1/12現在、私大の総合型選抜の志願者数は対前年指数114.5
学生募集・高大接続
2024.0222
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●総合型と学校推薦型を合わせた指数は101.9
●学校推薦型で志願者が「減った大学」は「増えた大学」の1.5倍
●年内入試の入学者確保に向けたコミュニケーション戦略の再構築を
2024年度の私立大学における年内入試(総合型選抜と学校推薦型選抜)の志願者数は、1月12日時点で対前年度指数101.9。総合型選抜が全体として大幅増となる一方、学校推薦型選抜では苦戦する大学も出始めている。年内入試による学生確保のシナリオの見直しが急務と言えそうだ。
*各数値は今後、変動する可能性がある。
*本記事では、学校推薦型選抜は公募制についてのみ集計・分析対象としている。
*記事中の対前年指数は特にことわりがない限り、豊島継男事務所がまとめた前年同時期のデータとの比較。
進研アドと連携する豊島継男事務所では、2023年度入試の総合型選抜、学校推薦型選抜の志願者数が非公表、または不明の大学を除く私立大学を対象に、2024年度入試の志願者データを集めている。志願者数をウェブサイトで公表している大学、および同事務所が独自にデータの提供を受けている大学を合わせ、1月12日現在148校(専門職大学などを除く私立大学全体の25.3%に相当)のデータを集計した。
1月12日時点の年内入試志願者数は下表の通り。
※非公表の大学が多い指定校推薦や付属校対象の入試は除外している。
※12月までに実施された特別奨学生選抜(給費生選抜)も除外。
※総合型選抜と学校推薦型選抜の志願者数を合算して公表している大学があるため、表中および本文の「総合型+学校推薦型」の志願者数は各選抜の志願者数の合計と等しくならない。
「総合型+学校推薦型」の志願者数は31万7906人で、対前年指数は101.9。総合型選抜の志願者数は6万977 人で指数114.5、学校推薦型選抜の志願者数は25万2217人で指数99.4。18歳人口の指数は96.9なので、総合型選抜は「大幅増」、学校推薦型選抜は「増加」と言っていいだろう。
両選抜の志願動向について、詳しく見ていく。
総合型選抜の集計対象は117校。
志願者が前年より増えた大学は76校で、そのうち49校が2年以上連続で10%以上の増加。今回、近畿の2校が1000人以上の大幅増となった。
志願者が減った大学は41校あったが、1000人以上の大幅減は3年連続でゼロだ。
学校推薦型選抜の集計対象は127校。
志願者が前年より増えた大学は50校、うち22校が2年以上連続で増加。1000人以上の大幅増4校はいずれも近畿の大学で、その中には4年連続の大幅増、2年連続の大幅増がそれぞれ1校ある。
志願者が減った大学は77校で、うち42校が2年以上連続で減少。今回、1000人以上の大幅減となった2校はいずれも近畿の大学だ。学校推薦型選抜は総合型選抜に比べ、志願者確保が厳しくなりだした状況がうかがえる。
総合型選抜の志願者が大幅に増えた要因として、①この選抜を新規導入した大学や新たな方式を加えた大学がある、②「併願可」「出願基準が緩やか」「高校の推薦書が不要」「学力以外の能力の評価」など、学校推薦型に比べて出願しやすい、などが考えられる。
また、学校推薦型の出願期間(11月1日以降)より早い11月1日に総合型選抜の合格発表をする大学が多く、総合型選抜で合格を決めて学校推薦型選抜には出願しない受験生が多かったと推測される。学校推薦型選抜の志願者が減った77校のうち総合型選抜の志願者数を公表している大学は59校あるが、その中の35校は総合型選抜の志願者は増えていて、この推測を裏付けていると言えそうだ。
次に、総合型選抜と学校推薦型選抜の合計志願者数の詳細を見ていく。
合計志願者数が増加した大学は76校で、うち40校が2年以上連続して増加。今回、1000人以上の大幅増はいずれも近畿の6校で、その中には4年連続の大幅増が1校、2年連続の大幅増が2校ある。
志願者が減少した大学は72校で、うち32校が2年以上連続の減少。今回、1000人以上の大幅減となった2校はいずれも近畿の大学だ。
近畿で年内入試志願者数の大きな増減が目立つのは、このエリアには募集人員や入試の実施回数が多い大学、併願可とする大学が多数あるためだ。入試日程や前年度の志願倍率を見て受験生が動くため、年度ごとに志願者数が大きく変動する大学もある。
下の表では、集計対象148校のうち合格者数も公表している102校について、志願者数と合格者数をまとめている。
総合型選抜、学校推薦型選抜とも合格者数の対前年指数が志願者数の指数を上回り、2023年度と2024年度の実質倍率が、総合型選抜は1.95→1.89、学校推薦型選抜は2.35→2.21といずれも下がっている。
受験生が一般選抜まで残らないことを見越して入学者の早期確保に動く大学が多く、受験生にとって、年内入試はますます「受かりやすい入試」になっている。
従来は一般選抜が中心だった中堅大学、大規模大学も今や年内入試へのシフトを鮮明にしている。それに伴い、特に学校推薦型選抜での志願者確保が厳しくなり、年内入試でも集められる大学と集められない大学とに二極化しつつある。一般選抜での募集がさらに厳しいことは言うまでもない。多くの大学にとって、年内入試による入学者確保のシナリオをいま一度見直し、組み立て直すことが不可欠と言えよう。
学びに対する理解と共感が志望につながりやすい年内入試で入学者を確保するためには、低学年から接触して時間をかけて「温める」コミュニケーション戦略が重要になる。
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