成果報告書をこのほど公表した。同社が小論文等・面接等・総合問題それぞれの評価方法について、「学力の3要素」の多面的・総合的評価の工夫が認められる24大学を調査し、実施上のポイントやチェックリストをまとめたものだ。報告書から、非定型的なパフォーマンスを評価対象とするこれらの評価方法では、一般選抜の「教科・科目に係る個別テスト」とは異なる性質の検討や評価の工夫が求められることがうかがえる。年内入試での面接必須化を受けて面接の実施・評価方法を見直す大学など、多くの大学に参考になりそうな内容だ。
🔗調査研究の成果報告書
文部科学省の先導的大学改革推進委託事業の一つとして進研アドが実施したのは、「大学入学者選抜における多様な評価方法の実態把握・分析に関する調査研究」。トーマツが実施した「大学等の廃止が当該地域に及ぼす影響に関する調査研究」など、🔗他の4つの報告書と共に公表されている。
文科省は、大学入試における「学力の3要素」の多面的・総合的な評価への転換を推進している。しかし、その具体的手法である①小論文・レポート・エッセイ、②面接・口頭試問・プレゼンテーション・集団討論、③総合問題については、大学ごとに定義や実施方法が異なり、共通理解が十分とはいえない。
そこで今回の調査研究では、これらの評価方法の事例を収集して優れた点や課題など、「実施のポイント」を整理。各大学の入試改善に活用できるチェックリストも作成した。
調査概要は以下の通り。
(1)対象
文科省の「大学入学者選抜における好事例集」等の公表情報から、学力の3要素を多面的・総合的に評価する工夫が認められる大学を、設置形態やエリアのバランスに配慮して抽出。調査協力に承諾が得られた大学計24校を対象とした。
① 小論文・レポート・エッセイ(以下、「小論文等」):8校
② 面接・口頭試問・プレゼンテーション・集団討論(以下、「面接等」):8校
③ 総合問題:8校
調査協力依頼の条件として示した通り、報告書では大学名などの固有名詞等は匿名化・一般化した形で記した。
(2)実施期間
本調査:2025年9月
追加調査:同年10月~ 11月
(3) 方法:
自由記述式の質問紙をメールで送付・回収。一部の大学にはヒアリングや補足質問も実施。
(3)調査内容
共通項目:選抜の概要、志願者像と位置づけ、成果検証の有無と結果、高校からの評価・高大接続の観点など
評価方法別の項目:評価のねらい(評価することを想定している資質・能力、該当評価方法の選定理由)、設計・作問体制、評価・判定方法(評価・判定体制、評価・判定基準の策定方法、複数の評価者による評価・判定の際の基準の共有・統一方法)など
多様な評価方法に関する専門的な助言を得るため、沖清豪氏(早稲田大学文学学術院教授)を座長に、入試の研究者や高校教員などで構成する有識者会議を設置した。
調査研究の対象となった小論文等・面接等・総合問題の3種類の評価方法のうち、ここでは、小論文等と面接等について報告書の内容を紹介する。
【実施上のポイント】
小論文等と面接等は、多くの大学で学力の3要素を多面的・総合的に評価する手法として実施されている。
報告書では各大学の回答をもとに、小論文等について「課題文や資料の読解・思考の展開・文章化という連続した過程を通じて『思考力・判断力・表現力等』を中心に、知識・技能や主体性などを把握する評価方法」とまとめている。
一方、面接等については「対話・発表・相互作用を通じて、主体性・協働性・判断の適切さ・コミュニケーション力を直接確認する評価方法」とまとめている。
面接と小論文のほか、レポート、プレゼンテーションなど、具体的な評価方法の特徴は下表の通り。

小論文等と面接等のどちらも、自学の教育による成長可能性を見極めることが重要になるため、共通するポイントとして「アドミッション・ポリシーに基づき設計」「大学とのマッチングを確認」が挙げられている。
また、高校生がAIを日常的に使うようになった現状をふまえ、AI利用への対応方針の検討も共通して挙がった。
小論文等と面接等、それぞれの特性をふまえたポイントとしては、以下のようなものが示されている。
■小論文等
難易度・分量の調整(受験者の知識で理解できるよう適宜補足説明を加える)/学習指導要領を意識/高校教育の範囲に配慮/教科書や過去問題等既出の出典は避ける/教科・科目に係る個別テストとの差別化
■面接等
出身高校や評定が評価に影響しないように配慮/地方受験者の情報格差に配慮し、評価基準を工夫/高校ごとの情報教育格差への配慮/
小論文等、面接等のいずれも複数の教員によって評価がなされており、一貫性・公平性の確保が求められる。そのため、「評価の観点と基準を定めたルーブリック等を作成」もポイントとして示された。
それに加え、小論文等のポイントは「受験者が解答してくる範囲を想定し、過不足のない観点の設定/作問段階から評価観点・基準を設計」などと記載。
面接等については「評価者研修を実施(ロールプレイング・動画視聴・行動例提示)/新任面接担当者はベテランとペアで実施し現場でフィードバック/質問方針、質問例、評価基準の統一・共有/評価後に複数教員で相互チェック/判断保留時は最終責任者が判断」など、一貫性・公平性確保のための具体的なポイントが挙げられている。
「振り返りと改善」としては、「毎年度の検証と見直し」が挙げられた。面接等については「志願者数・入学者数の推移、入学者の傾向、選抜結果の分析に基づいた見直し」と、検証に使われるデータも具体的に示された。
いずれの評価方法でも、多くの大学が担当教員の負担軽減を課題に挙げており、改善策として「DX化やアウトソーシングの検討」に言及する大学もあった。
各大学が今後、小論文等や面接等を実施する際、今回の調査対象大学のノウハウを活用できるよう、実施上のポイントをふまえたチェックリストも作成された。
下表では、面接等のチェックリストの一部を示している。

入試に関する課題解決の支援を行っている進研アド入試サポート部の河野政文統括ディレクターは「入試問題の設計で困っている大学は多い。今回の報告書は『自学のニーズに即して学力の3要素の多面的・総合的評価をどう具体化すべきか』『小論文の採点時の教員間の評価のぶれは、どうやったらなくせるか』『年内入試での面接必須化にどう対応すべきか』など、大学ごとのさまざまな課題に何らかのヒントを提供できるものになっているのではないか」と話す。